ドイツだけが量的緩和バブルを軟着陸させられるかもしれない

ギリシャなどが無茶な要求を始めたことで、ユーロ圏におけるドイツの負担は日々増しているように見えるが、それでも最終的に利益を得るのは経済が強いドイツである。

何度も書いてきたように、量的緩和とは中央銀行が国債などリスクの低い証券を買い占めることで、家計や保険会社などを国債市場から追い出し、社債や不動産、株式など、よりリスクの高い証券に資金を移させるポートフォリオ・リバランス政策である。

これは、量的緩和が行われている限りは、流動性が潤沢な債券市場から株式市場へと資金が溢れ出てくる構図となるが、中央銀行が債券市場から撤退するや否や、債券と株式が資金を求めて争い合う綱引きの様相となり、したがってこのバブルのツケは何処かの市場がいずれ払わなければならない。 続きを読む ドイツだけが量的緩和バブルを軟着陸させられるかもしれない

ユーロ圏の人々が通貨安回避のために買う通貨・銘柄は?

ユーロの下落が止まらない。前回の記事に書いた通り、ユーロは下落を続けており、1つの理由は、ユーロ圏の人々が通貨安によって自分の資産が損なわれてゆくのを回避するため、ユーロ圏の人々がユーロを売っているからだと推測している。日銀が量的緩和を始めた時のジョージ・ソロスのコメントを引用しよう。

円が下落し始めれば、日本国民は円が下がり続ける可能性が高いと気付き、自分たちの資金を海外に移そうとするだろう。そうすれば、円は雪崩を打って下落する可能性がある。(CNBCによるインタビュー)

これは、日本国民の国民性を考慮していなかったために正しくなかったが、今回のユーロ圏の量的緩和には非常によく当てはまっていると言える。この文化的な背景については前回の記事に書いたが、ではヨーロッパ人はユーロ安から逃れるために何を買っているのか? いくつかの候補を挙げてみよう。 続きを読む ユーロ圏の人々が通貨安回避のために買う通貨・銘柄は?

2015年にユーロ危機再発の兆候あり

ユーロの下げ方がちょっと尋常ではない。ECB(欧州中央銀行)がついに量的緩和を決定したことで材料出尽くしとなり、ユーロドルは1.12前後の水準をうろうろしていたが、2月の雇用統計がFed(連邦準備制度)の6月の利上げを支持する内容となったことでドル高が再び進行、ユーロドルはついに1.10の壁を下回り、放物線を描きながら下落している。

ユーロに関しては、これまで一貫して下がり過ぎを主張してきた。上記の記事の通り、マネタリーベースで見れば、ユーロドルの適正値は量的緩和を完全に織り込んだ状態で1.15程度であり、量的緩和が開始されたばかりの3月に1.10を下回るのは相当の下落速度である。米国の利上げについても、他の通貨に比べユーロだけ織り込みが早過ぎる。ここまで考えてようやく気付いたことがある。 続きを読む 2015年にユーロ危機再発の兆候あり

ドルかポンドか?: 2015年英米マネタリーベース、GDP、失業率比較

ドルの独歩高が続いている。2月の雇用統計が力強く出たことで6月の利上げが意識され、ユーロドル、ドル円、ポンドドルはすべてドル高となっている。

強い経済、今年中の利上げと、ドルの上昇基調は疑うべくもないが、ドル高が輸出を傷つけかねない水準が近いことも確かである。しかし、主要各国はどの国も金融緩和に偏っており、とりあえずはどれかの通貨を選んで保有しなければならない投資家にとっては、ドル以外の通貨を選びにくい状況にある。

ここで英ポンドを考えたい。金融市場では米国の影に隠れて忘れられがちだが、英国も経済の回復は力強く、利上げを控え、上昇してよい通貨のはずである。最近はドルに対して大きな下落となっているが、ポンドは本当に上がらないのだろうか? 先ずはマネタリーベースから比較したい。

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電力小売り自由化で恩恵を受ける銘柄紹介

東京電力 (TYO: 9501)や関西電力 (TYO:9503)など、大手電力会社が独占してきた家庭への電力供給が自由化されようとしている。

日本における電力の供給は、2000年から徐々に自由化が行われてきた。2000年に大型工場や百貨店への供給、2004年に中型工場やスーパー、2005年に小型工場、そして2016年4月には家庭や事務所などへの電力供給が自由化される見通しである。

