「トレーディング技術」カテゴリーアーカイブ

個人投資家が勝てない理由をファンドマネージャーの視点から説明する

多くの個人投資家が勝てない理由はいくつかある。株式市場は上がるか下がるかなのだから、勝率は大体5割くらいになるのではないかと思う読者もあるかもしれないが、そうはならないのである。感情に支配され、必要な情報を知らない投資家はかなりの確率で損をする。そしてその損失分が機関投資家の利益となっているのである。

この記事では多くの個人投資家が勝てない理由のうち、初歩的なものから実践的なものまでを順番に説明してゆきたい。

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オプション取引入門1: プット・オプション、コール・オプションとは何か?

今回はオプション取引入門である。オプションについてはこれまでの記事で何度も言及してきたが、包括的な説明をしたことがなかったので、ここで一度纏めておく。

2009年から2014年の株式市場のように上昇相場が何年も続く場合や、2012年以降の金など、下落相場が続く場合には、単なる買いや空売りをすれば良いが、相場が方向性のないまま乱高下する場合や、材料がなくほとんど動かない場合などには、単なる売買では利益が出しにくい。しかしそういう時にもオプション取引ならば利益を出すことができるのである。

ということでオプション入門である。オプションにはコール・オプションとプット・オプションがあるが、先ずはコール・オプションから説明してゆく。

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信用取引(レバレッジ)は危険なのか?

最近知り合った人のなかに、自分のビジネスを持っていたが引退した方がいて、資産運用を考えているのだがと相談を受けた。彼は金融や投資とは関わりのない業界の人で、若いころに自分で投資を試みて家一つ分の金額を失った話を笑いながらしておられた。

彼はどうやら、信用取引でレバレッジの掛かった取引をしたため、市場が下落したときに多額の追加証拠金を求められ、それがトラウマになり、それ以来投資はしていないそうである。

そこで彼がわたしに尋ねてきたのは、わたしもレバレッジを使うのだろう? レバレッジは危険ではないのか? ということである。返した答えは、わたしの方法論ではレバレッジを使わないほうが危険である、というものであった。

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グロース株をファンダメンタルズ分析で評価する方法

本稿では、グロース株をファンダメンタルズ分析で評価する方法を説明する。

グロース株とは、現時点で利益が出ていないにもかかわらず、将来の収益性を評価されて高い株価が付いている銘柄のことである。

こういった銘柄はP/E(株価収益率)が100を超えていたりと、ファンダメンタルズを無視した株価が付いていると言われることが多いが、実際はグロース株の株価も、ファンダメンタルズ分析に基づいた評価によって決まっている。本稿ではこれを説明したい。 続きを読む グロース株をファンダメンタルズ分析で評価する方法

REITはバブルになるように出来ている: REITバブルの造成から暴落まで

REIT(不動産投資信託)は、不動産投資にかかる面倒な問題を取っ払い、投資家が市場でいつでも不動産が売買できるようにする優れた金融商品だが、問題はREITが元々バブルになるように設計されているということである。

これはジョージ・ソロス氏が彼の著書『ソロスの錬金術』で指摘していた事柄だが、金融緩和の始まりや終わりの局面では、資産バブルに投資(あるいは空売り)できるREITに関する理解が非常に重要になるので、ここで一度説明しておきたい。

新参者の資金がREITの価値を底上げする

REITはある意味ではねずみ講である。新しく投資に参入してくる新参者の資金(増資)が、元々そのREITに投資をしている投資家の利益を底上げするように出来ているからである。 続きを読む REITはバブルになるように出来ている: REITバブルの造成から暴落まで

債券王ビル・グロス氏がドイツ国債空売りに失敗した理由

2015年の4月末からユーロ圏の債券が軒並み下落したことについては前回の記事で述べたが、そのさなかに話題になったのが、著名債券投資家のビル・グロス氏の「ドイツ国債は一生に一度の売り場」発言である。

この発言は見事に的中し、発言のすぐ後、10年物のドイツ国債の利回りは0.1%から1%まで急上昇(価格は下落)したわけだが、あまりに時期ぴったりに当たりすぎたため、グロス氏自身はポジションを取り損ね、利益を得られなかったようである。彼の所属するジャナスによれば、同期間の彼の運用実績はマイナスとなっている。

わたし自身も、ドイツ国債が利回り0.1%に達したとき、割高だと考えながら空売りに踏み切らなかった一人であるから、彼の考えていたことが良く分かる。これはグロス氏だけでなく、多くの優れた投資家にとって意外なシナリオだったのである。 続きを読む 債券王ビル・グロス氏がドイツ国債空売りに失敗した理由

2015年版、グローバルマクロ戦略によるリスクヘッジを考える

米国では未曾有の金融緩和が終わり、利上げへと動き始めているが、一方でドル高が輸出を軽減しており、遂にはFed(連邦準備制度)もドル高への懸念を表明した。これは利上げ観測の逆戻りを意味する。

米国の利上げが投資家最大の関心事である今、ドル高は利上げへの進捗を測る一種の指標となっており、そのため世界中の金融市場のほとんどがドル高と連動していると言える。

これは投資家にとってそれだけでリスクである。世界中に分散投資をしたポートフォリオであっても、そのすべてがドル高に連動していれば、本当の意味で分散をしていることにはならないからである。例えば、ドル円の買いと日本の輸出株の買いは、資産クラスが違うにもかかわらず、両方ともドル高に正の相関があるポジションであり、言わばドルを二重に買っていることになる。 続きを読む 2015年版、グローバルマクロ戦略によるリスクヘッジを考える

テクニカル分析が相場を予測できない理由

今回はやや数学的な話である。

テクニカル分析かファンダメンタルズ分析かという論議は、金融関係者のなかでは非常に古典的な議論であるが、少なくともテクニカル分析は市場の未来を予測できないという点は比較的容易に証明可能であるにもかかわらず、非常に多くの人々がいまだ正しく理解をしていないという点で珍しい論題である。

しかも、個人投資家のみならず、金融のプロフェッショナルでもテクニカル分析で市場の未来を予測できると思っている人が沢山いる。あるいは、直接そう主張せずとも、そういう考えを自分の投資方針に持ち込んでいる人は著名投資家でもかなり多い。しかし、ここではっきり宣言したい。テクニカル分析は市場の上げ下げを予測することはできない。理由を以下に説明する。 続きを読む テクニカル分析が相場を予測できない理由

機関投資家が空売りをする時に考えること

ヘッジファンドや投資銀行などの機関投資家にとっても、空売りは買いより難しい。株式の場合、買いであれば理論的な底値があり、その水準に近づけば買いが正当化されるが、割高な株には天井がなく、バブルとなれば際限なく上昇してゆく。雑に言えば、「ここまでは下がらないだろう」は大体当たるが、「ここまでは上がらないだろう」は外れることも多いということである。

天井を予想することが難しいとすれば、ではどうやって空売りするのか? 本稿では機関投資家が空売りへの参入を考えるプロセスを説明する。 続きを読む 機関投資家が空売りをする時に考えること

グローバルマクロ戦略によるリスクヘッジの方法

グローバルマクロ戦略とは、マクロ経済情勢の変化に乗じて、為替、株式、債券、商品などに、買い・売りの両面から仕掛ける投資法である。ヘッジ・ファンドが用いる戦略は、市場全体の騰落に極力依存せず、様々なリスクをヘッジしてリターンを上げられることで知られているが、本稿ではグローバルマクロ戦略でどのようにリスクがヘッジできるかを、現在の市場における具体例に則って説明する。 続きを読む グローバルマクロ戦略によるリスクヘッジの方法