イギリスでは12月12日に総選挙が行われ、EU離脱の完了を公約にしたジョンソン首相の保守党が圧勝した。選挙結果については既に報じている通りだが、前回の記事では負けた側についてほとんど書かなかったので、今回は保守党勝利の裏側について少しだけ報じておきたい。
選挙前の記事で説明した通り、イギリスの総選挙では4つの主要政党が存在した。
この記事から各党の概要の部分を再掲載したい。
- 保守党: ジョンソン首相の与党、離脱派
- Brexit党: ファラージ氏の離脱のためだけの政党
- 労働党: コービン氏の最大野党、国民投票の再実施派
- 自由民主党: スウィンソン氏、離脱阻止派
先ず、ジョンソン首相の保守党は365議席を獲得し、過半数の325議席を大きく上回った。これを受けてジョンソン首相は「EU離脱を完了させる力強い信任を得た」とコメントした。
離脱のためだけに作られたファラージ氏のBrexit党は保守党に席を譲った形となる。選挙前に保守党と議席を争わない姿勢を示したことから議席獲得はゼロとなっている。
大敗の労働党
さて、次は最大与党の労働党だが、262議席から大きく議席を減らして203議席となった。労働党は国民投票の再実施を公約にしていた。党首のコービン氏は意気消沈した様子で「非常に残念な夜だ」とコメント。今後の選挙で労働党を率いるつもりはないと表明した。
インターネット無料化など社会主義的な政策を掲げたコービン氏は労働党支持者からも極端な政治家だと見られており、彼が労働党党首に選ばれた過程にはいわくがあったことは以前報じた通りである。
今回の選挙を受けて労働党内部からは「コービンが早く辞任していれば」との恨み言も聞かれたという。後の祭りである。
自由民主党の顛末
さて、最後にもっとも極端に親EUの姿勢を示していた自由民主党である。スウィンソン氏率いる自由民主党は労働党の国民投票再実施よりも更に進んだ姿勢を示し、2016年の国民投票でEU離脱が決定されたにもかかわらずEU残留を公約としていた。選挙前に公式ページを確かめたが国民投票については何も書いていなかった。国民投票などなかったということである。
労働党もそうだが、それでは何のための国民投票だったのだろうか。大手メディアではそれを取り上げてイギリス国民は迷っているという印象を与えようとしてきたが、ここではイギリス国民の意志は一貫して変わっていないと主張してきた。それが今回の総選挙で証明されたわけだが、一方で労働党や自由民主党については以下のように書いておいた。
残留強硬派と言えるのが自由民主党である。EU離脱に関して自由民主党のウェブサイトには「EU離脱を止める」とだけ書かれている。国民投票に関する言及はない。2016年の国民投票など無かったという姿勢なのだろう。
労働党のウェブサイトに書かれているのは「2度目の国民投票で最後の意見表明を」である。要するに「もう1回だけ、これで最後だから」ということである。しかし2回目が正当化されるのなら3回目も正当化されるだろう。国民投票とはそういうものではないはずである。
自由民主党もそうだが、そうした姿勢がイギリス国民に支持されるのか、12月12日に結論が出るだろう。
そして結論が出たわけである。
ちなみに国民投票の結果を完全に無視した自由民主党については1議席減らして11議席となり、しかも党首のスウィンソン氏が敗れて落選するというおまけつきである。もうこれ以上は何も言う必要はないだろう。
結論
イギリス人が2016年に示した意志は生半可なものではなかった。それは当時の記事に書いている。
今回の選挙ではそれが再確認されたということだろう。
今回の記事では総選挙の結末について書いたが、総選挙までの経緯のまとめについては前回の記事を参照してほしい。
これからも世界情勢について逐次報じてゆく。