2015年3月12日のジム・ロジャーズ氏のインタビューである。
インタビューは英語で行われているので、主な箇所を以下に翻訳する。
質問:金の価格は上下しているが、あなたが金を売る条件は何か?
ロジャーズ氏:金はいずれバブルになる。バブルになったら売るだろう。逆に金価格が下落していった場合はどうだろうか? 金を売る理由は特に見当たらない。最終的には子供たちに遺すためなのだから。
質問:中国とロシアは協力して米ドルの価値を下げようとしているか?
ロジャーズ氏:中国とロシアが協力して米ドルの価値を下げようとしているとは思わない。今のところは。しかし、彼らは既存の金融システムに変わる新たな金融システムを作りたいと思っている。わたしはアメリカ人だからあまり言いたくはないのだが、彼らがそうせざるを得ないのはアメリカのせいなのだ。米国は国際的な金融規制や罰金、経済制裁などを作り上げ、他の国に押し付けている。他の国々はこういう規制にうんざりしていて、代わりとなる金融システムを欲している。それは勿論、新たな基軸通貨を意味することにもなるだろう。
質問:資産を安全に保管しておくのに一番良い国は何処か?
ロジャーズ氏:それはあなたが誰から資産を守りたいのかによる。米国や西側諸国から資産を守りたいのであれば、北朝鮮は非常に安全な選択肢となるだろう。逆に、あなたが北朝鮮を怒らせた場合、あまり安全な選択肢ではなくなるだろう。要するに、誰から資産を守りたいかによるのだ。わたしはシンガポールに住んでいるし、シンガポールに資産があるが、同時に世界中に資産を分散させている。イギリスと、一部は米国にあるが、米国からは資産を脱出させたい。最終的には米ドルの両替規制を予想しているからだ。歴史的にはスイスとオーストリアは妥当な資産の保管場所だったが、最近ではこれらの国々でさえも以前ほど安全ではなくなっている。シンガポールは多くの理由で多くの人々の選択肢に挙がるだろうが、米国が真剣に誰かの足跡を追おうとした場合、シンガポールは米国に屈するだろう。
質問:今現在(2015年3月)保有すべき通貨はどれか?
ロジャーズ氏:今多く保有しているのは米ドル、中国元、香港ドル。
質問:(番組の視聴者のいる)カナダは資産の預け先としてはどうか?
ロジャーズ氏:カナダはわたしのリストに挙がっている。一部のヨーロッパ人が米国には決して資産を預けず、北米の資産はすべてカナダに持っている例を知っている。第二次世界大戦中、米国は、同盟国か敵国かを問わず、すべての人の預金口座を封鎖した。カナダは、同盟国か敵国かを問わず、誰の資産も封鎖しなかった。カナダは歴史的にも現在も米国より中立的だ。資産を預けるならば米国よりカナダだということは、確実に言えるだろう。
以上がインタビューの抜粋である。先ず、金がバブルになるという意見については、普段彼が言っているように、各国の量的緩和が終了し、金融市場が暴落したときに、各国の中央銀行は量的緩和を再開せざるを得なくなり、そうなれば通貨の信認が失われ、金が暴騰するというシナリオだろう。
個人的な意見を言えば、いま金を保有することは諸刃の剣である。米国が問題なく利上げを行えば、金は下落を免れないだろう。しかし、もしドルが上がり過ぎたことで米国が利上げを撤回すれば、世界的な通貨切り下げ競争が始まったと受け止められ、金は恐らく暴騰することになる。
資産をどの国の口座に置くかということは、ある程度の資産を持っていれば現実的な問題であり、戦時中では文字通り死活問題となる。これには国自体の信頼性のほかに、良い銀行やブローカーがどの国にあるかということにもよる。
為替は今後どうなるだろうか? スイスフランはそれでもリスクは低いと言えるかもしれない。国の規模が小さく、国債の発行額が充分でないために量的緩和が難しいからである。
ポンドは米ドルと方向性が同じだが、ドルとのリスク分散には向いている。以下の記事に書いた通りである。
中国元は、中国が元を基軸通貨とすることを推進するならば、短期的には為替介入をしたとしても、その価値は上がらざるを得ない。しかし、これは不動産などのバブルが上手く沈静化できればの話である。中国経済は統計が信用できないために実際のところが分かりにくい部分がある。
2015年の相場で一番難しいのは為替である。個人的には3月のドルの上げ相場を利用して、保有していたドルを一部ポンドに移した。金は現在の価格では買えず、安くなる機会を待っている。下記の記事にも書いたように、ドルの上げとユーロの下げが行き過ぎた場合、金融市場全体に影響を及ぼすだろう。2015年、ユーロドルに注目したい。