グローバル・マクロのポートフォリオ構成比率公開、2015年2月

ユーロ圏の量的緩和もようやく通過し、市場は面白い材料に欠けているというのは事実であると思うので、この辺りでポートフォリオの構成比率の公開をしてみたい。ここまでは個別銘柄の紹介などをやってきたが、いつも言及している例の記事で書いたリスク要因によって、ここから先は個別銘柄の選択よりもポートフォリオ全体の構成が重要だからである。

銘柄の保有比率は毎日微妙に調整しているため、リアルタイムの厳密な数字ではなく、2月に入ってからの平均値をおおまかに示したものだが、ポートフォリオの方針は読み取ることができると思う。先ずは銘柄の構成比率からである。 続きを読む グローバル・マクロのポートフォリオ構成比率公開、2015年2月

ECBの量的緩和までの経緯と、金融市場の反応を2014年1月から総ざらいする

2015年1月22日にECB(欧州中央銀行)が量的緩和を発表したことにより、ユーロ圏の金融市場は新たな緩和相場で賑わっている。個人投資家にはユーロ圏の量的緩和が最近のニュースだと考えている人もいるかもしれないが、機関投資家のなかでは2013年頃から既に話題になっていた事柄であり、その頃からフォローしてきた身としては、ようやく実現したという感想である。

事実、市場が量的緩和を織り込み始めたのは2014年の1月であり、そこから債券、株式、為替など、色々なものが順番に上昇・下落してきた。金融緩和が起こるときに市場はどう反応してゆくのかという説明も兼ねて、この1年間の相場の動きを時系列順に見ていきたい。 続きを読む ECBの量的緩和までの経緯と、金融市場の反応を2014年1月から総ざらいする

機関投資家が空売りをする時に考えること

ヘッジファンドや投資銀行などの機関投資家にとっても、空売りは買いより難しい。株式の場合、買いであれば理論的な底値があり、その水準に近づけば買いが正当化されるが、割高な株には天井がなく、バブルとなれば際限なく上昇してゆく。雑に言えば、「ここまでは下がらないだろう」は大体当たるが、「ここまでは上がらないだろう」は外れることも多いということである。

天井を予想することが難しいとすれば、ではどうやって空売りするのか? 本稿では機関投資家が空売りへの参入を考えるプロセスを説明する。 続きを読む 機関投資家が空売りをする時に考えること

2014年4Qの米国GDPの詳細分析: 輸出は弱まるも内需は依然堅調

1月30日に米国統計分析局の発表した2014年10-12月の米国GDP速報値は、前年同期比で2.48%(実質、季節調整済み)の上昇となり、市場予想を下回った。しかし内需は依然堅調であり、力強い内需に対し、ドル高と他国の経済停滞に影響される輸出という構図を強めた結果となったと言える。以下に詳細を分析する。

2014-4q-us-gdp-growth

上記は過去5年間のGDPのグラフである。今回の発表では、輸出が前期の3.76%から2.02%へと鈍化したことなどがマイナスに寄与したが、個人消費は2.67%から2.81%へと上昇し、輸入もドル高に反応して3.38%から5.26%に強まるなど、内需の力強さを裏付ける結果となった。まずは上昇した個人消費から確認する。 続きを読む 2014年4Qの米国GDPの詳細分析: 輸出は弱まるも内需は依然堅調

FOMCは「相当な期間」を削除、6月の利上げを示唆

1月28日のFOMC金融政策決定会合の後、Fed(連邦準備制度)は声明(原文英語)を発表し、ゼロ金利政策を「相当な期間(for a considerable time)」維持するとの文言を削除し、金融政策の正常化まで「辛抱強く(patient)」いるとの表現を残した。

「辛抱強い」という表現は「次回と次々回の会合での利上げは考えていない」ことを示す言い回しであるため、3月と4月の会合では利上げせず、6月の会合での利上げを示唆した形となる。これを受けて米国債は上昇(利回り低下)、米国株は下落、ドルは円に対して下がり、ユーロに対して上昇した。これらをどう考えるかである。 続きを読む FOMCは「相当な期間」を削除、6月の利上げを示唆

2015年、金融市場は米国の量的緩和終了を織り込んでいない

これについては一度しっかりと書いておく必要がある。

2008年のサブプライム・ローン危機の後、Fed(連邦準備制度)は3度にわたり債券の買い入れを行い、量的緩和を行ってきたが、この政策は2014年10月をもって終了し、現在の米国は2015年中に行われるとされる利上げを待っている状況にある。

2013年5月にバーナンキ前議長がテーパリング(緩和縮小)に初めて言及したとき、米国債は売られ、米国株も急落したものだったが、その後も株式市場は上昇し、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和を開始した今では、米国の金利までもが低位で安定した動きを見せている。

市場は量的緩和の終了と利上げを景気回復のサインと見なし、量的緩和の終了どころか利上げまでも問題なく織り込んだかのような見方が通説となりつつあるが、それは誤りである。本来これは、中銀の支えがあるからと積極的に押し目を買ってきた市場参加者自身が一番よく知っているはずであるのだが、今後の金融市場の動きも含め、以下に説明したい。 続きを読む 2015年、金融市場は米国の量的緩和終了を織り込んでいない

ECBが量的緩和を発表、買うべき銘柄は何か?