日本の電力消費全体の40%(上記資料による)を占める家庭向けの電力供給には、大手商社からソフトバンク (TYO:9984)まで様々な企業が名乗りを上げているが、その中でも投資家にとって魅力的な数銘柄を取り上げたい。 続きを読む 電力小売り自由化で恩恵を受ける銘柄紹介

2015年、米国利上げまでの投資戦略

Fed(連邦準備制度)による 量的緩和が2014年に終了し、2015年の中旬には利上げを控えているにもかかわらず、米国の株式市場は連日史上最高値付近で推移している。サウジアラビアが最近の原油価格の小反発を歓迎する意向を表明したことから、60ドル前後の原油価格が受け入れられたと考え、米国の個人消費の回復はますます揺るがないものになりつつある。

しかし、それでも利上げは歴史上何度も金融市場の暴落を引き起こしてきたイベントであり、米国株を保有する投資家は心の何処かで自分の買い持ちを心配している。

株式市場はこのまま利上げまで問題なく上昇するのだろうか? これは買い方も売り方もどちらも抱えている疑問であり、それぞれの答えがあるだろうが、先ずはおよそ考えられるシナリオを列挙してみたい。以下の3つである。 続きを読む 2015年、米国利上げまでの投資戦略

テクニカル分析が相場を予測できない理由

今回はやや数学的な話である。

テクニカル分析かファンダメンタルズ分析かという論議は、金融関係者のなかでは非常に古典的な議論であるが、少なくともテクニカル分析は市場の未来を予測できないという点は比較的容易に証明可能であるにもかかわらず、非常に多くの人々がいまだ正しく理解をしていないという点で珍しい論題である。

しかも、個人投資家のみならず、金融のプロフェッショナルでもテクニカル分析で市場の未来を予測できると思っている人が沢山いる。あるいは、直接そう主張せずとも、そういう考えを自分の投資方針に持ち込んでいる人は著名投資家でもかなり多い。しかし、ここではっきり宣言したい。テクニカル分析は市場の上げ下げを予測することはできない。理由を以下に説明する。 続きを読む テクニカル分析が相場を予測できない理由

Form 13F: ソロス氏、アインホーン氏は米国株空売りを拡大か

毎四半期恒例、SEC(米国証券取引委員会)によりForm 13Fが公開され、機関投資家の2014年末時点での米国株のロングポジションおよびオプションの買いポジションが公開された。

Form 13Fは1ヶ月半遅れでのポジションの公開であり、かつ空売りや先物のポジションは公開されないので、これだけを見てどのファンドが米国株を買っているとか売っているとか言えるものではないのだが、同業者であれば、現物の買いポジションを見るだけでも、そのポートフォリオに秘められた考えのいくつかは読み取れるものであり、その投資原則が短期的に変わるものでなければ、そのファンドがどの銘柄を今も持っているか持っていないかは大体分かるものである。

さて、2014年の4Qであるが、Form 13F以外の情報も含めて主だったものを纏めてみたい。 続きを読む Form 13F: ソロス氏、アインホーン氏は米国株空売りを拡大か

2014年4Q、日本のGDPは持ち直したものの前年同期比でマイナス

1月16日、内閣府は2014年第4四半期のGDP速報値を発表した。実質GDP全体で-0.42%(前年同期比、以下同じ)となり、第3四半期の-1.33%よりは持ち直したものの、大規模な量的緩和が2年近く行われている国としては、かなり酷い数字であると思う。

これは量的緩和がまだ始まっていないユーロ圏よりも悪く、消費増税から9ヶ月も経っているので、駆け込み需要の反動減のせいだと主張し続けるのは無理がある。以下は成長率のグラフである。

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[動画] ジョージ・ソロスがジム・ロジャーズを語る

面白い動画を見つけたので挙げておく。ジョージ・ソロス氏が中国におけるインタビューで、かつてクォンタム・ファンドを一緒に運営したジム・ロジャーズ氏について語っている。

ジム・ロジャーズ氏に関する話題は6:47から見られる。ソロス氏のコメントを以下に翻訳して引用したい。 続きを読む [動画] ジョージ・ソロスがジム・ロジャーズを語る

世界の金融市場における分析と実践