先ず特筆すべきはポンドの上昇だろう。スコットランドの独立投票からイギリス経済への不安が表出し、1ポンド1.7ドルと割高で取引されていたポンドが調整に入ったのは2014年の夏の話だが、2015年の3月に1.4ドル台に入った時点でポンドの保有を推奨した。
その後イギリスは選挙を迎え、経済界寄りの保守党が過半数を得たことでイギリス経済への信頼が回復、ポンドドルは4月の底値である1.45から1.57まで上昇した。
先ず特筆すべきはポンドの上昇だろう。スコットランドの独立投票からイギリス経済への不安が表出し、1ポンド1.7ドルと割高で取引されていたポンドが調整に入ったのは2014年の夏の話だが、2015年の3月に1.4ドル台に入った時点でポンドの保有を推奨した。
その後イギリスは選挙を迎え、経済界寄りの保守党が過半数を得たことでイギリス経済への信頼が回復、ポンドドルは4月の底値である1.45から1.57まで上昇した。
いまや、日銀が2%の物価を達成すると約束している「2015年度中心とする期間」の終わり(2016年3月末”頃”)まであと1年を切り、そろそろ日銀の次の手を考える時期が来たのではないかと思う。
勿論、このまま追加緩和をせずに量的緩和を終了するということも有り得るが、本稿では先ずどういう追加緩和が考えられるか、そして追加緩和をした場合どういう影響が生じるかを考えたい。日銀が有効な選択肢を持っているかどうかを検討して初めて、日銀が追加緩和をするかどうかを考えられるからである。先ずは日米のマネタリーベース比率からである。
ユーロが着々と下落している。ECB(欧州中央銀行)による量的緩和は、1月の発表当時で既にそのほとんどが為替相場に織り込まれていたが、ユーロドルが1.10を割った今もユーロの下落の勢いは止まらない。
これはドラギ総裁にとっては実は吉報ではない。日銀の黒田総裁が原油価格の下落について述べた「前年比で見た影響はいずれ剥落してゆく」という言葉が、ユーロ安のインフレ率への影響にも当てはまるからである。 続きを読む ユーロ圏の量的緩和が停止に追い込まれる可能性
ユーロの下落が止まらない。前回の記事に書いた通り、ユーロは下落を続けており、1つの理由は、ユーロ圏の人々が通貨安によって自分の資産が損なわれてゆくのを回避するため、ユーロ圏の人々がユーロを売っているからだと推測している。日銀が量的緩和を始めた時のジョージ・ソロスのコメントを引用しよう。
円が下落し始めれば、日本国民は円が下がり続ける可能性が高いと気付き、自分たちの資金を海外に移そうとするだろう。そうすれば、円は雪崩を打って下落する可能性がある。(CNBCによるインタビュー)
これは、日本国民の国民性を考慮していなかったために正しくなかったが、今回のユーロ圏の量的緩和には非常によく当てはまっていると言える。この文化的な背景については前回の記事に書いたが、ではヨーロッパ人はユーロ安から逃れるために何を買っているのか? いくつかの候補を挙げてみよう。 続きを読む ユーロ圏の人々が通貨安回避のために買う通貨・銘柄は?
ユーロの下げ方がちょっと尋常ではない。ECB(欧州中央銀行)がついに量的緩和を決定したことで材料出尽くしとなり、ユーロドルは1.12前後の水準をうろうろしていたが、2月の雇用統計がFed(連邦準備制度)の6月の利上げを支持する内容となったことでドル高が再び進行、ユーロドルはついに1.10の壁を下回り、放物線を描きながら下落している。
ユーロに関しては、これまで一貫して下がり過ぎを主張してきた。上記の記事の通り、マネタリーベースで見れば、ユーロドルの適正値は量的緩和を完全に織り込んだ状態で1.15程度であり、量的緩和が開始されたばかりの3月に1.10を下回るのは相当の下落速度である。米国の利上げについても、他の通貨に比べユーロだけ織り込みが早過ぎる。ここまで考えてようやく気付いたことがある。 続きを読む 2015年にユーロ危機再発の兆候あり
ドルの独歩高が続いている。2月の雇用統計が力強く出たことで6月の利上げが意識され、ユーロドル、ドル円、ポンドドルはすべてドル高となっている。
強い経済、今年中の利上げと、ドルの上昇基調は疑うべくもないが、ドル高が輸出を傷つけかねない水準が近いことも確かである。しかし、主要各国はどの国も金融緩和に偏っており、とりあえずはどれかの通貨を選んで保有しなければならない投資家にとっては、ドル以外の通貨を選びにくい状況にある。
ここで英ポンドを考えたい。金融市場では米国の影に隠れて忘れられがちだが、英国も経済の回復は力強く、利上げを控え、上昇してよい通貨のはずである。最近はドルに対して大きな下落となっているが、ポンドは本当に上がらないのだろうか? 先ずはマネタリーベースから比較したい。
ユーロ圏の量的緩和もようやく通過し、市場は面白い材料に欠けているというのは事実であると思うので、この辺りでポートフォリオの構成比率の公開をしてみたい。ここまでは個別銘柄の紹介などをやってきたが、いつも言及している例の記事で書いたリスク要因によって、ここから先は個別銘柄の選択よりもポートフォリオ全体の構成が重要だからである。
