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パナマ文書の裏に潜む諸大国の野心: オフショアとタックスヘイブンをめぐる競争

これでアメリカの一人勝ちが確定か、というのがパナマ文書について聞いた時のわたしの第一印象である。プライベート・バンキングに詳しくない人々には何を言っているのか分からないだろうと思う。

順に説明しよう。2016年4月、パナマにある法律事務所Mossack Fonsecaの機密書類と思われるデータ2.6TBが、匿名の情報提供者によって南ドイツ新聞の記者Bastian Obermayer氏のもとに持ち込まれた。このデータにはMossack Fonsecaが登記したと推定されているオフショア会社の情報が含まれている。

各国首脳や著名人およびその近親者がオフショアを利用していたとのことで話題になっているが、ただ状況を説明しただけの記事はほかに沢山出ているから、この記事ではパナマ文書の背景にある各国の思惑について解説してみたい。それぞれの国が著名人の租税回避行為を批判しているように見えながら、本当に考えていることは別にあるのである。

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安倍首相、クルーグマン教授との対話で日銀の財政ファイナンスを認める

そう言ってしまって良いだろう。日本政府は量的緩和が政府の借金を肩代わりしている事実を金融緩和の目的の一つとしてはっきりと認識している。そしてそれは日銀が量的緩和を当分止められない事実を示している。

問題の安倍首相の発言は、国際金融経済分析会合に呼ばれたクルーグマン氏とのオフレコの対話内容に含まれていたものであり、オフレコの議事録が何故表に出てきたかと言えば、クルーグマン氏がインターネット上で公開したから(原文英語)である。余程日本政府のもてなしに礼を欠いた部分でもあったのか。

日本政府は多少慌てているようであるが、直接的な発言は含まれていなかったので大丈夫だろうと踏んでいるようであるので、わたしが代わりに対話内容に暗示されている日本政府の意図を分かりやすく説明して公開しようというわけである。財政ファイナンスに関する部分以外も順に書いてゆく。

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3月の米国FOMCは利上げなし、結果発表後の世界の金融市場チャートを見る

3月15日から16日まで行われた米国FOMCの金融政策決定会合では、政策金利の維持が決定された。決定は満場一致ではなく、カンザスシティ連銀総裁のジョージ氏が0.25%の利上げを主張したが否決された。ジョージ氏はタカ派で知られる。

発表された声明は下記の記事で取り上げた1月のものとあまり変わっていないが、原油価格や株式市場が反発したにもかかわらず、「世界経済と金融市場の動向は引き続きリスクとなっている」との表現を記載し、1月に引き続き市場への配慮を示した。

現在の市場の回復を考えれば、個人的にはFed(連邦準備制度)はもっとタカ派になって良いと考えていたので、その予測からすれば今回の発表はハト派ということになるだろうか。市場もそのように受け取ったようであり、ドルが下落、金価格などが上昇している。順にチャートを見てゆこう。

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ECBが利下げ、量的緩和拡大: 追加緩和後の世界の金融市場のチャート

3月10日、ECB(欧州中央銀行)は政策決定会合を行い、マイナス金利の更なる利下げと量的緩和拡大の追加緩和を発表した。市場予想も上回る満額回答の緩和プランだったのだが、市場の反応はユーロが反発、欧州株は下落というネガティブな結果であった。

2015年後半からの世界同時株安以降、中央銀行の存在感はほとんど市場に無視されており、今回の結果は驚くほどではないが、量的緩和の拡大という明らかな追加緩和が市場に無視されたという事実は、やはり相場の重要な転換点を暗示しているのだろう。

本稿では今回の追加緩和の詳細とその後の市場の動きを俯瞰したうえで、それらが2016年の相場に対して持つ意味を考えてゆきたい。

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上海で行われたG20は世界同時株安に対応できたのか?

