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2015年2Q、アインホーン氏のグリーンライト・キャピタル投資家向け書簡: Netflix、Micron、ギリシャ問題

デイヴィッド・アインホーン氏のグリーンライト・キャピタルは、2015年4-6月期を総括して投資家に書簡を送った。全文はここで見ることができるが、一部を翻訳して以下に紹介したい。

4-6月期のグリーンライト・キャピタルのパフォーマンスは1.5%のマイナスとなり、年始からは3.3%のマイナスとなった。

ポートフォリオはロング(買い持ち)が103%、ショート(売り持ち)が86%で、ネットで17%のロングとなっている。前回はネットで14%のロングだったから、買い持ちがやや微増していることになるが、大局的な見方は変わらずだろう。

以下、いくつかの銘柄とギリシャ問題に関するアインホーン氏のコメントである。

Netflix (NASDAQ:NFLX)

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ギリシャが債権団と合意、ドイツは世界の批判の的に

ギリシャと債権団が2018年までの資金支援で合意した。本件は先ずギリシャの議会で採決が取られるが、恐らくはこのまま通過するのではないかと思う。債権団の課した条件は厳しいが、それでもこれがユーロ圏に残留しながらギリシャが得られる最大限の譲歩だからである。

ドイツ側はこれまでの条件に加えて、ギリシャの500億ユーロの国有資産を政府の手の及ばない信託銀行に預け、その後民営化をしてゆくことを要求し、ツィプラス首相はこれを受け入れたようである。

ドイツの厳しい要求については、ノーベル経済学賞のポール・クルーグマン教授がNew York Timesのコラム(原文英語)で「厳しさを通り越して悪意ある憎悪であり、国家主権の完全な破壊、そして絶望をギリシャに与えている」と痛烈に批判している。

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中国株は政府の介入が原因で急落から暴落へ: 中国株バブルの経緯と、何故事態が悪化したのか

凄まじい速度で暴落していた中国株は、中国政府による怒涛の介入でようやく底をついたかのように見えるが、底をついたかのように見えるだけである。

そもそも、6月の半ばに中国株が下落し始めたとき、個人的には1年近く続いた上昇相場がようやく調整局面に入るのかと思い、深刻には受け止めていなかった。確かに中国株はかなり割高ではあったが、中国のバブルとは不動産市場と地方政府や民間の債務のことであり、株式市場のことではない。

今回のような急落は、例えば日本も2013年の5月に経験している。中国株についてもそういう類のものだと考えていたのだが、中国政府が過剰に神経質な対応をしたために、急落が暴落になりそうである。本稿では中国株がバブルに至った経緯と、今後の展望を説明したい。

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ギリシャ問題は痛み分けで債権団と合意へ: 外交的にはギリシャ勝利も経済の先行きは暗い

7月9日、ギリシャ政府は債権団に対し、国民投票後初めての新提案を提出した。ドイツなど債権団側は内容の審査にあたっている。

国民投票前の債権団の要求は上記の記事に書いたが、ギリシャ側の新提案はこれらのほとんどを受け入れる内容のようである。ギリシャ政府の譲歩には、観光業に配慮した島部の優遇税率撤廃、民営化、年金改革、国防費削減などが含まれる。

これらへの見返りとして、ギリシャ側は2018年6月までの資金支援、基礎的財政収支の黒字化の見直し、債務再編などを要求している。要するに、増税を行う代わりに支出の制限も辞めるという、両者痛み分けの様相となったわけである。

フランスは合意に意欲的、ドイツは債務再編を拒否

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日経平均急落、中国株暴落、世界同時株安の原因を探る: 原因はギリシャでも中国でもない

7月8日の日経平均は600円安、3%以上の急落となった。上海市場は5.9%安と、中国政府の介入にもかかわらず暴落が止まらない。

折しも前日の記事で弱気相場を示唆したところで、タイミングが良すぎたのだが、もう一度その部分を引用しよう。

株式市場の世界的な荒れ模様とは対照的に、個人的には金融市場はあまりに凪であると思っている。ポジションをほとんど持っていないからである。個別株は別として、マクロ的なポジションはほとんど精算してしまった。投資先が見つからないのである。

