9月日銀決定会合結果: 総括検証は銀行株への配慮以外に意味はなし

9月21日、日銀は金融政策決定会合で政策の総括検証を行い、マネタリーベースの増加目標を撤回し、短期金利のほかに長期金利の目標値を設定する長短金利操作の方針を発表した。

様々なメディアが今回の政策決定の大枠を大仰に伝えているが、日銀が今回やったことは以下のことだけである。

  • 国債の年間買い入れ額(マネタリーベース増加量)の目標値を撤廃
  • 長期金利が一定値より上がらないように国債を買い入れる方針を表明

つまり、国債の買い入れ方を変更するということである。個人的には日銀のやることなどかなり以前から気に留めていないし、今回の変更も取るに足らないものと考えているが、この記事では一応この変更が金融市場に与える影響についてざっと考察する。

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EU利権の内紛: 天下りを巡って現欧州委員長と元欧州委員長が罵り合い

イギリスのEU離脱によってEUの欠陥に焦点が当てられて以来、EUの内部が非常に慌ただしくなっている。あらゆる手段を使ってヨーロッパ諸国の予算を支配下に収めようとした悪しき官僚主義には相応しい末路だろう。

その内紛の一つが現欧州委員長ジャン=クロード・ユンケル氏と前欧州委員長ジョゼ・マヌエル・バローゾ氏の口論である。発端は前欧州委員長のバローゾ氏がゴールドマン・サックスの幹部に就任すると発表したことに対し、現欧州委員長のユンケル氏が、EUに厳しい目が向けられている時期にそのようなあからさまな天下りは慎むべきだと非難したことに始まる。ロイター(原文英語)が状況を詳しく伝えているので、以下に紹介してゆきたい。

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レイ・ダリオ氏が語る米国利上げの危険性と日銀の追加緩和が効かない理由

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運営するファンドマネージャー、レイ・ダリオ氏がCNBCの主催するDelivering Alpha会議(原文英語)でアメリカの利上げと世界経済に残された金融緩和の手段について語っている。世界中の投資家が米国利上げの影響と金融政策の先行きについて注目する中で発せられたダリオ氏の意見は、多くの投資家にとって傾聴に値するだろう。

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ドナルド・トランプ氏: 中銀は政権のために低金利で株価バブルを維持している

共和党の大統領選候補ドナルド・トランプ氏がCNBCのインタビュー(原文英語)にてアメリカの金融政策を担うFed(連邦準備制度)を攻撃している。

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アメリカ利上げ懸念で米国株暴落か

利上げを支持するFed(連邦準備制度)高官らの発言にもかかわらず史上最高値付近を維持していた米国の株式市場が急落した。契機となったイベントは特に見当たらず、連銀総裁らは相変わらずアメリカ経済に強気の発言を繰り返してはいたが、フィッシャー副議長の「イエレン議長の発言は今年中に2度利上げする可能性に整合的」以上に強気の発言が新たに出たわけでもない。

それでも量的緩和とその後の利上げ懸念後退によって長年支えられてきたアメリカの株式市場は、利上げが今後も継続するのであれば暴落せざるを得ない。2016年中に1回の利上げであっても株価が史上最高値付近で推移していられるほど呑気な状況でもないはずであり、ある程度の急落は当然といったところだろう。

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破綻寸前のシェール企業Chesapeake Energy、原油価格への影響は?

前回の記事で書いた通り、原油価格については4月に書いた記事の予想通り推移しているのであまり書くことがないが、新たに触れておくべき話題があるとすれば米国のシェール関連企業の大型倒産に一番近いとされるChesapeake Energy (NYSE:CHK; Google Finance)が債務超過寸前に陥っていることだろう。

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金利先物市場は米国利上げをどの程度信じているのか?

アメリカ利上げである。アメリカ経済の減速が始まっているにもかかわらず、イエレン議長を始めとするFed(連邦準備制度)の関係者が続々と利上げを支持するシグナルを送っており、市場関係者は実体経済に対して強すぎる金融引き締めが金融危機を引き起こすのではないかという懸念を抱えているところだろう。以前説明した通り、2008年のサブプライムローン危機もそのようにして起きたのである。

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大勢のイギリス保守党支持者が3ポンド払って労働党党首選で極左のコービン氏に投票、再選出へ

イギリス労働党の党首選が非常に面白い事態となっている。タイトルの通りなのだが、順を追って説明しよう。

先ず、イギリス労働党の現党首ジェレミー・コービン氏は2015年6月6日の党首選で労働党党首に選ばれた政治家である。コービン氏はカール・マルクスへの共感を表し、大学無償化、鉄道国有化、公営住宅建設などの社会主義的政策を全面に押し出しながら緊縮財政に反対するという無謀な経済政策から当初は泡沫候補として扱われていたが、蓋を開けてみればコービン氏は約6割もの支持を集めて労働党党首に選出された。

この結果には労働党の政治家を始め多くの人が驚いたものだが、コービン氏がこれほどの圧勝であったのには理由がある。笑ってしまうのだが、その理由の一つが「労働党員のふりをして党首選に投票した保守党の支持者」なのである。

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ジャクソンホールでイエレン議長が量的緩和再開の可能性に言及

8月26日、アメリカのジャクソンホールで開かれた会合で、Fed(連邦準備制度)のイエレン議長が講演を行った。講演の概要や直後の市場の反応については前回の記事に纏めてあるが、今回は前回の記事で触れなかった部分について書きたいと思う。

報じた通り、講演ではイエレン議長は主に年内の利上げに対する意欲を再確認した一方で、実はリスクシナリオについても語っており、そのなかで量的緩和を再開する可能性についても述べられている。今回の記事ではそちらに焦点を合わせて報じてみたい。

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世界の金融市場における分析と実践