銘柄の保有比率は毎日微妙に調整しているため、リアルタイムの厳密な数字ではなく、2月に入ってからの平均値をおおまかに示したものだが、ポートフォリオの方針は読み取ることができると思う。先ずは銘柄の構成比率からである。 続きを読む グローバル・マクロのポートフォリオ構成比率公開、2015年2月
2015年1月22日にECB(欧州中央銀行)が量的緩和を発表したことにより、ユーロ圏の金融市場は新たな緩和相場で賑わっている。個人投資家にはユーロ圏の量的緩和が最近のニュースだと考えている人もいるかもしれないが、機関投資家のなかでは2013年頃から既に話題になっていた事柄であり、その頃からフォローしてきた身としては、ようやく実現したという感想である。
事実、市場が量的緩和を織り込み始めたのは2014年の1月であり、そこから債券、株式、為替など、色々なものが順番に上昇・下落してきた。金融緩和が起こるときに市場はどう反応してゆくのかという説明も兼ねて、この1年間の相場の動きを時系列順に見ていきたい。 続きを読む ECBの量的緩和までの経緯と、金融市場の反応を2014年1月から総ざらいする
本日(1月22日)の決定会合にて、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和を発表すると市場では噂されており、発表後のユーロの動向を気にしている投資家も多いだろう。結論から言えば、ユーロは既に2年分の量的緩和を既に織り込んでいる。下記に説明しよう。
ECBが量的緩和をするということについては、去年の5月のGecina紹介記事から何度も記事にしてきたが、上記の通り、ユーロの売りに関する記事はかなり以前のものであり、個人的にはユーロはもっと緩やかに緩和を織り込んでゆくと予想していた。ドイツ国債や不動産株の買いなど、ユーロの空売りのほかに量的緩和に賭けたポジションが多くあったために、通貨トレードで無理をしなかったためだが、それでもECBが量的緩和を始める前にEUR/USDが1.15に達するとは思っていなかった。
では、この1.15という水準がどの程度のものなのかというと、先ずは米国とユーロ圏のマネタリーベースのグラフを見てもらいたい。
ユーロ圏のマネタリーベースは、ドラギ総裁がハト派の発言
を初めて以来、実は全く増えていない。米国のマネタリーベースも、量的緩和を中止して以来ほとんど動いていないため、両通貨のマネタリーベースの比率は、下のグラフにあるように、3.30前後で足踏みをしている。グラフは米欧のマネタリーベース比率と為替レートを表したものである。
ECBはこの水準から量的緩和をするわけだが、市場で噂されている量的緩和の規模は月間500億ユーロ、年間で6,000億ユーロである。現在のユーロ圏のマネタリーベースは1兆2000億ユーロほどであるから、2年でマネタリーベースが2倍となる、日銀の最初の緩和と同じ規模の量的緩和ということになる。
マネタリーベースが2倍となれば、米国のユーロ圏に対するマネタリーベースの比率は半分となり、1.6-1.7辺りを目指してゆくということになる。これは、グラフで言えば2012年の8月前後の水準であり、当時一番ユーロが下がった時でも為替レートは1.22-1.24程度であった。
確かに、回復基調にある米国の経済に比べ、ユーロ圏の経済はかなり弱々しく、今年の米国の利上げというドル買い要因もあるにせよ、それらをすべて考慮しても、現在の1.15という為替レートは、2年分の量的緩和をすべて織り込んだ上での適正値ということになる。
もし、量的緩和が発表されれば更なるユーロ安になると予想している投資家がいるとすれば、少なくともファンダメンタルズではかなり安すぎる水準まで売り込まれていることは認識するべきだろう。弱いユーロ圏から強い米国へ資本逃避が起きているという需給上の要因を推測することはできるが、ユーロの空売り残高もかなり溜まっているだろうから、2年間の量的緩和のなかで、少なくとも短期的なリバウンドはあると見るべきだろうと思う。
いずれにせよ、テクニカル要因による短期的な投機をしないグローバル・マクロの投資家にとっては、ユーロの空売りは既に終わった取引である。欧州の不動産株や各国(特に米国)の金利への影響などを注視しながら、決定会合の結果を見守りたい。
これには驚いた。1月15日、スイス国立銀行(スイスの中央銀行)が対ユーロの上限レートを撤廃したことにより、スイスフランはユーロに対して一時30%上昇した。EUR/CHFのチャートはここで見ることができるが、1日であまりに動いたためチャートの体をなしていない。要するにスイス国立銀行が自国の通貨安介入に失敗したため、スイスフランが急上昇したということなのだが、これまでの経緯も含めて下記に説明してゆく。これはユーロや欧州株、ひいては世界の金融市場にとって重要な意味をもつ出来事である。 続きを読む スイスフランが1日で30%急騰、欧州相場で何かが起こる前触れか