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2015年世界の金融市場: 米国株、欧州株、日本株、金、原油

2015年ももう後半であり、金融市場は金や原油などコモディティ価格の下落、米国の利上げ、中国株の暴落など、様々なトレンドが入り混じる様相を呈している。

これまでの単なる量的緩和相場とは異なる状況であり、単純に中央銀行に従っていれば利益が出るという状況ではない。そこで、ここで一度、世界の金融市場を俯瞰してみたい。個別銘柄よりもマクロ的分析が必要な場面なのである。

米国株

先ず、マクロで見れば米国株は買う理由のない資産クラスである。量的緩和が終わり、利上げを控えていることで、株式から債券への資金流出が懸念されている。ファンダメンタルズで見ればバブルではないが、割高であることは確かである。

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金価格急落: 価格の下落自体は既定路線も原因に新たな要素あり

さて、金価格の下落が始まったようである。2015年に入ってから概ね1150-1250ドルのレンジで推移していた金価格は、7月に入り徐々に下がり始め、20日には遂に1100ドルを割り込んだ。まだ暴落とは言えないが、ここ最近では見ていない急落ではある。

以前にも書いた通り、金価格の下落は米国の利上げ前の既定路線であるが、新たな要素として、今回の急落には米国だけではなく中国の景気減速も絡んでいるので、上記の記事に書いた買い下がりのレンジの見直しなども含めて、金の今後について書いてゆきたい。

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バルチック海運指数上昇、日本の海運株はどうか?: NSユナイテッド海運、商船三井、共栄タンカー

前回の記事で紹介したように、ばら積み船の運賃を示すバルチック海運指数が上昇している。

同時に原油タンカーなどの運賃も上昇しており、上記の記事では米国のタンカー運行会社を紹介した。一方で日本の海運株も割安放置されており、買いを入れられるか検討してみたので、以下に分析結果を紹介する。

NSユナイテッド海運 (TYO:9110)

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イラン核協議の経済制裁解除で海運株に恩恵か

7月14日にウィーンで行われていたイラン核協議で、イランと欧米6カ国は、イランの核開発を制限する見返りに、イランへの経済制裁を段階的に解除することで同意した。

この合意により、イランの原油と天然ガスが欧米諸国へ輸出されることとなり、元より供給過剰が懸念されていたエネルギー市場に更なる供給が流れ込むことになる。イランは石油埋蔵量で世界4位、天然ガス埋蔵量では世界2位である。

米国のシェール産業、減産しないサウジアラビアに加えて今回のイランと、度重なる供給増を原油価格は度々織り込んできたが、市場がまだ完全には気付いていないのが海運株への恩恵である。

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グロース株をファンダメンタルズ分析で評価する方法

本稿では、グロース株をファンダメンタルズ分析で評価する方法を説明する。

グロース株とは、現時点で利益が出ていないにもかかわらず、将来の収益性を評価されて高い株価が付いている銘柄のことである。

こういった銘柄はP/E(株価収益率)が100を超えていたりと、ファンダメンタルズを無視した株価が付いていると言われることが多いが、実際はグロース株の株価も、ファンダメンタルズ分析に基づいた評価によって決まっている。本稿ではこれを説明したい。 続きを読む グロース株をファンダメンタルズ分析で評価する方法

2015年2Q、アインホーン氏のグリーンライト・キャピタル投資家向け書簡: Netflix、Micron、ギリシャ問題

デイヴィッド・アインホーン氏のグリーンライト・キャピタルは、2015年4-6月期を総括して投資家に書簡を送った。全文はここで見ることができるが、一部を翻訳して以下に紹介したい。

4-6月期のグリーンライト・キャピタルのパフォーマンスは1.5%のマイナスとなり、年始からは3.3%のマイナスとなった。

ポートフォリオはロング(買い持ち)が103%、ショート(売り持ち)が86%で、ネットで17%のロングとなっている。前回はネットで14%のロングだったから、買い持ちがやや微増していることになるが、大局的な見方は変わらずだろう。

