アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は米国時間10月29-30日に金融政策決定会合であるFOMC会合を行い、0.25%の利下げを決定した。
いつものように声明文を見てゆくが、語るべきことがほぼ何もない。何故ならば、パウエル議長は実質的に何もしていないからである。
職務放棄したパウエル議長
それでも声明文を見てゆこう。ただ、声明文は前回のものからほとんど変わっていない。FOMCの声明文は基本的に前回のものを少しずつ変えてゆくことによって金融政策の見通しを示すものだが、ここ数回のFOMC会合では声明文がほとんど前回のものをそのまま踏襲したものになっている。
声明文はメンバーの内誰が利下げに賛成したかを書いたものを除いて3つの段落で構成されているが、「労働市場は依然強く、経済活動は穏やかに伸びている」と書かれた第1段落と、「完全雇用と2%のインフレ目標の観点から、われわれは今後金利を調整するにあたり経済の現状と見通しの両方を精査してゆく」と書かれた第3段落は日付の部分を除いて前回と全く同じ文面が踏襲されている。毎回2日にわたって会議をしておきながら何も仕事をしていないのである。
唯一変化のある第2段落では、「将来の金利を決めるにあたり…適切に行動する」の部分だけが消去されている。「適切に行動する」を削除したことで利下げは一旦停止だということを示したのである。パウエル議長は仕事をしたのだろうか? 実はしていないのである。
市場の言いなりになった中央銀行
何故か? 何故ならば、今回の会合で利下げが行われることも、今回の利下げが終われば次の利下げは来年に1回だけであることも市場の織り込み通りだからである。今年これまで行われた利下げについても、市場が催促していたからそうしただけのことである。
パウエル議長は市場の言うことに従っただけであり、自分で何かを決めたわけではない。しかし本人は記者会見で、今後の金利を決める大きな要因は貿易政策の先行きだと主張している。まともな投資家は誰も信じていない。パウエル議長は去年利上げと量的引き締めを強行したことで世界同時株安を引き起こしたことがトラウマになっているのである。
彼は市場の言うことをそのまま実行する他にもう何も出来ないだろう。
中央銀行が手綱を外せば、市場は自分の好きなところに行くだろう。しかしその前にクリアすべき問題が2つある。イギリスのEU離脱と米中貿易戦争である。本来市場にほとんど影響を持たないはずのこれらの要素が解決してしまえば、市場の本来の動きが戻ってくるだろう。それももうすぐのようである。そちらについても今後とも伝えてゆく。