「為替相場」カテゴリーアーカイブ

ユーロは既に2年分の量的緩和を織り込んだ

本日(1月22日)の決定会合にて、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和を発表すると市場では噂されており、発表後のユーロの動向を気にしている投資家も多いだろう。結論から言えば、ユーロは既に2年分の量的緩和を既に織り込んでいる。下記に説明しよう。

ECBが量的緩和をするということについては、去年の5月のGecina紹介記事から何度も記事にしてきたが、上記の通り、ユーロの売りに関する記事はかなり以前のものであり、個人的にはユーロはもっと緩やかに緩和を織り込んでゆくと予想していた。ドイツ国債や不動産株の買いなど、ユーロの空売りのほかに量的緩和に賭けたポジションが多くあったために、通貨トレードで無理をしなかったためだが、それでもECBが量的緩和を始める前にEUR/USDが1.15に達するとは思っていなかった。

では、この1.15という水準がどの程度のものなのかというと、先ずは米国とユーロ圏のマネタリーベースのグラフを見てもらいたい。

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ユーロ圏のマネタリーベースは、ドラギ総裁がハト派の発言
を初めて以来、実は全く増えていない。米国のマネタリーベースも、量的緩和を中止して以来ほとんど動いていないため、両通貨のマネタリーベースの比率は、下のグラフにあるように、3.30前後で足踏みをしている。グラフは米欧のマネタリーベース比率と為替レートを表したものである。

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ECBはこの水準から量的緩和をするわけだが、市場で噂されている量的緩和の規模は月間500億ユーロ、年間で6,000億ユーロである。現在のユーロ圏のマネタリーベースは1兆2000億ユーロほどであるから、2年でマネタリーベースが2倍となる、日銀の最初の緩和と同じ規模の量的緩和ということになる。

マネタリーベースが2倍となれば、米国のユーロ圏に対するマネタリーベースの比率は半分となり、1.6-1.7辺りを目指してゆくということになる。これは、グラフで言えば2012年の8月前後の水準であり、当時一番ユーロが下がった時でも為替レートは1.22-1.24程度であった。

確かに、回復基調にある米国の経済に比べ、ユーロ圏の経済はかなり弱々しく、今年の米国の利上げというドル買い要因もあるにせよ、それらをすべて考慮しても、現在の1.15という為替レートは、2年分の量的緩和をすべて織り込んだ上での適正値ということになる。

もし、量的緩和が発表されれば更なるユーロ安になると予想している投資家がいるとすれば、少なくともファンダメンタルズではかなり安すぎる水準まで売り込まれていることは認識するべきだろう。弱いユーロ圏から強い米国へ資本逃避が起きているという需給上の要因を推測することはできるが、ユーロの空売り残高もかなり溜まっているだろうから、2年間の量的緩和のなかで、少なくとも短期的なリバウンドはあると見るべきだろうと思う。

いずれにせよ、テクニカル要因による短期的な投機をしないグローバル・マクロの投資家にとっては、ユーロの空売りは既に終わった取引である。欧州の不動産株や各国(特に米国)の金利への影響などを注視しながら、決定会合の結果を見守りたい。

スイスフランが1日で30%急騰、欧州相場で何かが起こる前触れか

これには驚いた。1月15日、スイス国立銀行(スイスの中央銀行)が対ユーロの上限レートを撤廃したことにより、スイスフランはユーロに対して一時30%上昇した。EUR/CHFのチャートはここで見ることができるが、1日であまりに動いたためチャートの体をなしていない。要するにスイス国立銀行が自国の通貨安介入に失敗したため、スイスフランが急上昇したということなのだが、これまでの経緯も含めて下記に説明してゆく。これはユーロや欧州株、ひいては世界の金融市場にとって重要な意味をもつ出来事である。 続きを読む スイスフランが1日で30%急騰、欧州相場で何かが起こる前触れか

年明けからの市場急落、何を買い下がるべきか?

