米国時間で4月30日から5月1日まで、アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合を開き、政策金利を2.25%から2.5%のレンジに維持することを決定した。
決定自体は事前の市場の織り込み通りであり、サプライズはない。しかしその一方で、金融市場は2018年10月からの世界同時株安を受けてハト派に転換したパウエル議長の姿勢を過大評価し、年内の利下げを織り込んでいたが、パウエル議長は今回の会合後の記者会見でこれを否定した。議長は次のように述べている。
われわれは現在の政策スタンスが適切であると考えている。緩和側と引き締め側のどちらにも動く強い理由は見当たらない。
米国株市場はこの発言を受けて下落した。それでも世界同時株安から史上最高値付近まで戻している中での1日の下落だが、チャートは次のようになっている。
声明文の方には大して重要な情報はなく、実体経済について前回よりもやや強気の見方を示したくらいである。
議長と市場の誤った見方
予想されていた通りあまり重要な会合ではなかったことは確かだが、投資家にとって1つ重要なのは、議長と市場の相場観にはそれぞれ間違った部分があるということである。
先ず、市場は中央銀行に期待し過ぎている。パウエル議長は世界同時株安を受けて金融引き締めの停止を確約したが、今年中の利下げについては一言も話していない。しかし金利先物市場は、今回の会合でパウエル議長がそれを明確に否定した後の今も、38.4%の確率で年内に1回の利下げ、11.5%の確率で2回の利下げを織り込んでいる。
投資家が考えておかなければならないのは、現在の株式市場の反発がこの根拠のない楽観に支えられているということである。もしFedがパウエル議長の言葉通り利下げを行わなければ、市場の金利は上方向に修正され、金利上昇は世界同時株安から回復したばかりの株式市場に悪影響を与えるだろう。
そして中央銀行の側も自分が完全に主導権を失ってしまったという事実を過小評価している。Fedの何人かの連銀総裁は、金融引き締め撤回は物価が落ち着いているからであり、株価に反応したわけではないと主張しているが、それを信じる市場関係者は誰も居ないだろう。
結果として、Fedはいまだにインフレや実体経済の話をしてはいるが、誰も注意を払わなくなってしまった。利上げや利下げが株式市場の動向次第ということを誰もが理解しているからである。もはやFedは自分で金融政策を決めることは出来ない。市場に翻弄されるだけである。この事実は決して小さくはないのである。
結論
2019年の相場は、この2つの誤認がそのつけを徐々に払ってゆく流れになると予想している。市場もパウエル議長も、本当に利下げは行われるのかという審判にいずれは直面しなければならないのである。
それを受けて金融市場がどうなるかは、既に書いている通りである。世界同時株安から市場を救う対価は決して安くはない。筆者はただ、3月の記事に書いた文章を繰り返すだけである。
十分な緩和が行われて株が上がり、ドル円が下がるか、十分な緩和が行われず株が下がり、ドル円も下がるか、どちらかなのである。市場はまだそのどちらも織り込んでいない。
今後の市場の展開としては、どちらかが必ず起こるだろう。それが起きない間は、市場は単に夢の中にいるのである。そして夢からはいずれ覚めなければならないだろう。
(5/3誤植を訂正しました)