「米国の債券市場」カテゴリーアーカイブ

アメリカ経済見通し: 低金利と原油反発が辛うじて支える第3四半期GDP

わたしを含め、米国利上げの先行きを見守る投資家が心待ちにしていた7-9月期アメリカGDP速報値が発表された。実質GDP成長率は1.50%(前年同期比、以下同じ)となり、前期の確報値1.28%からやや持ち直したものの、昨年末にわたしが減速を予想して以来、アメリカの経済成長率は強いとは言えない状態が続いている。

Fed(連邦準備制度)のイエレン議長は明らかにアメリカ経済の減速を気にしているが、1.50%という数字は利上げを決めるにも撤回するにもやや中途半端な数字であり、したがっていつものように内訳を見てゆく必要がある。

続きを読む アメリカ経済見通し: 低金利と原油反発が辛うじて支える第3四半期GDP

明らかに長期停滞論を意識しているイエレン議長

フィッシャー副議長に続き、次はイエレン議長である。アメリカの利上げが議論されるなかで、わたしが2015年末から主張し続けてきたアメリカ経済の長期的減速トレンドが、Fed(連邦準備制度)の高官たちによってようやく認識されようとしている。

バーナンキ前議長やECB(欧州中央銀行)ドラギ総裁を教え子に持つことで知られるフィッシャー副議長が、アメリカ経済は長期的な減速局面にあるとするいわゆる「長期停滞論」に言及したことは既に報じたが、今度はイエレン議長である。

イエレン議長はボストン連銀が主宰する会議で講演を行った(原文英語)。昨今の経済減速は金融危機の余韻が続いているものであるとして分析する内容であり、タイトルは「金融危機後のマクロ経済研究」となっている。イエレン議長が2008年のリーマンショックを意識していることが伺える。

続きを読む 明らかに長期停滞論を意識しているイエレン議長

リーマンショックで急落した金価格、上昇した米国債

引き続き2008年のサブプライム・ローン危機の検証である。前回の記事では株式市場のバブル崩壊に先立ってアメリカの住宅価格バブルが下落を開始していた様子を説明した。

しかしバブル崩壊時に価格が上昇するものもある。今回は2008年前後における金相場とアメリカ長期国債の動きを検証したい。どちらも金融危機を原因として長期的な高騰を見せたことは同じなのだが、短期的には正反対の動きを見せている。

続きを読む リーマンショックで急落した金価格、上昇した米国債

金価格と一緒に下落したものは? 世界の金融市場チャート一覧

金価格の下落については既に報じたが、この下落は基本的には利上げ観測の高まりによるアメリカ長期金利の急騰に反応したものであり、その意味では金利上昇に金融市場の他の部分はどう反応したのかを比較検討する必要があるだろう。

そして様々な市場を比較しながら眺めたとき、ふと不気味に思うことを見つけたので、今回はその点に重点を置きながら話をしたい。以下、順に様々なチャートを比べてゆく。

続きを読む 金価格と一緒に下落したものは? 世界の金融市場チャート一覧

フィッシャー副議長がついに長期停滞論に言及、利上げと低金利継続で割れる理事会を象徴

10月5日、Fed(連邦準備制度)のフィッシャー副議長がニューヨークで講演(原文英語)し、アメリカ経済の恒常的停滞の可能性、つまり米国元財務長官ラリー・サマーズ氏が主張する長期停滞のリスクに言及した。

つい先日、サマーズ氏がブログでFedは世界経済の長期停滞を認めるべきだと主張しており、サマーズ氏の名前を挙げて長期停滞のリスクに言及したフィッシャー副議長はそれに明確に答えた形となる。アメリカ経済の長期停滞についてはこれまでブレイナード理事などが言及してきたが、フィッシャー副議長はバーナンキ元議長やECBのドラギ総裁らを教え子に持つことで知られ、影響力の強いフィッシャー氏がそのリスクについて明言したことは今後のアメリカの利上げ観測を占う上で大きな事項であると言える。

続きを読む フィッシャー副議長がついに長期停滞論に言及、利上げと低金利継続で割れる理事会を象徴

金価格下落の理由、今後の相場予想とバブルシナリオ再点検

金価格が急落した。金相場だけではなく円やユーロなども下落しているため、利上げ懸念が再燃してドル高になったと簡単に説明することも出来るが、ゴールドに賭けている投資家にとっては金価格に影響を与える経済指標の短期的推移を厳密に点検した上で、金相場の状況がどうなっているのかをより詳細に把握しておくべきだろう。そうでなければ上がり下がりを曖昧に理解したまま一喜一憂する賭博師になってしまう。

続きを読む 金価格下落の理由、今後の相場予想とバブルシナリオ再点検

元米国財務長官サマーズ氏: アメリカの利上げは不要、現行の金融政策は矛盾している

元米国財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏が自身のブログ(原文英語)でアメリカの金融政策を担うFed(連邦準備制度)に対して苦言を呈している。Fedは長らく利上げを行うと主張してきているが、その目的は2015年12月に一度利上げをしたのを最後に果たされていない。

サマーズ氏は以前よりFedの経済モデルが時代遅れのものであり、世界経済に存在するデフレリスクを適切に考慮していないとして批判を続けてきたが、今回の記事ではFedの抱える矛盾をよりあからさまに指摘している。

記事ではサマーズ氏はFedに対して4つの注文を付けている。以下、順に見てゆこうと思う。

続きを読む 元米国財務長官サマーズ氏: アメリカの利上げは不要、現行の金融政策は矛盾している

9月FOMC会合結果速報: 利上げ見送り、年内の利上げはどうなるか

米国時間9月21日、アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合を行い、利上げの見送りを決定した。

事前にイエレン議長やフィッシャー副議長を含むFed関係者からタカ派のコメントが出ていたことから利上げの有無が注目された会合であり、カンザスシティ連銀総裁ジョージ氏、クリーブランド連銀総裁メスター氏、ボストン連銀総裁ローゼングレン氏の3人が0.25%の利上げを主張したが、イエレン議長を含む多数により否決された。前回の会合で利上げを主張したのはジョージ氏だけだったが、利上げを主張するメンバーの数が増えたことになる。

続きを読む 9月FOMC会合結果速報: 利上げ見送り、年内の利上げはどうなるか

レイ・ダリオ氏が語る米国利上げの危険性と日銀の追加緩和が効かない理由

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運営するファンドマネージャー、レイ・ダリオ氏がCNBCの主催するDelivering Alpha会議(原文英語)でアメリカの利上げと世界経済に残された金融緩和の手段について語っている。世界中の投資家が米国利上げの影響と金融政策の先行きについて注目する中で発せられたダリオ氏の意見は、多くの投資家にとって傾聴に値するだろう。

続きを読む レイ・ダリオ氏が語る米国利上げの危険性と日銀の追加緩和が効かない理由