米国時間12月10日から11日までアメリカの中央銀行Fed(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合を行い、政策金利を1.50%から1.75%の範囲に維持することを決定した。政策金利の維持は事前の市場予想と一致している。つまり市場の想定通りである。
パウエル議長の職務放棄
いつも通り発表された資料を見てゆくが、まず発表された声明文ではほとんど意味のあることを言っていない。「われわれは現在の政策スタンスが経済活動の持続的拡大や強い労働市場、そして2%のインフレ目標を支えるために適切だと考えている」とのことである。
会合に参加している委員による将来の政策金利の予想値を示したドットプロットでは13人が2020年内の政策金利の現状維持、4人が1回の利上げを予想している。
これまでのFedの動きをフォローしている投資家にとっては、こうしたメッセージが何の意味も持たないことは明らかだろう。Fedは今年3回の利下げを行ったが、彼らが言っているような労働市場やインフレ率がその根拠になったのではなく、単に金利先物市場における今後の金利の予想がそうなっていたからFedはそれに従ったのである。
パウエル議長は明らかに市場の予想に反して市場の逆鱗に触れることを恐れている。彼は表立っては認めていないが、2018年の世界同時株安の原因となったのがFedの金融引き締めだからである。
パウエル議長が市場に逆らって金融引き締めを続けていた頃の最後のFOMC会合は昨年12月のものだが、その強気な姿勢が既に下落を始めていた株式市場に最後の一撃を与えることになった。
そしてパウエル議長はそれがトラウマになっているのである。
市場の予想
ということで、Fedの発表にまともに耳を傾けることにほとんど意味はない。逆に実質的に政策金利を決めている金融市場の今後の予想がどうなっているかと言えば、2020年中に政策金利に変更なしがメインシナリオ、1回の利下げが次点のシナリオということになっている。つまり、今回Fedが何もしなかったのも市場がそれで良いというお墨付きを与えていたからなのである。
株式市場にとってより重要な長期金利は、今年の利下げに従って下落した後横ばいとなっている。現在の長期金利は1.79%である。
金融引き締めからのFedの方向転換以外に現在の株高を支えているものは存在しないので、この長期金利の行方が株価の動向を決めると言える。少なくとも長期金利が上がり続けるシナリオは存在しない。
しかしともかくは目先の政治イベントである。FOMCをクリアした後、イギリス時間12月12日にイギリスの総選挙がある。こちらについても報じてゆくつもりである。