パウエル議長はよほど焦っているようである。新型コロナウィルス肺炎を受けて株価が急落していることを受け、アメリカの中央銀行Fed(連邦準備制度)は米国時間3月15日に緊急のFOMC会合を開催しゼロ金利までの利下げと量的緩和の正式再開を決定した。あまり良い予感はしないが、至急記事を書いておく。
2回目の緊急利下げ
Fedは3月3日にも緊急会合を開いており、これで3月の緊急利下げは2回目となる。前回は0.5%の利下げが行われたが、今回は更に1%下げて一気にゼロ金利となった。
発表された声明文には次のように書かれている。
フェデラルファンド金利のレートを0%-0.25%のレンジに下げることを決定した。この金利のレンジは経済が現在の事態を乗り越え、完全雇用と物価安定という目標に向けて再び進み始めるまで維持されると予想している。
政策金利のレンジは3日の緊急利下げにより1.00%-1.25%となっていた。
しかもパウエル議長が打ち出した追加緩和はそれだけではない。
国債市場とモーゲージ担保証券市場が円滑に機能することを助けるため、今後数カ月でわれわれは国債の保有額を少なくとも5,000億ドル、モーゲージ担保証券の保有額を少なくとも2,000億ドル増やすことを決定した。
つまりは中央銀行が証券を買い入れる量的緩和を再開するということである。
ちなみにFedは短期金融市場の混乱を受けて短期国債を買い入れるオペレーションは既に行っていたが、上記の措置はそれに追加で行うことになるようである。
市場の反応
市場の反応はどうなるだろうか。まずこの発表を受けてドル円は下落している。
金曜日の市場では108円近辺まで反発していたが、そこから106円台まで一気に落ちた。ドルの金利が下がったのだから当然である。少し前に記事にしている。
株式市場の反応はどうなるだろうか。まだ確かなことは言えないが、3日の緊急利下げでは米国株は大幅安で反応した。
そして今回はどうなるだろうか。週明けの東京市場の開場前に始まっているシカゴの日経平均先物は大幅安で反応している。今回も同じことになるのかもしれない。
株価は暴落の危機に
何より一番危機的なのが、新型コロナウィルス肺炎のピークは恐らくこれから来るということである。
にもかかわらず、現時点で米国、ヨーロッパ、日本のすべての中央銀行に追加緩和の余地がほとんどなくなってしまった。今後市場が更に荒れた時、中央銀行はほとんど何もすることが出来ない。日銀は株式ETFの買い入れの増額を検討しているようだが、アメリカの中央銀行でも相手にされない状況では日銀の措置は見向きもされないだろう。
また、アメリカも中央銀行による株式の買い入れを考えているようだが、ボストン連銀総裁によればこちらは法改正が必要のようであり、急に行うことは出来なそうである。
新型ウィルスの流行状況はイタリアで2万5,000人程度、スペインで8,000人程度、ドイツとフランスが5,000人台、アメリカが3,600人である。ヨーロッパでの封鎖措置はピークに近づきつつあるが、アメリカの混乱はこれからなのである。
その時市場が更に暴落したら、中央銀行はどうするのだろうか? ほとんど何もできない。そうすれば下落する市場はそのまま下落してゆくしかないのだろうか。
銃弾が最後の一発ならば撃ってはならないと経済学者のサマーズ氏が言っていたではないか。パウエル議長は何故撃ってしまったのか。
今後の市場についてはあまり良い予感はしない。以下の記事で書いたシナリオはメインシナリオではなく、あくまでサブシナリオだったが、残念ながらこのシナリオを本気で考える時が来てしまったようである。
ただ、ここの読者にはすべてのシナリオが事前に検討されて説明されている。今後も金融市場の動向を事前に報じてゆく。