2016年2月27日、2日間にわたって上海で行われていたG20の財務省・中央銀行総裁会議が閉幕した。1月から続いている世界同時株安に対応するため、市場では各国が協調して対策を打つことが期待されていたが、その目的は果たされただろうか? 発表された共同声明を含め、各国代表の発言を見てゆきたい。発言の引用元はロイターである。

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Form 13F: ジョージ・ソロス氏が米国株をショート、原油関連株を買い下がりか

毎四半期恒例のことだが、2015年末の機関投資家の買い持ちのポジションが公開されたので、いつも通り取り上げたい。周知の通り2015年8月から世界中の金融市場が荒れており、多くのファンドマネージャーが損失を出しているなかで、興味深いトレードをしている人物は少なかったのだが、やはり今回はジョージ・ソロス氏に注目せざるを得ないだろう。

2016年1月に報じた通り、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(通称ダボス会議)にて、ソロス氏は中国バブルは既に崩壊していると発言し、米国株とアジアの通貨を空売りしていることを公表した。

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イランがサウジやロシアの原油増産凍結を支持したことが示す2016年原油価格の先行き

サウジアラビアなどOPEC加盟3カ国とロシアの間で、原油の生産量を1月時点の数値で固定する条件付き合意がなされたことについて、同じく産油国であるイランが支持を表明した。

サウジなど4カ国の同意は、他の産油国もそれに従う場合のみ実行されるという条件付きであり、これはイランの同意が必要であることが含まれているが、アメリカの経済制裁により実質的に禁止されていたイランの原油輸出はようやく再開が可能になったばかりであり、イラン自身は1月の数値での固定については合意はできないとしている。しかしサウジやロシアもそれは分かっているはずであり、イランに対し何らかの譲歩がなされるのではないかとの憶測が市場を飛び交っているが、これはまだ憶測である。

しかしながら、産油国、それもOPEC加盟国と非加盟国が話し合っているということ、そしてこれまで減産にもっとも否定的であったサウジが、生産量の調節に意欲を見せていることは、今後の原油価格を占う上で重要なニュースである。

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2015年4Q日本のGDP速報値内訳: 死んだ個人消費、輸出はドル円下落で遂にマイナス成長

2015年10-12月期の日本のGDP速報値が発表され、実質GDP成長率は前年同期比(以下同じ)で0.66%と、前期確報値の1.65%から減速した。内訳は非常に示唆に富んだ内容となっており、何が日本経済の問題で、何が日本経済をこれまで支えてきたのかが一目瞭然である。順に見てゆこう。

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チャートについては、繰り返しになるが、消費増税の行われた2014年4月を境に、上昇に向かっていた各数値のトレンドが下方向に折り曲げられていることに注目したい。先ずは個人消費から見てゆこう。

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2月10日イエレン議長の議会証言は中身の無い雑談: 利下げ、マイナス金利、世界同時株安の原因について

2016年1月から始まった世界同時株安が収拾を見せていないなか、米国時間2月10日にFed(連邦準備制度)のイエレン議長がアメリカの議会で証言を行った。あまりに中身がなく無意味な内容だが、しかしそれは同時に、来たるべき市場暴落が来た時に適切に対応する能力が中銀に欠けていることを明確に示している。

議題は多岐に及んだが、その中でも重要な利下げ、マイナス金利、金融市場の混乱についてのイエレン氏の発言を取り上げよう。

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2015年4Q米国実質GDP速報値は明らかな減速、ドル高で輸出は急降下、ガソリン安は消費を助けず

ドル高・原油安の悪い部分のみが全面に押し出されたGDP統計であると言えるだろう。2015年10-12月期の米国のGDP速報値が発表され、実質GDPは前年同期比(以下同じ)で1.80%の成長と、前期確報値の2.15%から減速したが、より悪いのはその内容である。以下順に内訳を見てゆきたい。

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明らかに悪いのは輸出だが、その他の数値も政府支出以外は下落トレンドとなっている。個人的に注目したいのはエネルギー安にもかかわらず減速している個人消費である。

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