globalmacroresearch のすべての投稿

ギリシャがデフォルトとユーロ圏離脱をかけて国民投票: ドイツは金を払うべきである

欧州にとって幸か不幸か、ドイツの政治家は経済が何も分かっていなかったようである。

6月27日、ギリシャのツィプラス首相は、債権団の要求を飲むかどうかについて、7月5日に国民投票を行うと発表した。投票においてギリシャ国民が債権団の要求を拒否した場合、ギリシャは債権団の支援を受けることが出来なくなるため、実質的には服従かデフォルトかを問う国民投票である。

余りに少ないギリシャへの見返り

問題の発端は、年金制度の改革や消費増税などを盛り込んだ債権団の要求に対して、ギリシャへの見返りが今年11月までの資金繰りの支援だけであったことである。 続きを読む ギリシャがデフォルトとユーロ圏離脱をかけて国民投票: ドイツは金を払うべきである

速報: 2015年4-6月期Micron決算は予想下回る

2015年6月25日、半導体製造メーカーのMicron Technology (NASDAQ:MU)は決算を発表した。売上高は$3,853MM、純利益は$491MM、一株当たり純利益は$0.46となり、市場予想の売上高3,900MM、一株当たり純利益$0.57を下回った。

事前より指摘されていたPCセクターの需要減が重しとなった。速報なので要点だけ説明するが、縮小されるべきセクターが縮小され、伸びるべきセクターが伸びるという、Micronの長期的な運命を象徴する決算であった。 続きを読む 速報: 2015年4-6月期Micron決算は予想下回る

ギリシャがデフォルトすればユーロはどうなるか?

後日(6月28日)の記事:


さて、ギリシャ問題が瀬戸際である。ギリシャは6月30日にIMFへの約15億ユーロの返済期限を迎え、IMFは資金が支払われない場合デフォルトと見なすと宣言している。ギリシャは債権団の支援がなければこの支払いが不可能な状況にある。

個人的には、ギリシャがユーロ圏を離脱する事態になるとは思っていない。ドイツがそれを望んでいないからである。ドイツ人の欧州統一への意欲は外国人には理解しがたいほどであり、その根底には第二次世界大戦とそれ以前のドイツの歴史がある。

しかしながら、投資家としては離脱の可能性と、その場合ユーロがどうなるのかを考えないわけにはゆかないだろう。今後考えられるシナリオを順に考えてゆこう。 続きを読む ギリシャがデフォルトすればユーロはどうなるか?

REITはバブルになるように出来ている: REITバブルの造成から暴落まで

REIT(不動産投資信託)は、不動産投資にかかる面倒な問題を取っ払い、投資家が市場でいつでも不動産が売買できるようにする優れた金融商品だが、問題はREITが元々バブルになるように設計されているということである。

これはジョージ・ソロス氏が彼の著書『ソロスの錬金術』で指摘していた事柄だが、金融緩和の始まりや終わりの局面では、資産バブルに投資(あるいは空売り)できるREITに関する理解が非常に重要になるので、ここで一度説明しておきたい。

新参者の資金がREITの価値を底上げする

REITはある意味ではねずみ講である。新しく投資に参入してくる新参者の資金(増資)が、元々そのREITに投資をしている投資家の利益を底上げするように出来ているからである。 続きを読む REITはバブルになるように出来ている: REITバブルの造成から暴落まで

債券王ビル・グロス氏がドイツ国債空売りに失敗した理由

2015年の4月末からユーロ圏の債券が軒並み下落したことについては前回の記事で述べたが、そのさなかに話題になったのが、著名債券投資家のビル・グロス氏の「ドイツ国債は一生に一度の売り場」発言である。

この発言は見事に的中し、発言のすぐ後、10年物のドイツ国債の利回りは0.1%から1%まで急上昇(価格は下落)したわけだが、あまりに時期ぴったりに当たりすぎたため、グロス氏自身はポジションを取り損ね、利益を得られなかったようである。彼の所属するジャナスによれば、同期間の彼の運用実績はマイナスとなっている。

わたし自身も、ドイツ国債が利回り0.1%に達したとき、割高だと考えながら空売りに踏み切らなかった一人であるから、彼の考えていたことが良く分かる。これはグロス氏だけでなく、多くの優れた投資家にとって意外なシナリオだったのである。 続きを読む 債券王ビル・グロス氏がドイツ国債空売りに失敗した理由

