ジム・ロジャーズ氏: 砂糖価格暴落の原因は原油価格暴落

新型コロナウィルスの世界的流行で金融市場が荒れているが、前回の記事ではジム・ロジャーズ氏が砂糖の買いを推奨したことを紹介した。

この株安相場で砂糖もまた暴落しているからである。しかし何故ウィルスの流行で砂糖が暴落するのだろうか? 今回の記事ではそれを少し補足したい。

新型コロナで砂糖暴落

まずは砂糖先物のチャートを再掲しよう。

新型コロナによる株安と同じ時期から暴落している。

これが何故かと言えば、それはジム・ロジャーズ氏の著書『商品の時代』で説明されている。ロジャーズ氏はこの本で次のように言っている。

砂糖の実態なんて三語で語れる。ブラジル、中国、石油だ。

中国とは中国が豊かになったことによる嗜好品の需要増加である。(やや古い本であることは割り引いて読みたい。)ではブラジルと石油とは何か?

ブラジルとは砂糖の最大の生産国のことである。しかし石油とは何だろうか? 一見砂糖とは何の関係もなさそうに見える石油の価格が実は砂糖価格に大きな影響を与えているのである。

砂糖と原油

何故ならば、砂糖の原料となるサトウキビは同時に燃料として使われるエタノールの原料にもなるからである。

いわゆるバイオエタノールである。ロジャーズ氏は次のように書いている。

粗糖の世界最大の生産国にして輸出国であるブラジルは、世界中に砂糖をばら撒けば価格は下がり、国内の砂糖生産者が保管や輸送にかかる高い費用を賄えなくなるので、結局、彼らの足を引っ張ることになると知っている。そこでブラジル政府は巧妙な手口を思いついた。エタノール生産に回すサトウキビを増やせばいい。

ブラジルが砂糖と同時にエタノールの大輸出国であることに留意したい。つまりブラジルは燃料価格が下がればサトウキビを砂糖の生産に回すため、砂糖の供給も膨らみ砂糖価格が下落する。こうして燃料価格と砂糖価格は一蓮托生の運命となっているのである。

実際に石油危機など原油価格が吊り上がる場面では砂糖価格も高騰することが多い。ロジャーズ氏は次のように言っている。

エコノミスト(や政府当局)は何かの値段が上がると、いつでも「石油価格の高騰」のせいにするような気がときどきするが、砂糖価格については彼らの言うことも一理ある。1970年代に起きた石油危機の際、ブラジルは砂糖原料の三分の一をガソリンと混ぜるエタノールに回し、砂糖の価格上昇を助長した。

ブラジルは現在、上昇相場の成否を決める立場にある。すべてはブラジルがどれだけを砂糖で輸出し、どれだけを燃料タンクに回すかにかかっている。

これが現在の新型コロナ相場で砂糖価格が暴落している理由である。先物をトレードしない個人投資家であってもこういう経済の理屈を知っておくことはなかなか面白いのではないだろうか。原油価格の動向については以下の記事で説明している通りである。OPEC+の会合が色々ありながら進んでいるようだが、本命はウィルスの流行減速であって産油国の談合はおまけだろう。

こうした場面で砂糖の買いを推奨できるアナリストは多くない。ロジャーズ氏は偉大なアナリストである。今回引用した彼の著書『商品の時代』には原油や金を始めとして鉛やコーヒー相場の見方なども書かれているので、興味のある読者にはお勧めしたい。


商品の時代