蓋を開けてみれば2019年で一番安定した投資先はロシア国債だったのかもしれない。
投資家には周知の通り、世界的な低金利政策により投資先が不足している。日本国債の金利はマイナスになり、ドイツを筆頭とするユーロ圏も同様、比較的金利の高いアメリカでも長期金利が1.8%程度となっており、特にここ数年投資家はよりリスクの高い資産に資金を置いてきた。
個人投資家のみならず、資産運用に携わる金融関係者は誰でも金利の高い安全な投資先を血眼になって探しており、そうしたマネージャーらの間で話題に上がってきたのがロシア国債である。
高金利のロシア国債
先進国の金利が軒並みゼロに近づく中で、ロシア国債は高金利を維持している。政策金利が6.5%、長期金利(10年物国債)もほぼ同じ6.4%である。ドルやユーロ、円の金利が低空飛行をする中でファンドマネージャーらが注目するのも当然だろう。
しかしロシアは新興国である。新興国の通貨に投資をする場合には為替リスクを気にしなければならないが、ロシアの通貨ルーブルはここ数年安定した動きを見せている。以下はドルルーブルのチャートで、下方向がドル安ルーブル高となる。
2018年の世界同時株安で新興国が売られたにもかかわらずよく耐えたと言うべきだろう。高金利通貨としては素晴らしいパフォーマンスである。しかもこの間に国債の金利は下がり続けているため、国債を保有していた場合は値上がり(債券の金利低下は価格上昇を意味する)も享受できたことになる。
ルーブルが安定していることには理由がある。2015円に原油価格が暴落した時に産油国であるロシアの財政が懸念され、ルーブルが暴落したことである。ドルルーブルのチャートを長期で見るとこうなる。
つまり、ルーブルの価値は既に半分になっているのでこれ以上下がりにくいということである。結果としてロシアの物価はエジプトやウクライナと並んで世界最低水準となっている。
しかもロシアの財政は改善している。アメリカによる経済制裁が始まってから数年が経過し、ロシア経済は経済制裁のある状態に適応し始めている。
この点については投資家にとって朗報が2つある。1つは経済制裁が既に最大限にかけられておりこれ以上の追加制裁は難しいこと、もう1つは制裁によってアメリカを含む先進国経済から隔離されたため、先進国の量的緩和バブルが崩壊した場合にもある程度の耐性が予想されることである。
それでも金融市場の先行きを危ぶむ場合にはルーブルの下落リスクは考えておくべきである。ロシア国債についてはここでは何度か取り上げてきたが、2018年の世界同時株安を危惧したことから結局は本腰を入れた投資を見送った経緯がある。
ただ、今年や来年の金融市場を読むグローバルマクロ戦略にとって投資先とはならなくとも、長期投資で考えればロシア国債は魅力ある投資先である。10年物国債を買った場合、6.4%を10年獲得し続けるメリットは、ルーブルの下落可能性を考慮しても十分投資として成り立つだろうからである。
それでも日本の投資家にとってはもう1つ考えなければならないことがある。ここまでドルベースで考えているので、日本の投資家はここから更に円の上昇可能性を考えなければならない。円高になれば外貨建て資産は日本の投資家にとっては下落する。低金利の世界で投資を考えることがどれだけ難しいかである。