アメリカと中国は長らく貿易について争っていたが、先日ようやく「第一段階」の合意に達した。何度も繰り返しているように貿易戦争自体は世界経済に大した影響を及ぼしてはいないが、金融市場が貿易戦争に反応しているため、投資家としては合意の内容を見て行かなければならないだろう。
第一段階合意の内容
世界の株式市場はこの合意のニュースを受けて大いに上昇した。一番派手に上がったのは何故か日経平均である。日経平均のチャートは次のようになっている。
頭1つ飛び抜けた形となる。
しかし合意の内容を見てみればそれほどの内容でもないことが分かる。第一段階の合意の内、中国への関税に関する部分は次のようになっている。
- 中国からの輸出品1200億ドル分に掛けられていた15%の関税は7.5%となる。
- 中国からの輸出品2500億ドル分に掛けられていた25%の関税はそのままとなる。
つまり、それほど変わっていないのである。関税のほとんどは掛かったまま、第二段階の合意を待つことになる。
第一段階合意はそれほどの合意でもない
ということで、第一段階合意は株式の買い方にとっても売り方にとってもそれほど喜ぶべき内容ではない。特に株の空売りを狙ってきた筆者のような投資家にとっては、まだクリアするべき問題が残っていると言える。
何故ならば、まだ残っている大規模な関税が第二段階合意で撤廃されれば、市場は更に上昇する余地を残していることになる。株価の天井とは今後上昇するシナリオがすべて尽きた状況のことであるから、まだここが天井であると確定することは出来ない。まだ上昇のシナリオが尽きていないからである。
しかし米中貿易戦争自体がそれほどの話でもない
しかし同時に思い出してもらいたいのだが、アメリカのGDPは20兆ドル程度である。これまで掛かっていた25%と15%の関税を合わせても800億ドル程度であり、アメリカのGDPの0.4%に過ぎない。
わたしはここで何度も繰り返しているのだが、何故この程度の話がニュースと市場を賑わせているのか自体がまったく意味不明である。しかし金融市場とは意味不明な理由で動くものであるから、そういう理由で動いている間はそれに付き合うほかない。しかしそうした口実が尽きた後、市場は本当の理由で動くのである。
結論
ということで、第一段階合意は大した話ではないが、米中貿易戦争自体がそもそも大した話ではないということである。
それで問題は株価がどうなるかである。2018年の世界同時株安の時にはそこが天井であることが明らかであった。それで以下のように強気で全力で空売りが出来たわけである。
しかし今は当時のような100%の売りシグナルとみなすべき状況ではない。まだ上昇シナリオが残っているからである。
一方で、関税の額を掛け算と足し算で計算できる人々にとっては、これまでの上昇は何の話でもないような話で上昇してきた相場ということになる。短期的な下落があっても可笑しくないだろう。しかし下落した場合にもトランプ大統領は関税を更に撤廃することで市場を喜ばせることが出来る。また、中央銀行は1.5%の利下げ余地を残している。この状況で株価指数を空売りするのはスマートではない。
そこで、筆者としてはファンダメンタルズの観点から既に天井圏に達している個別銘柄の空売りを強化して継続することとする。
Teslaの株価は空売り可能圏内と書いた350ドルから400ドルの圏内に再び突入している。高くなったところをこれ幸いと売ってゆくのである。
世界市場を見渡せば、世界経済にとってポジティブな材料とネガティブな材料が交錯している。それについてもまた書いて行きたいと思っている。