中国武漢発の新型コロナウィルス肺炎が日本やヨーロッパにも広がったことを理由に株式市場が急落し、ドル円も急降下している。史上最高値にまで上がっていた米国株もついに屈した形となった。
急騰後に急落したドル円
ドル円は少し前に理由もなく急激に2円も円安ドル高となり市場で話題になっていた。以下の記事ではその件を取り上げ、2018年の世界同時株安直前に日経平均が理由もなく急上昇したことに似ていると書いた。
当時の日経平均がどういう動きをしたか、もう一度チャートを掲載してみよう。
日経平均はこの時結局19,000円まで高値から20%以上下落している。2018年の下落については以下の記事を参考にしてほしい。
ドル円のチャートが今どうなっているかと言えば、次のようになっている。
当時の日経平均の値動きと非常によく似ている。
新型肺炎株安におけるドル円の今後の動向
問題は今後の動向である。ドル円の動きを占う上で参考になるのはユーロドルの値動きだが、ヨーロッパで感染が広がったにもかかわらずユーロ安ではなくドル安ユーロ高で反応している。円高になったドル円と同じである。
ユーロドルのチャートは上向きがドル安ユーロ高となる。
このように流行が広がった国の通貨が買われているのである。一見不合理に見えるが、投資家は通常リスクオンのときには金利の高い通貨に投資しているので、リスクオフになると金利の高い通貨から売られる。この場合はドルである。これが金融市場の通常の値動きである。
したがって結局は新型肺炎株安がどうなるかということになる。以下の記事におけるレイ・ダリオ氏の分析によると、SARSなどの例では感染が広がった国では下落が大きくなり、流行のピークとともに底を迎え、感染が広がらなかった国の株価には大きな影響は見られなかった。
問題は今回の新型肺炎において「感染が広がった国」が何処になるかということである。現時点での感染者数を並べてみよう。
- 中国: 78,824人
- 韓国: 2,337人
- イタリア: 655人
- イラン: 245人
- 日本: 226人
- シンガポール: 96人
- 香港: 94人
- 米国: 60人
- ドイツ: 48人
中国、韓国、イタリア、イラン、日本での流行は確定している。イタリアからヨーロッパ全土(海を隔てたイギリスは除く)への本格的拡大はまだだが、筆者は当初から不可避であると見ている。
問題はアメリカがどうなるかである。トランプ大統領は「米国民へのリスクは非常に低い」と言っているが、アメリカの疾病予防管理センターは「問題は国内流行が起こるかどうかではなく、いつ起こるかだ」と言っている。ここ数日の感染状況を見ていると、アメリカでの流行拡大はメインシナリオであるように見える。
そうなれば金融市場にとっては非常に大きなリスクとなる。米国が「感染が広がった国」となった場合、米国の株価指数が2003年のSARSの時の香港株のようにウィルス流行のピーク(当時は5月)まで下落を続けるということになるからである。米国の株価指数S&P 500のチャートは次のようになっている。
そしてドル円がリスクオフの下落を続けるのであれば、その場合ドル円も米国株の下落に従うということになるだろう。
結論
しかし新型肺炎における市場下落の可能性については十分すぎるほど準備をしてきた。流行拡大で真っ先に下落する銘柄を山のように挙げてきたからである。
紹介した日本株個別銘柄はほとんどすべてが大暴落の状態となっている。日本での流行拡大の危険性もどこよりも早く警告してきたが、当時市場は気に留めてもいなかった。
原油価格についてはファンダメンタルズ的な割安圏が何処かを説明し、原油価格は今そこに近づきかけているが、ファンダメンタルズ分析よりは流行のピークの時期によって底値を探るべきだろう。パニック時には市場価格はファンダメンタルズを無視して暴落するものだからである。
投資家にとってのここからの問題は流行のピークがいつになるかと、そして流行のピークで底値を迎えた後に株価ははたして反発するのかどうかということである。この問題については以下の記事で触れているので参考にしてほしい。
この記事ではアメリカの金利動向が株価の今後の動向を占う上で重要だと書いたが、その最新情報についてもまた触れるつもりである。