中国武漢の新型コロナウィルス肺炎、株式投資戦略と関連個別銘柄

2020年1月に入り、中国の武漢で発生したコロナウィルスの感染拡大が世界的なニュースになっており、株式市場にも影響を与えている。特に肺炎の拡大がビジネスに大きく影響する企業の株などは敏感に反応しており、今回の記事では新型ウィルスが株式市場に与える影響を考えたい。

新型ウィルスと株式市場

何か大きなニュースが出た時、それがどういう銘柄にどういう影響を及ぼすのかを出来るだけ早く考えるのが投資家の仕事である。中国で致死性の肺炎が広がった場合、産業にはどういう影響を与えるだろうか? 読者にはどういう考えが浮かぶだろうか。先ず言えるのは、中国の航空会社が顧客をある程度失うだろうということである。

ということで中国最大の航空会社である中国国際航空のチャートを見てみたい。

8.3から6.7まで20%ほどの急落となっている。中国国際航空のハブ空港は北京と成都だが、武漢は中国に中心に位置し交通の要所であるため、武漢発着の便も多い。またコロナウィルスは今や中国の各地に拡大しているため、株価の下落は当然と言えるだろう。

また、中国国際航空と並んで中国の大手航空会社である中国南方航空も同じように下落している。

5.6から4.6まで18%ほどの急落である。

あるいは航空会社以外では北京首都国際空港も下落している。

7.6から6.4まで16%ほどの下落だが、他の銘柄より下落が早いため、元々弱かったところに追い打ちがかかったということだろう。北京は武漢と違い今のところ空港閉鎖まで追い込まれてはいないが、今後の感染状況によっては北京も空港閉鎖に追い込まれる可能性もあり、そうすれば株価は更に下落することになるだろう。

逆に新型ウィルスで上がった銘柄もある。マスク関連銘柄では日本のシキボウなどが急騰している。

繊維に特化していることと、現時点でもP/E(株価収益率)が10程度と値頃感から買いやすいのだろう。

一方で世界的にマスクの大手といえばアメリカの3Mだが、こちらはマスク以外の売上が大きいため今のところ株価にはほとんど影響を与えていない。中国では3M製マスクの売り切れが報告されている。

また、アメリカでは新型ウィルスのワクチン作成に着手していると発表したNovavaxの株価が2倍程度まで上がっている。

しかし2003年のSARSに対しても人間に有効かつ安全なワクチンが未だ存在していないことから、今回のコロナウィルスに対するワクチン作成も技術上、規制上の困難に直面すると思われる。個人的な感想では実用化は難しいだろう。ニュースによって高騰と下落を繰り返すのはバイオ関連株の宿命である。

新型ウィルス相場は始まったばかりか

投資家として気になるのは、こうしたトレンドがまだ始まったばかりなのかどうかということだろう。下落している株は更に下落するのだろうか? 例えば2003年のSARSの時には中国南方航空の株価は1.7から1.0まで40%も下落している。

現在の下落幅は18%程度のため、今回の新型ウィルスがSARSと同じ規模で感染拡大するのであれば下落はまだ序盤か中盤ということになるだろう。

しかしSARSやMERSや今回の武漢のウィルスのようなコロナウィルスの感染はいずれ収まる。実際に中国南方航空の株価も2003年5月にSARSがピークを迎えると同時に底打ちしている。

今回のウィルスも4月前後がピークとなる可能性が高い。2020年の相場観が「短期の下落はあっても暴落にはならない」というものであることも考えると、投資戦略としてはこの底値を狙って売り叩かれた銘柄を拾ってゆくことになるだろう。

しかしピークまではまだまだ時間がありそうである。悪影響を受ける関連銘柄はまだ下落トレンドを継続する可能性が高いだろう。紹介した下落中の中国株は香港に上場しており、空売りも可能である。買いと売りの両方から機会を狙っていきたいところである。