米中合意で株価高騰なら空売りすべきか?

米中貿易戦争とイギリスEU離脱という2つの政治的要因が少なくとも何らかの結末を迎えようとしている。

イギリスでは12月12日に議会の総選挙が行われ、ジョンソン首相のEU離脱が支持されているのかどうかが明らかになるだろう。

しかしそちらについては既に書いたので、そちらの記事を参考にしてほしい。

さて同じような時期に米中貿易戦争も何らかの結論を出そうとしている。トランプ大統領は「米中合意は大統領選挙の後でも良いかも」などと嘯いているが、本音のところはこの時期に合意を纏めてしまいたいところだろう。今合意を纏めれば、大統領選挙のある2020年11月には経済にプラスの影響が出ているはずである。トランプ氏は丁度その頃に経済に良い影響が出るように経済を操作しているというのは債券投資家のガンドラック氏の読みであった。

では、米中合意が成立した時に相場はどうなるだろうか? 米中貿易戦争が世界経済にとって大きな負担になっているという建前でこれまで動いてきた株式市場は、短期的には上昇するかもしれない。しかし何度も言うように、金融市場にとっての問題はその後の好材料が当分何もないということである。

そもそも、米中貿易戦争やイギリスEU離脱は世界経済に大した影響を及ぼしていない。しかしそれについては以前の記事で説明したのでここでは繰り返さないこととする。

ここで議論したいのは、本当は重要ではない米中合意で株価が上がった場合にどうするべきかということである。

投資家の選択肢

先ず考えられるのは株式市場を空売りすることである。米国の主要株価指数S&P 500のチャートは次のようになっている。

しかし2018年の世界同時株安とは違い、今回の場合は天井がいつかをある程度の精度で予想することは容易ではない。

それは、米中合意が一気に解決されるものではなく、第一段階の合意など段階的に解決されるものだからである。どの段階まで合意が進めば天井になるかを推測するのは根拠の不足した推測になってしまうだろう。

ボラティリティ指数

そこで、もう1つ考えられる方法はボラティリティ指数(株価の上下動の激しさを指数にしたもの)への投資である。

株価のチャートと見比べてもらえば分かるが、急落に呼応してボラティリティが上昇している。したがって株価の急落に賭けるには、ボラティリティ指数の買いを行う選択肢も存在する。

しかし問題はこのボラティリティがここ数日で既に上がり始めていることである。それは市場が少しぐらついてきたことを意味している。株価は上がっているが、不安定になってきたということである。

しかしそれでもEU離脱問題の解決や米中通商合意は市場に安心感をもたらし、ボラティリティを下落させるだろう。その時に何処まで下がってくれるかが問題となるが、下げ幅によってはボラティリティ指数の買いは良い投資になるだろう。水準を過去の水準と比べることによって安心感が行き過ぎているかどうかを確認出来るので、「株価指数が上がりすぎているかどうか」よりも分かりやすいのである。

個別株の空売り

そしてその他の手段としては既に説明している個別株の空売りが挙げられる。指数が何処で天井を付けようとも、個別株はそれぞれのタイミングで天井を付けるだろう。よってファンダメンタルズ的に天井付近に既に達している銘柄は市場全体の天井のタイミングにかかわらず空売りを始めることが出来る。この点については既に説明している。

結論

ということで、現状としては株式市場全体やボラティリティ指数などを眺めながら政治的状況が進行するのを待っている状態である。

株価指数の空売りやボラティリティ指数の買いに適したタイミングがやって来るかどうかはまだ分からない。来なければ来ないで、今既に行っているポジションを構築出来たことに満足すべきである。状況がどちらに動いても構わないという状況を作ることが投資家の仕事だからである。

しかしアメリカでも株高にもかかわらず長期金利はそこまで上がっておらず、ドル円は株高に連動していない。その不気味さもまた何かを示唆しているのである。ちなみにドル円の空売りは当然続行している。息の長い投資になってしまったが、ドル円は徐々に下がり続けている。