東京電力 (TYO: 9501)や関西電力 (TYO:9503)など、大手電力会社が独占してきた家庭への電力供給が自由化されようとしている。
日本における電力の供給は、2000年から徐々に自由化が行われてきた。2000年に大型工場や百貨店への供給、2004年に中型工場やスーパー、2005年に小型工場、そして2016年4月には家庭や事務所などへの電力供給が自由化される見通しである。
日本の電力消費全体の40%(上記資料による)を占める家庭向けの電力供給には、大手商社からソフトバンク (TYO:9984)まで様々な企業が名乗りを上げているが、その中でも投資家にとって魅力的な数銘柄を取り上げたい。
ガス会社
先ずは本命のガス会社である。2000年に電力の自由化が始まって以来、工場などへの電力供給の自由化は既に行われているが、電力供給に新規参入するいわゆる「新電力」の最大手はエネットであり、その出資比率はNTTファシリティーズ40%、東京瓦斯30%、大阪瓦斯30%となっている。エネットは新電力の50%の市場シェアを有し、東京瓦斯と大阪瓦斯は既に幅広い顧客を抱えていることから、家庭向けの電力小売でも最有力と言えるだろう。
電力会社とガス会社の市場規模を売上高で大雑把に比べても、東京電力の売上高6.6兆円に対し東京瓦斯が2.1兆、関西電力の3.3兆に対し大阪瓦斯が1.5兆であるから、参入の余地は大いにあると考えるべきだろう。当然ながら、コモディティである電力の供給は、大量生産で価格を低く抑えられる大手電力会社に大きなアドバンテージがあるが、欧州などでも電力小売自由化のあとは新規参入業者がある程度のシェアを獲得しており、大手電力会社の完全な独占が続くとは考えがたい。
株式銘柄としては、2月5日時点で東京瓦斯の株価が740、予想P/E(株価収益率)は14台、大阪瓦斯の株価が496、予想P/Eが12台と、市場規模の拡大を考えればやや割安よりの水準ではあるが、今すぐ買いたい水準ではないとも言える。日本株全体が短期的に上がっていることもあり、15%程度の調整を待ってから買いを入れるか、TOPIX先物の売りと合わせてロング・ショートとし、ベータリスクをヘッジすべきだろう。
新電力
新電力のみに注力する新興企業からは、パーム椰子の殻など、有機物を燃料とする再生可能エネルギー発電所を保有し、また大企業の有する自社工場向け発電の余剰電力を販売するイーレックスである。
現在は官庁や事務所、学校やリゾート施設などに電力を提供しているが、2016年より家庭向けの供給も可能となる。こちらも株価は1,153、予想P/Eは17台と、将来の大規模な市場開放を考えればやや割安な水準で取引されているが、こちらもやはり20%程度の調整を待ちたい。上記銘柄も合わせて、米国の利上げに際して株式市場が荒れた場合の買い下がり銘柄として名前を覚えておきたい。
因みに、電力供給に参入している特定規模電気事業者の一覧は以下で見ることができる。全て調べた上で、個人的には結局上記の3銘柄に絞ったが、見方によっては他に良い企業があるかもしれない。
リストアップされている577社のうち上場企業はそれほど多くないが、電力自由化のシナリオに興味を持っている投資家は、この中から魅力的な投資先を探してみるべきだろう。ファンドマネージャーのようにアナリストを抱えていない個人投資家には骨が折れる作業かもしれないが、利益のためにはこれくらいの気力と努力は必要なのである。