少し前までは利上げについて話していたはずなのだが、いつの間にか利下げについて話していることになっている。もう長らくそうなのだが、中央銀行がまともに機能していないのである。
アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は米国時間で6月18日から19日に金融政策決定会合であるFOMC会合を行い、19日に結果を発表する。2018年終盤に起こった世界同時株安のため、Fedは利上げを停止、利下げについて話し始めている現状がある。
では、今月のFOMC会合では利下げはあるだろうか? 金利先物市場は利下げがある確率を以下のように織り込んでいる。
- 利下げなし: 76.7%
- 利下げあり: 23.3%
基本的には利下げなしがメインシナリオだが、利下げがある確率もそれほど少なくはない。Fed自身はと言えば、複数の連銀総裁が今後の利下げを許容する発言をしている一方で、今月の利下げを具体的に明言した関係者はいない。
では来月はどうだろうか? 来月の会合後に金利がどうなっているかについての金利先物市場の織り込みを見ると、次のようになっている。
- 今月も来月も利下げなし: 14.9%
- どちらかは利下げあり: 66.3%
- 両方で利下げあり: 18.8%
つまり、来月までには1回の利下げが行われることをメインシナリオとして織り込んでいるようである。
より長期で見ると2年物国債や3年物国債などは今後2回の利下げを織り込んでいる状態となっており、今回の会合でパウエル議長が少なくとも同程度緩和的な姿勢を見せなければ、市場にとってはネガティブなサプライズとなる。昨年まで利上げについて語られていたことを考えると劇的な変化ではないか。
筆者の予想ではパウエル議長はこの市場の予想にある程度は沿った形で声明文を出すのではないか。彼は昨年の株安で参ってしまったので、市場を驚かせることを恐れているはずである。
しかしそうすると、中央銀行の仕事とは一体何なのだろうか。Fedは昨年、利上げを続行すると言っていた。その当時から実体経済の好調はほとんど変わっていない。株の上下動が金利を決めるのである。市場が先に金利を動かし、中央銀行がそれに沿うように実際の政策金利を調整する。Fedの議長とは世界で一番楽な仕事なのだろう。羨ましい限りである。