新型肺炎で暴落中の原油価格、ロシアが減産拒否で安値更新

中国武漢発の新型コロナウィルス肺炎で金融市場が荒れている。株価は急落し、ドル円も下落しているが、下がっているものは他にもある。新型ウィルスによって飛行機が飛ばず、陸上輸送も減少しているため需要減少を織り込んで原油価格が急落している。

原油価格の下落

どのくらい下落しているかと言えば、このくらいである。

40ドル台前半と言えば2018年の世界同時株安の時と同じ水準まで下がっている。もう少し長期で見ると次のようになる。

ここ数日、市場では下落に歯止めがかかる期待もあった。サウジアラビアやイランを始めとする産油国で構成されるOPEC(原油輸出国機構)が原油の減産を議論していたからである。

新型ウィルスによって需要が減少する分供給を減らして価格下落を抑えようということである。OPECを含む産油国は元々減産を行なっていたが、新型ウィルスを受けて更なる減産がOPECの間で合意された。

問題はこのOPEC間の合意に「非OPEC国であるロシアが減産に合意する場合」という条件が付いていたことである。ロシアは産油国だがOPECには加入していない。それでここ数日原油市場ではロシアの反応が待たれていたが、ロシアがこれを蹴ったのである。それで6日の相場では原油価格は10%近い大幅下落となった。

原油価格の動向予想

さて、1月から繰り返し言い続けていることだが、来年になれば新型ウィルスのことなど皆忘れている。投資家としてはパニックで売られたものは買っていきたいところだが、現在の原油価格は安いのだろうか? 原油価格の水準については2月前半の記事で過去の下落相場に触れながら既に説明しているので再び引用したい。

2016年の安値では30ドルを下回ったが、シェール企業が生存できないことは既に試験済みであると言える。したがってそこまで下がればファンダメンタルズ的には下げ過ぎだろう。

また、2018年の底値は40ドル前半だが、この辺りは米国のシェール企業の損益分岐点でもある。つまり、ここより下がるとシェール企業は利益がほとんど出せなくなる。シェール企業が立ち行かなくなれば供給が減少し、価格はいずれ上がり始めるだろう。

よって原油価格は30ドルから40ドル前半で安い水準だと言えるだろう。

この記事を書いた当時は原油価格は50ドル程度だったが、今回の下げでようやくこの「安い水準」に入ってきた。チャートをもう一度掲載しよう。

ただ、ファンダメンタルズ的に安いことと底値が何処かということは別の問題である。安いものが更に下がる可能性があるからパニックなのである。株式市場も原油相場もアメリカの利下げで回復しなかったところを見ると、やはり焦点は金融政策ではなく新型ウィルスの動向であり、どちらも流行のピーク近辺が底値になりそうである。

新型コロナウィルス最新情報

では新型コロナウィルス肺炎の流行状況がどうなっているかと言えば、ヨーロッパでは状況はかなり深刻になっている。各国の患者数は以下の通りである。

  • イタリア: 4,636人
  • ドイツ: 670人
  • フランス: 653人
  • スペイン: 400人
  • スイス: 214人

特にドイツやフランスでは1日に50%近い勢いで増加している。これらの国で患者数が数千人規模に膨らむのは時間の問題だろう。

一方で金融市場に一番影響の大きいアメリカでの流行だが、現在の患者数は260人でヨーロッパほどの数ではないものの、少し前まで緩やかだった増加率がここ数日で急増している。アメリカでの大流行もやはり避けられそうにないようである。レイ・ダリオ氏の予想していた通りである。

ヨーロッパでは来週が正念場になるだろう。アメリカでは再来週が山場といったところだろうか。その後患者数がどうなるかによって原油市場を含む株式市場の動向が決まるはずである。

基本的には原油価格を含め流行のピークが資産価格の底値という方針を維持したいが、懸念はやはり金融政策の弾切れである。3月18日のFOMC会合では恐らくアメリカ国内の流行状況が最悪の状態で中央銀行は利下げの判断を強いられる可能性が高い。

金利先物市場はついにアメリカのマイナス金利の可能性を織り込み始めた。そのことについても記事を書くつもりである。