1月22日にECB(欧州中央銀行)がマネタリーベースを2倍にする量的緩和を発表した。詳細は上記の記事で見ることができるが、とりあえずは欧州市場のみならず米国市場でも、株式・債券ともに好感した形となった。市場の上昇が短期的にどれだけ続くかは分からないが、分かっていることはユーロ圏の低金利が続くということ、そしてその間ユーロ安・ドル高が維持されるということである。

大手の不動産株などは、既にこれらの要素を織り込み始めている。長らく紹介してきたパリの不動産会社Gecina (EURONEXT:GFC)は、量的緩和を受けて連日上昇し、紹介時の株価€97から17%上昇した。€118程度まで上がれば徐々に利益を確定していって良いだろう。

このように既に上がってしまった銘柄もあるが、不動産株や輸出株などの中には、これからでも買える銘柄がまだ存在する。今日はそのような銘柄の中から2つを紹介したい。 続きを読む ECBが量的緩和を発表、買うべき銘柄は何か?

ECBが月間600億ユーロの量的緩和を発表、マネタリーベースを2倍に拡大へ

1月22日、ECB(欧州中央銀行)は月間600億ユーロの量的緩和を発表した。債券の買い入れは3月から開始され、少なくとも2016年の9月まで継続される。市場が長らく期待していた措置であるが、実際の規模が判明した今、ユーロや金利、不動産など、金融市場がどうなってゆくのかを考察したい。先ずは再度、マネタリーベースの確認からである。

Screen Shot 2015-01-22 at 02.56.14 続きを読む ECBが月間600億ユーロの量的緩和を発表、マネタリーベースを2倍に拡大へ

ユーロは既に2年分の量的緩和を織り込んだ

本日(1月22日)の決定会合にて、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和を発表すると市場では噂されており、発表後のユーロの動向を気にしている投資家も多いだろう。結論から言えば、ユーロは既に2年分の量的緩和を既に織り込んでいる。下記に説明しよう。

ECBが量的緩和をするということについては、去年の5月のGecina紹介記事から何度も記事にしてきたが、上記の通り、ユーロの売りに関する記事はかなり以前のものであり、個人的にはユーロはもっと緩やかに緩和を織り込んでゆくと予想していた。ドイツ国債や不動産株の買いなど、ユーロの空売りのほかに量的緩和に賭けたポジションが多くあったために、通貨トレードで無理をしなかったためだが、それでもECBが量的緩和を始める前にEUR/USDが1.15に達するとは思っていなかった。

では、この1.15という水準がどの程度のものなのかというと、先ずは米国とユーロ圏のマネタリーベースのグラフを見てもらいたい。

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ユーロ圏のマネタリーベースは、ドラギ総裁がハト派の発言
を初めて以来、実は全く増えていない。米国のマネタリーベースも、量的緩和を中止して以来ほとんど動いていないため、両通貨のマネタリーベースの比率は、下のグラフにあるように、3.30前後で足踏みをしている。グラフは米欧のマネタリーベース比率と為替レートを表したものである。

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ECBはこの水準から量的緩和をするわけだが、市場で噂されている量的緩和の規模は月間500億ユーロ、年間で6,000億ユーロである。現在のユーロ圏のマネタリーベースは1兆2000億ユーロほどであるから、2年でマネタリーベースが2倍となる、日銀の最初の緩和と同じ規模の量的緩和ということになる。

マネタリーベースが2倍となれば、米国のユーロ圏に対するマネタリーベースの比率は半分となり、1.6-1.7辺りを目指してゆくということになる。これは、グラフで言えば2012年の8月前後の水準であり、当時一番ユーロが下がった時でも為替レートは1.22-1.24程度であった。

確かに、回復基調にある米国の経済に比べ、ユーロ圏の経済はかなり弱々しく、今年の米国の利上げというドル買い要因もあるにせよ、それらをすべて考慮しても、現在の1.15という為替レートは、2年分の量的緩和をすべて織り込んだ上での適正値ということになる。

もし、量的緩和が発表されれば更なるユーロ安になると予想している投資家がいるとすれば、少なくともファンダメンタルズではかなり安すぎる水準まで売り込まれていることは認識するべきだろう。弱いユーロ圏から強い米国へ資本逃避が起きているという需給上の要因を推測することはできるが、ユーロの空売り残高もかなり溜まっているだろうから、2年間の量的緩和のなかで、少なくとも短期的なリバウンドはあると見るべきだろうと思う。

いずれにせよ、テクニカル要因による短期的な投機をしないグローバル・マクロの投資家にとっては、ユーロの空売りは既に終わった取引である。欧州の不動産株や各国(特に米国)の金利への影響などを注視しながら、決定会合の結果を見守りたい。

ECB量的緩和前夜: 欧州各国要人の発言まとめ

ユーロ圏のデフレ回避のため、1月22日の政策決定会合でECB(欧州中央銀行)が量的緩和の実施を決定するという思惑から、欧州各国の要人たちが自分の国に有利になるように様々な発言をしている。ギリシャやアイルランドなど財政の危うい国々は、量的緩和の規模が大きくなるように、そして信頼の低い自分たちの国の債券もドイツ国債同様に買い入れられるように、また、買い入れのリスクが自分たちに降りかからないようにと一斉に声を上げている。例えばギリシャからはこうである。

ギリシャ・ハルドゥベリス財務相ロイターより)

  • 「量的緩和の規模が5500億ユーロに設定されれば、ギリシャには159億ユーロの恩恵がもたらされる」
  • 「ギリシャ国債の格付けなどの要因により、ギリシャが受ける恩恵の規模が減らされることはあってはならない」

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世界の金融市場における分析と実践