株安でも利下げに反対するFOMC委員たち

アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)が7月にリーマンショック以来初めての利下げに踏み切って尚、株式市場は荒れている。市場は更なる金融緩和を要求しており、パウエル議長を含む何人かの委員は要求にある程度応える方針を明らかにしているが、パウエル議長はこの難しい状況下で更なる困難を見つけるかもしれない。それは、金融政策を決定するFOMCの委員の内、利下げに反対している委員たちである。

ブラード氏、利下げを不支持か

市場で株価の急落と同時に話題になっているのが、長期金利が短期金利より低くなっていることである。長短金利の逆転は景気後退に先行することが多く、景気後退の予兆であるとされている。

しかしセントルイス連銀総裁のブラード氏は、FOXニュースのインタビューでこうした見方に懐疑的な姿勢を示した。ブラード氏は、「長短金利の逆転がアメリカ経済にとって弱気のシグナルとなるためには、逆転が少なくとも一定の間継続しなければならない」とした上で、「9月の会合で利下げを支持する準備は出来ていない」とした。

ブラード氏はまた、直近の株安には特に影響を受けていないとした上で、市場の下落は「少しやり過ぎ」であるとした。

問題は、金融市場が既に9月の利下げを織り込んでしまっているということである。金利先物市場の織り込む9月のFOMCの利下げ確率は以下のようになっている。

  • 0.25%の利下げ: 68.5%
  • 0.50%の利下げ: 31.5%

利下げを行わない確率はそもそも織り込まれておらず、0%である。利下げが1段階か、2段階かということだけが問題となっている。このような状況で利下げを行わなければ、金融市場は更に荒れることになるだろう。

利下げに反対するFOMC委員たち

しかし、利下げに反対しているのはブラード氏だけではない。7月に行われた利下げは満場一致ではなく、カンザスシティ連銀総裁ジョージ氏とボストン連銀総裁ローゼングレン氏は利下げに反対していた。

パウエル氏は内心、9月の会合では0.25%の利下げが妥当だと考えているだろう。しかし前回の会合で利下げに反対した2人に加えてブラード氏が考えを変えなければ、10人のFOMC委員の内3人が利下げに反対することになる。過半数まであと2人である。

9月の会合は乗り切れたとしても、金融市場は2020年末までにあと5回の利下げを要求しており、このまま利下げを続ければいずれ利下げに反対する委員が過半数に達してしまう可能性もある。

大手メディアは呑気に米中貿易戦争の話をしているが、この現実の方がよほど危機的なのである。Fedが市場の期待に応えられなければ株価がどうなるかについては、ガントラック氏の分析が完全に正しいだろう。

もっとも、ガントラック氏は利下げを行なっても株価は暴落するとしている。筆者は利下げが順当に行われた場合の株価に対する判断は保留にしているが、利下げが行われなければ当然ながら株式市場は荒れるだろうと考えている。現在の株価水準は、利下げを織り込んだことで下がった長期金利の水準に支えられているからである。

ただ、筆者は株式市場には触れずにドル円の空売りを行なっているため、株価の上下動についてはどちらでも良いのである。ドル円の動向については以下の記事を参考にしてもらいたい。