米国株は最高値更新もガンドラック氏の先行指標は下落継続

米中通商合意とイギリス総選挙を控え株式市場は楽観的なムードだが、金融市場に漂う不穏な気配は消えていない。これまで伝えている通り、上昇しているのは先進国の主要指数だけだからである。

これまでの記事では米国市場などで主要指数に採用されている銘柄以外の株式は2018年の世界同時株安から回復していないことなどを取り上げてきた。

そして今回取り上げるのは、2018年の世界同時株安を予想的中させた債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏が株価の先行指標と呼んだビットコインである。

ガンドラック氏によれば、ビットコイン価格は市場に資金が溢れているかどうかを調べる試金石になるという。資金が溢れていればビットコインは暴騰し、資金が枯渇していればビットコインは下落するということである。金融市場においてビットコインは炭鉱のカナリアのように作用するとガンドラック氏は言いたいのだろう。有毒ガスの充満する炭鉱にカナリアを連れて行けば、人間よりも先にカナリアが弱るということである。つまり、主要市場が弱る前にビットコイン相場が弱るのである。

さてそのビットコイン価格だが、確かに2018年末の世界同時株安では株式市場よりも先に底まで下落し、いち早く急回復したものの6月に天井を付けた後下落トレンドとなっている。

このトレンドは株式市場が10月から新たな高値を付け始めてからも変わっていない。以下は米国株のチャートである。

個人的にはビットコインを先行指標とまでは呼ばないが、資金が市場の隅々まで行き渡っていない1つの証拠にはなるだろう。

もう1つ付け加えるとすれば中国株だろうか。上海総合指数もやはり振るっていないのである。

つまり、新興国市場にも資金は行っていないということである。先進国の主要指数に採用されている銘柄だけが上がっていて、その他は振るっていない。この状況は2018年の世界同時株安の直前の状況に似ている。

結論

というわけで、金融関係者一般の見方とはかなり異なった相場観となっているが、はっきり言えば筆者1人が悲観的な状況自体も去年の株安直前の状況と同じなのである。

ただ、今回は前回よりも的確にタイミングを予測するのが難しいかもしれない。イギリスの総選挙は12月12日に結論が出るが、米中貿易戦争は第一段階の合意など、段階的に解決されると見られているからである。

こういう場合、投資家としては主要株価指数を直接空売りするのではなく、ファンダメンタルズ的に明らかにバブルになっている個別銘柄を高値圏で空売りしておくのが1つの手段である。

電気自動車メーカーのTeslaについては株価が350ドルから400ドルのレンジで空売りが可能と書いておいたが、その後このレンジに突入し360ドルまで上昇した後、330ドル近辺まで下落している。短期的な値動きには拘らないが、悪くないスタートである。

楽観的な一般の相場観と悲観的な筆者の相場観、どちらを正しいと思うかは読者次第である。今後も金融市場の動向を事前に伝えてゆく。