新型コロナウィルス肺炎がアメリカを含む世界中で流行する中、米国時間3月17日から18日にかけてアメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)が金融政策を決定するFOMC会合を開催する。市場の事前予想など情報を纏めておこう。
3月FOMC
新型ウィルスの流行を受けて株式市場が急落しているが、Fedは3月の始めに緊急の0.5%の利下げを行ったばかりであり、今回更に大幅な利下げを行うとすれば2週間ほどの間に2回大幅利下げが行われることとなる。
いつも通り重要となるのは金利先物市場が3月の会合結果をどう予想しているかだが、市場の予想する利下げ確率は次のようになっている。
- 0.5%の利下げ: 100%
ということである。利下げは通常1回につき0.25%の幅なので、初旬の利下げを含めて今月は2回分の利下げが2回行われることとなる。合計で1%であり、ゼロ金利までの残りの利下げ余地は0.5%となる。
市場に服従するパウエル議長
パウエル議長は利下げに関してはこの市場予想をそのままなぞるのではないかと思う。少なくとも利下げ幅がこれより小さくなることはないだろう。
パウエル氏は以前は市場に対しても強気だった。2018年の世界同時株安の最中に強力な金融引き締めを強行すると主張した。以下の記事である。
しかし結局このFOMC会合が瀕死の市場にとどめを刺すことになり、市場は更に暴落、パウエル議長はその後金融緩和に転換し、この時以来市場の要求を断らないどころか、市場が必要ともしていなかった予定外の緊急利下げを今月は行ったわけである。
3月以降の利下げ
今回の利下げに関してあまりサプライズはないだろう。一方で、重要なのは3月以降に続いて利下げが行われるのかどうかである。3月に0.5%の利下げが行われた後、年末までに金利がどうなっているかについての市場予想は次のようになっている。
- 利上げ1回: 5.4%
- 動かず: 74.5%
- 利下げ1回: 18.7%
- 利下げ2回: 1.4%
3月以降は利下げを停止するという予想がメインシナリオとなっている。これは株式市場が少し反発したことと関連している。米国株のチャートは次のようになっている。
反発する前には金利先物市場は年末までにアメリカがマイナス金利になる可能性を織り込み始めていた。株価が少し戻ったので少し悲観が後退したということである。
利下げは株価の底に影響するか
投資家にとっての問題は利下げなどの動きが株安を止められるかということだが、この話については何度も書いている通りである。
事実、3月初旬の緊急利下げではパウエル議長の慌てた動きを嫌って米国株はむしろ下がってしまった。
ECB(欧州中央銀行)もこの動きに続いて量的緩和を拡大しているが、ドイツ株も同じ反応となっている。
筆者は金融市場の効率性に少し驚いている。2018年の世界同時株安ではパウエル氏の金融緩和への転換にすぐに反応した市場が、今回の下落相場では金融緩和を無視し続けている。それは2018年の世界同時株安の原因が金融政策そのものだったために金融政策で解決できた一方で、今回の下落は新型ウィルスという金融政策ではどうにもできないものだからである。
市場はその理屈をしっかり反映して今回は下落を続けている。ではこの下落はどうなれば止まるかということについては、既に書いた記事を参考にしてほしい。
この記事を読めば、今回のFOMCの動きで投資家が株安の底値を拾いに行ける可能性が高まったと筆者が判断する理由が分かるだろう。
量的緩和はどうなるか
ただ、今回のFOMC会合で1つ重要なのは現在Fedが行っている実質的な量的緩和がどうなるのかということである。
この量的緩和は今年の6月までには終了する予定であり、その数ヶ月前には縮小が予告されるはずだった。つまり、コロナウィルスの件がなければこの3月の会合で量的緩和の縮小が表明される予定だったのである。
今回の会合では利下げにあまりサプライズはないだろうが、この量的緩和に関して何か言及がある可能性がある。18日の会合についてはいつも通り報じてゆくので、この論点についても注意を向けておく。