ガンドラック氏、新型コロナでの企業救済とヘリコプターマネーを痛烈批判

新型コロナ相場の空売りで大儲けした債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏がTwitterで新型コロナウィルス肺炎に対する政府の経済対策を痛烈批判している。彼ならばそう言うだろうと思っていたが、やはりそのようである。

新型コロナで企業救済

アメリカでも日本でも金がないはずの政府が経済対策を行おうとしている。あらゆる業界がここぞとばかりにうちも救済してくれと言っている。ガンドラック氏はこう言っている。

政府による企業救済とヘリコプターマネーを求める声がうるさいほどである。でも政府は文無しだ! まったくの文無しだ。

一番典型的なのは航空会社だろう。新型コロナウィルスの影響で飛行機が飛べなくなっているからである。しかしガンドラック氏はこういう状況に耐えられるよう資金を貯めておかなかった航空会社を批判している。

航空会社が500億ドルの救済を求めている。しかし航空会社はここ10年で455億ドルの自社株買いを行なってきた。実質彼らは自分の買った株を10%利益を足して政府に買ってくれと言っているようなものだ。

以下の記事で分析をしたように、実際に航空会社の財務諸表を見てみると同情の余地のない経営をしていたところもある。それを救済することが正当化できるのかということである。

また、救済を求める声は航空業界だけに留まらない。ガンドラック氏は次のようにコメントしている。

映画館の運営者たちが政府による救済を求めている?! マジで!?!? 次は株式ETFの保有者たちが2月19日(訳注:米国株下落前)の株価でETFを買ってくれと政府に頼むだろう。

日本でも和牛券を出すという話が政治家から出ている。ばら撒きたい側とばら撒かれたい側の利害が常に一致するのが政治である。ガンドラック氏のようにヘッジファンドマネージャーにこうした姿勢を批判する人々が多いのは、彼らが利権によらずに実力で金を儲けてきた人々だからである。実力で金を儲けられない人々だけが利権にすがる。しかしそういう人だけが政界の周りに行くので、政治とは常にそういうものである。

政府による救済を一切行わないことを強く推奨する。強欲と経営の失敗を助けることになるだけだ。

ヘリコプターマネー

また、経済学的観点からのコメントもある。

アメリカと日本などで国民に対する現金給付が議論されているが、ガンドラック氏はこれにも反対のようだ。彼は次のように述べている。

理論上、借金漬けの消費者にヘリコプターマネーを行なっても借金返済に使うだけだ。返済を猶予するまでは。それも起こりつつある。借金漬けの政府が借金漬けの消費者を救済し、その金が借金漬けの企業を救う瞬間。

2008年のリーマンショックの辺りから世の中は政府による救済措置に遠慮がなくなったように思える。そして政府の借金は魔法の杖ではないということが完全に忘れ去られている。それにはコストが伴うのである。

そのコストは既に表れている。第一に今回株価の下落幅がこれほど大きいものになったのは、元々株価が異常な高さまで持ち上げられていたからである。そして第二に金融政策の効果が完全に薄くなっている。金利がこれ以上下がらないからである。

そのためにこれまで万能のように思えた量的緩和が下落相場に効いていない。市場は中央銀行が株価を操作する前の状況に戻っている。市場は市場の行きたい場所に行くということである。

今回の新型コロナ相場では、市場の行きたい場所というのは感染者数の増加(株安)と減少(株高)だろうということを以下の記事で説明した。

ちなみにガンドラック氏もそう予想している。

今回の株安は市場の行きたいところが底なしの下落ではないために救われるだろう。しかし問題は次の下落相場が下落が下落を呼ぶような不可逆のトレンドであった場合である。その時に金融政策が効かなければ、1980年以来の低金利政策によるバブルのつけが一気に市場と経済に回ってくることになる。以下はアメリカ長期金利のチャートである。

もう一度言うが、借金にはコストがあるのである。人類はそれを遠からず身をもって知ることになるだろう。