株式は高すぎ、債券はバブルであるが一度の利上げでは揺るがず、ドル円もユーロドルもまだ高く、金の買い時はまだであり、ギリシャの株式市場は閉まっている。ポジションをこれほど精算したのは、2013年5月の日本市場の急落前以来である。

かくして2013年5月以来の急落となりそうである。

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ギリシャ国民投票後の進展: やはりギリシャはそれほど譲歩を得られないか

債権団の要求にNoを宣言したギリシャの国民投票から2日が経ち、ユーロ圏各首脳が交渉に向けて動きを見せている。

先ず、これには驚いたが、バルファキス財務相が辞任した。国民投票後の交渉で、ドイツのショイブレ財務相らと折り合いの悪いバルファキス財務相が交渉の場に行くのはギリシャにとって不利に働くとツィプラス首相が判断したためで、事実上の更迭である。

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ギリシャ国民投票の開票結果はNo、次は合意かユーロ離脱か: ドル円、株式、債券はどうなるか?

ギリシャの国民投票の開票作業がほぼ終わったようである。開票結果は、出口調査の通り債権団の要求に反対する内容となり、Yesが38%に対してNoが62%、反対派の圧勝となった。ツィプラス首相やバルファキス財務相はTwitterで勝利を宣言している。

予定通り、ギリシャはここから債権団との交渉に臨んでゆくことになる。バルファキス財務相は月曜日の合意も不可能ではないと述べていたが、国民投票の結果をドイツが受け入れるにはもう少しの時間が必要だろう。

国民投票は債権団の最終提案に対する是非を問うものであるため、ギリシャは債権団から譲歩を引き出せなければ合意ができない状況となった。最終提案の内容は以下の記事にある。

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速報: ギリシャ国民投票結果、出口調査ではNoが多数派

債権団の要求を受け入れるかどうかを問うギリシャの国民投票で、現地時間の5日、投票が締め切られ、開票作業が始まった。

Metron Analysisの出口調査ではYesが46%に対しNoが49%、GPOによる出口調査ではYesが48.5%、Noが51.5%となり、どちらの調査でもNoが優勢となっている。 続きを読む 速報: ギリシャ国民投票結果、出口調査ではNoが多数派

ギリシャ国民投票はどうなるか?: 国民投票後の投資戦略

現在の金融市場では、株は高過ぎ、しかし空売りするには早すぎ、債券はバブルであり、為替はイベントがなく、金の買い場はまだ先であるという、グローバル・マクロの投資家にとって日照り続きの状況にあるが、ギリシャの国民投票をめぐる市場の混乱が事態を少し打開するのではないかと考えている。

国民投票は現地時間の7月5日に行われる。本稿では国民投票が債権団の提案に賛成した場合、反対した場合にそれぞれ何が起きるのかを纏め、それぞれの場合にどう投資すべきなのかを記しておきたい。

事前の調査では賛成と反対が拮抗

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ユーロ問題の文化的背景: ドイツの外交音痴が治らない限りユーロ圏はギリシャ問題を何度でも繰り返す

ユーロ問題の経済的背景については何度も書いてきたから、今回はその文化的背景について書いておこうと思う。メインテーマはドイツの外交的・歴史的立場についてである。

ヨーロッパ文化におけるドイツ

古来よりヨーロッパ文化の中心はイタリアであり、フランスであり、イギリスであった。ヨーロッパの料理はイタリアを起源とするものであり、フランス人がそれを継承してイギリスの宮廷に持ち込んだ。ドイツやオーストリアでも、宮廷ではフランス料理が振る舞われた。

音楽ではモーツァルト、ベートーヴェンの時代においてもイタリアのオペラが尊敬されていた。モーツァルトのオペラにイタリア語のものとドイツ語のものがあるのは、彼の時代においても、ドイツ語は歌謡としてはあまりに粗野であるという認識が、ドイツ語圏の宮廷内にあったためである。 続きを読む ユーロ問題の文化的背景: ドイツの外交音痴が治らない限りユーロ圏はギリシャ問題を何度でも繰り返す