年明けから不安定な相場が続いており、S&P 500は節目の2,000を割れ、ドル円は116円台で推移している。原油は一時45ドルを下回った。何よりも注目すべきは、ボラティリティがあらゆる市場で上昇していることである。

上記の記事で述べた通り、とりわけ株式市場はFRB(連邦準備制度)の量的緩和の終了と利上げという未曾有の金融引き締めをほとんど織り込まずにここまで来ている。織り込みが遅れている要因には日欧の金融緩和があるが、今年中に実際に利上げが始まる可能性が高いことを考慮すると、低金利により債券から株式へと移っていた資金の株式市場からの逆流は、今年か来年には起こる可能性が高い。 続きを読む 年明けからの市場急落、何を買い下がるべきか?

原油安は円安要因ではないかもしれない

12月19日、日銀の政策決定会合が開かれ、追加緩和後の金融政策を賛成8、反対1の賛成多数で決定した。

10月31日の追加緩和は原油価格の下落を受け発表された。当時80ドル程度であったWTI原油先物は更に下落を続け、現在55ドル前後まで下落しているが、原油安への黒田総裁の反応は、発言を字義通り受け取れば、追加緩和後の会見時のものとはやや異なるものであった。 続きを読む 原油安は円安要因ではないかもしれない

ルーブル急落で世界的リスクオフ: ドル円、不動産株をレビューする

ロシアルーブルを始めとする新興国・産油国通貨への懸念から、世界の金融市場でリスクオフの動きが進んでいる。

円やユーロが買われていることから、ドル高の動きではなく、各国の不動産株が売られていることから、デフレを懸念しているわけでもない。これまで蓄積されてきたグローバルマクロ的なポジションが、クリスマス休暇前ということもあり決済されているのである。今回は、とりわけドル円と各国の不動産株について、簡単にレビューしたい。 続きを読む ルーブル急落で世界的リスクオフ: ドル円、不動産株をレビューする

日米マネタリーベース比較: ドル円120円は妥当か

10月31日に日銀が金融緩和を決定した後、ドル円は122円の高値に触れ、現在は120円前後で推移している。110円前後からの急激な円安が、長期的な視野から妥当な水準であるのかどうかを考察する。

Screen Shot 2014-12-09 at 14.41.58 続きを読む 日米マネタリーベース比較: ドル円120円は妥当か

ユーロ売りは一旦ここまで、今後は量的緩和の導入を待つ

ユーロドルはウクライナの政治不安に後押しされ、早くもECBの緩和発表後の分析記事で想定した1.30に近い水準まで落ちた。このタイミングでウクライナでの停戦が発表されたことから、TLTRO(局所的長期資金供給オペ)を根拠としたユーロ売りはここまでとして良いだろう。初期から空売りを始めている投資家には深追いをする理由がない。投資は一番美味しい部分に大きく賭ければそれで良いのである。

今後は量的緩和の観測がマクロ経済学の観点から正当化される場合のみ空売りが可能となるだろう。そのためにはユーロ圏の消費者物価などを注視する必要がある。

投資戦略: ショート

フォロー開始時レート: 1.366

フォロー終了時レート: 1.315

リターン: +3.73%

フォローアップ: ユーロ、FCC、ワコム、CNNC International

下記は以前紹介した銘柄の現状確認である。

  • ユーロドル

ECB緩和発表後の高値1.366から下落し1.355付近で推移している。会合後の記事で書いた通り、長期的には1.30に向けて下落してゆくと想定しているが、ECBが実際に資金供給を行うのは9月と12月であり、この緩和は発表から実行までに多少間がある。 続きを読む フォローアップ: ユーロ、FCC、ワコム、CNNC International

ECBの会合前に見るユーロ、ドイツ国債、不動産株

日本時間で5日の20時45分からECB(欧州中央銀行)の金融政策決定会合が予定されている。この会合は、前回の会合でドラギ総裁が金融緩和の可能性に言及したことで非常に注目されている。 続きを読む ECBの会合前に見るユーロ、ドイツ国債、不動産株