Form 13F: 著名ヘッジファンドが相次いで株式を売却、危機への備えか

今回の記事では機関投資家のポートフォリオの米国株買いポジションを開示するForm 13Fについて伝えてゆく。少し前まではどのファンドマネージャーがどの銘柄を買っているなど話題に事欠かないForm 13Fだったが、ここ最近は伝えるべきことが少なくなっている。何故ならば、ファンドマネージャーらが株を買っていないからである。

そして今回開示された2019年9月末時点でのポジションでは株式への消極的な姿勢に拍車がかかっている。

次々にポジションを減らすヘッジファンド

先ずはジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementだが、元々少なかったポジションの合計は前回6月末の42億ドルから36億ドルに更に減額されている。買いポジションが多かった2015年などには100億ドルを超えていたことから、現在の買いポジションがどれほど少ないかが見て取れるだろう。

また、ソロス氏のクォンタム・ファンドがポンド危機におけるポンド空売りで大儲けした時のポートフォリオ・マネージャーだったスタンレー・ドラッケンミラー氏のDuquesne Family Officeも34億ドルから26億ドルへ大幅減額している。

ドラッケンミラー氏は2019年の初めからハイテク株の大幅買い増しを行い、2018年の世界同時株安からのリバウンドを見事に取っていた。今回の9月末の開示ではそれをある程度利益確定した形となる。

ポートフォリオの内容としてはMicrosoft (NASDAQ:MSFT)の5.6億ドルが最大ポジションになっているが、これは前回の7億ドルから減額されている。Microsoftのチャートは以下の通りである。

最大ポジションがこの推移というのは大成功と言うべきだろう。一方で2番目に大きいポジションであるAmazon (NASDAQ:AMZN)は2.4億ドルから2.6億ドルに増額されている。

ただ、全体ではやはり大幅な減額となっているということである。ドラッケンミラー氏は2020年の相場に関してはネガティブな相場観を表明していたから、それに備え始めたということかもしれない。

また、レイ・ダリオ氏の運用する世界最大のヘッジファンドBridgewaterは128億ドルから114億ドルへやや減少となっている。しかしダリオ氏は買い持ちと同時に空売りも行っており、Form 13Fでは空売りは開示されないため、実際のところどれほどリスクオフになっているのかは不明である。ただ、現在の相場についてあまり好ましく思っていないことは確かだろう。

結論

Form 13Fからはダリオ氏の動向は見えにくいが、ソロス氏の明らかに少ない買いポジションやドラッケンミラー氏の分かりやすい利益確定は相場がどのような位置にあるかを示唆していると言えるだろう。米国株のチャートは次のようになっている。

今後、株式市場はどうなるだろうか? 個人的には米中貿易戦争の解決が1つの区切りになるのではないかと考えている。引き続き世界市場の動向を伝えてゆく。