以下、いくつかの銘柄とギリシャ問題に関するアインホーン氏のコメントである。

Netflix (NASDAQ:NFLX)

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ギリシャが債権団と合意、ドイツは世界の批判の的に

ギリシャと債権団が2018年までの資金支援で合意した。本件は先ずギリシャの議会で採決が取られるが、恐らくはこのまま通過するのではないかと思う。債権団の課した条件は厳しいが、それでもこれがユーロ圏に残留しながらギリシャが得られる最大限の譲歩だからである。

ドイツ側はこれまでの条件に加えて、ギリシャの500億ユーロの国有資産を政府の手の及ばない信託銀行に預け、その後民営化をしてゆくことを要求し、ツィプラス首相はこれを受け入れたようである。

ドイツの厳しい要求については、ノーベル経済学賞のポール・クルーグマン教授がNew York Timesのコラム(原文英語)で「厳しさを通り越して悪意ある憎悪であり、国家主権の完全な破壊、そして絶望をギリシャに与えている」と痛烈に批判している。

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中国株は政府の介入が原因で急落から暴落へ: 中国株バブルの経緯と、何故事態が悪化したのか

凄まじい速度で暴落していた中国株は、中国政府による怒涛の介入でようやく底をついたかのように見えるが、底をついたかのように見えるだけである。

そもそも、6月の半ばに中国株が下落し始めたとき、個人的には1年近く続いた上昇相場がようやく調整局面に入るのかと思い、深刻には受け止めていなかった。確かに中国株はかなり割高ではあったが、中国のバブルとは不動産市場と地方政府や民間の債務のことであり、株式市場のことではない。

今回のような急落は、例えば日本も2013年の5月に経験している。中国株についてもそういう類のものだと考えていたのだが、中国政府が過剰に神経質な対応をしたために、急落が暴落になりそうである。本稿では中国株がバブルに至った経緯と、今後の展望を説明したい。

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ギリシャ問題は痛み分けで債権団と合意へ: 外交的にはギリシャ勝利も経済の先行きは暗い

7月9日、ギリシャ政府は債権団に対し、国民投票後初めての新提案を提出した。ドイツなど債権団側は内容の審査にあたっている。

国民投票前の債権団の要求は上記の記事に書いたが、ギリシャ側の新提案はこれらのほとんどを受け入れる内容のようである。ギリシャ政府の譲歩には、観光業に配慮した島部の優遇税率撤廃、民営化、年金改革、国防費削減などが含まれる。

これらへの見返りとして、ギリシャ側は2018年6月までの資金支援、基礎的財政収支の黒字化の見直し、債務再編などを要求している。要するに、増税を行う代わりに支出の制限も辞めるという、両者痛み分けの様相となったわけである。

フランスは合意に意欲的、ドイツは債務再編を拒否

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日経平均急落、中国株暴落、世界同時株安の原因を探る: 原因はギリシャでも中国でもない

7月8日の日経平均は600円安、3%以上の急落となった。上海市場は5.9%安と、中国政府の介入にもかかわらず暴落が止まらない。

折しも前日の記事で弱気相場を示唆したところで、タイミングが良すぎたのだが、もう一度その部分を引用しよう。

株式市場の世界的な荒れ模様とは対照的に、個人的には金融市場はあまりに凪であると思っている。ポジションをほとんど持っていないからである。個別株は別として、マクロ的なポジションはほとんど精算してしまった。投資先が見つからないのである。

株式は高すぎ、債券はバブルであるが一度の利上げでは揺るがず、ドル円もユーロドルもまだ高く、金の買い時はまだであり、ギリシャの株式市場は閉まっている。ポジションをこれほど精算したのは、2013年5月の日本市場の急落前以来である。

かくして2013年5月以来の急落となりそうである。

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