長期金利が世界的に上昇、単なる調整ではない: 相場観と個別株レビュー

さて、ついに長期金利が上がり始めた。Fed(連邦準備制度)の量的緩和終了後も、欧州の低金利に合わせる形で低く抑えられていた米国の長期金利は、半年ぶりの水準である2.5%まで上がり(債券価格の下落)、何より市場を驚かせたのは、マイナス金利入りも目前かと思われたドイツの10年債が、4月の0.1%から1%まで大幅に上昇したことである。

上記の記事の通り、ドイツの国債は2014年1月にECB(欧州中央銀行)の緩和を一番最初に織り込み始めた金融資産であり、その頃から4月まで、一貫して強い上昇トレンドにあった。

これが短期的な調整かと問われれば、少なくとも下落の意味は重大であると答えたい。量的緩和の最中にこのような下落があるということは、米国債も日本国債も経験してこなかった。ECBが先進国最後の量的緩和であるということ、そしてECBが出口戦略を考えるときに、量的緩和で債券価格を支えてくれる他の国がないということを、投資家が恐れているのである。 続きを読む 長期金利が世界的に上昇、単なる調整ではない: 相場観と個別株レビュー

ECBの量的緩和はいつ終了するのか?: ユーロ圏失業率、CPI、GDPデフレーター

2015年1月にECB(欧州中央銀行)が量的緩和を導入して以来、ユーロ圏経済は着実に回復している。量的緩和導入時の記事で、失業率に改善の余地が大いにあるユーロ圏では、労働市場が完全雇用に達している日本よりも速いスピードでインフレ率が改善すると書いたが、それにしても予想以上のスピードである。

物価指標や失業率など、ユーロ圏の各指標を分析したい。先ずはドイツの物価のグラフからである。

2015-apr-germany-cpi-gdp-deflator 続きを読む ECBの量的緩和はいつ終了するのか?: ユーロ圏失業率、CPI、GDPデフレーター

日銀のテーパリング(緩和縮小)に備える投資戦略: 量的緩和バブルは何処から崩壊するか?

周知のように、現在のところ日銀は2%の物価目標が2016年度の始めに達成されるとしており、この言葉を鵜呑みにすれば、遅くとも2016年の初旬には量的緩和の縮小(テーパリング)が議論され始めることになる。

勿論、上記の記事で書いたように、追加緩和なしには物価目標は達成されず、しかも追加緩和は緩和の延長という形で為される可能性が高い。しかし、量的緩和の開始から2年以上が経過した今、日銀が量的緩和の終了に向けて動いた場合に市場がどう動くかを、投資家は考え始めるべきである。

現在の相場では何がバブルで何がバブルではないのだろうか? 株はどうか? 不動産はどうか? 日本国債は暴落するのか? 円は安すぎるのか? 等々、順番に考えてゆきたい。

続きを読む 日銀のテーパリング(緩和縮小)に備える投資戦略: 量的緩和バブルは何処から崩壊するか?

2015年以降、日銀の追加緩和はあるか? 時期はいつか?

結論から言えば、日銀の追加緩和はかなりの確率で行われる。しかし時期についてはいくつかの可能性がある。

例えば、2017年末までに追加緩和が行われるかという問いへの答えで言えば、それはほぼ確実にイエスである。しかし、日銀が当初の期限とした2016年の4月前後までに追加緩和があるかということで言えば、可能性は高いが確実ではないといったところだろう。投資家はこれらの予測に従ってドル円の戦略を建てることが出来る。以下に説明する。

2015-mar-japan-cpi

続きを読む 2015年以降、日銀の追加緩和はあるか? 時期はいつか?

2015年1Q、日本のGDP内訳: 消費増税後の落ち込みから回復せず、将来への不安を示す

さて、いよいよアベノミクスの成否が明らかになってきたという感じだろうか。

5月20日、内閣府は2015年1-3月期のGDP速報値を発表した。実質GDPは前年同期比で-1.45%のマイナスと、消費増税後の落ち込みから脱し切れていない日本経済の姿が浮き彫りとなった。

2015-1q-japan-real-gdp-growth

グラフでは前回のGDP分析と合わせるために前年同期比で見ているが、注意すべきは比較対象の2014年1-3月期は増税前の駆け込み需要で好調だった四半期であるということである。これを考慮すれば実体としては-1.45%というほど悪いわけではないが、日本経済の一番の問題は、成長要因をすべて使い果たした後にこの数字ということである。内訳を見てゆこう。 続きを読む 2015年1Q、日本のGDP内訳: 消費増税後の落ち込みから回復せず、将来への不安を示す