2019年後半以降の株式市場・ドル円の推移動向予想

株式市場とドル円については随時記事にしているが、ここで一度今後の動向について纏めておきたいと思う。

世界同時株安から金融引き締め停止まで

普段からの読者には繰り返しになるが、株式市場は2018年後半の世界同時株安で一度は30%近くも下落したが、その後アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)が利上げと量的引き締めを撤回したことで一時持ち直した。去年の動向については以下の記事で纏めている。

去年の世界同時株安の原因はアメリカの金融政策であり、今後の動向を握るのも世界の中央銀行の緩和状況である。このことは去年も今年も変わっていない。

ただ、去年と今年では金融政策の状況が変わっている。アメリカは金融引き締めを停止したことに加え、去年の株安の頃からヨーロッパの実体経済が悪化し始めたことからECB(欧州中央銀行)は量的緩和を再開した。

そしてアメリカは利下げを行なっている。厳密にはパウエル議長は現在の利下げを「利上げサイクル内の調整」に過ぎないと主張して、株価のために180度方向転換したことを誤魔化そうとしているが、誰も信じていないだろう。

緩和イコール株高か

さて、日本とヨーロッパは量的緩和を実行中、アメリカも利下げを行なっている。アメリカの金融引き締めが問題となっていた去年の相場とは全く違う状況である。

世界中の中央銀行が緩和しているのだから株高と見るべきだろうか? 数年前の相場ならそうだったかもしれない。しかし注意したいのは、アメリカがゼロ金利に戻って量的緩和を再開すれば、世界経済に金融緩和の余地はほとんどゼロになってしまうということである。

この事実を認識してか、金融緩和の効きが明らかに悪くなっている。例えば、ヨーロッパでは9月に量的緩和が行われたにもかかわらず、ドイツ株はそれほど上がっていない。

因みに以下が2015年1月にECBが量的緩和を開始した時のドイツ株のチャートである。

反論としては、もう数ヶ月待たなければECBの緩和に効果がなかったかどうかは分からないとは言えるだろう。しかしこのままドイツ株に大した効果が現れなければ、それはアメリカが量的緩和を再開した時に株価がどうなるかを予言することになる。

ECBの量的緩和で株価が横ばいなら、アメリカの量的緩和でも株価は横ばいになるだろうか? 筆者はそれよりも悲観的である。何故ならば、アメリカの量的緩和開始の後には何も残されていないからである。

投資家は今後の値上がりを期待して株式を購入する。しかしアメリカの量的緩和の後には、株価を持ち上げるようなどのようなニュースも残されていない。アメリカが量的緩和を再開してしまえば、世界の中央銀行に出来ることはもうほとんど残っていないのである。そうした場合の市場の典型的な反応は「噂で買って事実で売る」ということになるだろう。つまり、アメリカの量的緩和の発表が市場の頂点だということである。

為替相場の動向は

為替相場はどうなるだろうか? 皮肉なことに、一番値上がりが見込まれるのは最大限に金融緩和している日本円である。上でも述べた通り、投資家は今後の見通しをもとに投資を行う。だから「金融緩和が一番行われているから円売り」ではなく、「今後の金融緩和の余地が一番少ないから円買い」になるのである。つまり、日銀が支えていた円安はついに剥がれてドル円は下落するということである。

また、逆に言えば一番緩和余地の大きい通貨が一番下落することになる。それはドルである。ドルはユーロに対してもここまでドル高で来ているが、ユーロの緩和余地も限られ始めている。ECBの量的緩和は緩和拡大の余地が残されてはいるが、それを使い果たしてしまえば日銀と同じ状態に陥ってしまう。そして緩和余地が残されているのはドルだけなのである。ドル安は避けられないだろう。

株価については「アメリカの量的緩和が頂点」になる可能性が高いとは言ったが、それは米国株の話であって、日本株や欧州株が2018年の高値を取り戻せるかどうかは不明瞭である。ドル円が下落すれば日経平均にはマイナスになる。少なくとも米国株と同じパフォーマンスにはならないだろう。

あるいはアメリカの量的緩和に辿り着くまでにもう一度株式市場は下落を経験するかもしれない。それは今回の記事で語ったよりもより短期的な見方である。以下の記事を参考にしてもらいたい。

それについては遠からず答えが出るだろう。今後も相場の動向を逐次伝えてゆく。