日経平均が急騰した。短期的な要因としては、アメリカと中国が10月始めにワシントンで通商協議をすることで合意したことで貿易戦争への懸念が後退したこと、イギリスでジョンソン首相のEU離脱強行を議会が阻止する見込みであることなどが挙げられるが、どれも今後の相場についての本質的な原因ではないだろう。
上昇した日経平均とドル円
とりあえずは日経平均のチャートを見てみよう。
昨日のザラ場では2%ほど上がり、今日も続けて上昇となっている。
同じくリスクオフ懸念が後退したことからドル円も短期的に上昇している。
さて、問題は市場が短期的に反応しているこうしたニュースが株価を左右する本当の原因かどうかである。米中貿易戦争やイギリスの政治情勢が世界の株価にとって重要ならば、これらの懸念が後退した場合、このまま株価もドル円も上がってゆくシナリオとなるはずである。
一方で、アメリカの金融政策が原因だとするのなら、株価とドル円が両方とも上昇してゆくシナリオはない。アメリカの利下げが充分に効いて株価が上がるのであれば、金融緩和によりドル円は下がらなければならないからである。
読者には周知の通り、筆者は後者の見方を採用している。だから株価とドル円が両方上がっている限り、その動きは本物ではないと言うべきだろう。
注目される9月FOMC
ただ、ここから1週間ほどの株価の動きはある意味では重要であると言える。何故ならば、9月17-18日にアメリカの金融政策を決定するFOMC会合があるからである。
ここではずっと説明している通り、パウエル議長は難しい立場に立たされている。金融市場は2020年末までに4回の利下げを織り込んでおり、パウエル議長が市場の期待に応えるのか、それとも期待を裏切るのかが注目されている。
そしてそれはアメリカの株価次第である。アメリカの株価が充分に高い場合、パウエル議長は今後の継続的な利下げを渋るかもしれない。そうなれば市場はどうなるかは、債券投資家ガンドラック氏が説明している。
もっとも、彼の場合は利下げを行なっても行わなくても株価は暴落すると言っている。
つまり、日経平均がどうなるかは実際にはアメリカの株価に依存していると言える。しかも、アメリカの株価が上がりすぎると日本株にとってはマイナスだということである。アメリカの株価指数S&P 500のチャートは次のようになっている。
チャート的には充分に高い位置にいる。パウエル議長が緩和をある程度渋るには充分な位置である。
一方で、ドル円は引き続き、中期的には緩和でリスクオンでも引き締めでリスクオフでも下落方向の圧力がかかる構図にある。
また、長期的には世界経済が緩和方向に進むのかどうかにかかっている。世界の中央銀行が緩和に進む場合、アメリカは量的緩和を再開することができ、日銀に緩和余地は残されていないからである。アメリカが緩和し日本が緩和できなければ、結果はドル円下落となる。そしてこの長期的な流れについては世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏の意見が役に立つだろう。
さしあたってはFOMC待ちということになる。18日を楽しみにしたい。