1月FOMC会合結果: 量的引き締めの早期終了から量的緩和の再開まで様々な選択肢を提示

1月29日から30日にかけて、アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合を行なった。

簡単に纏めれば、2018年10月から始まった世界同時株安のプレッシャーに屈し、必要であれば現在行われている量的引き締め(バランスシート縮小)の早期終了から量的緩和の再開まであらゆる選択肢を検討するとの内容である。しかし一方で、具体的な政策の実行は何一つ伴わない会合結果であったことも事実である。これをどう受け取るかである。

FOMC会合結果

いつも通り、会合結果を順番に見てゆこう。先ずは声明文であり、以下のコメントが追加されたことは、実質的に更なる利上げの一時停止を表明したと受け止めて良いだろう。

世界経済や市場の動向を見る限り、雇用の最大化や物価の安定という目標のためにどのような政策金利が相応しいかを決定するにあたっては忍耐強くあるべきだと考えている。

ここまでは、以前のパウエル議長発言以前から市場で予想されていたことである。2019年に追加の利上げがないことは、市場では年始からずっと織り込まれたままとなっている。従ってこれはニュースではない。

投資家が気にしなければならないのは、今回特別に発表された「政策の実行とバランスシート正常化について」という追加の声明文である。これは普段のFOMC会合では発表されないものである。

これは明らかに世界同時株安の原因がFedのバランスシート縮小、つまり量的緩和の巻き戻しであることを危惧したパウエル議長が用意したものであり、その中でFedは次のように言っている。

実体経済や金融市場の今後の動向によって、バランスシート正常化の完了計画について適宜変更する用意がある。更に、将来の経済状況によってより緩和的な金融政策が必要となった場合には、バランスシートのサイズ変更を含めたすべてのツールを利用する準備があるということになる。

これは実質的に、市場が最悪の状況まで荒れた場合には、利下げや量的緩和を含めたあらゆる手段を取るということを言っている。

どう解釈すべきか?

少し前までは利上げも量的引き締めも続行すると言っていたFedとしてはかなりの譲歩に見える内容である。しかし投資家が忘れてはならないのは、今回の会合で発表された内容には実行が一切伴っておらず、「必要になれば」引き締めの停止も追加の緩和も行うというごく当たり前の内容である。

では「必要になれば」とはどういう状況を指すのか? 記者会見のパウエル議長の言葉がはっきりと語っている。

最近の金融動向によって忍耐強い「様子見(原文:wait-and-see)」のアプローチが正当化されると判断した。

言葉通り、wait-and-seeである。つまり、今後実行を伴った判断を下すまでには、市場が更に下落するのをwait-and-seeしなければならないということである。議長は自分で言っていることに気付いているのだろうか? しかし恐らくは市場も気付いておらず、短期的には楽観的な方向に進む可能性も十分にある。

しかし、何度も繰り返すが、世界同時株安の原因となった量的引き締めは未だ行われている。そしてそれを停止するまでには株価の下落が必要だと議長本人が言っているのである。

結論

したがって、筆者としては日経平均の空売りとドル円の空売りを両方続行とする。しかし、会合結果を受け株価は上昇した一方で、ドル円は下落している。前回の記事を含めた最近の記事で、株の空売りよりもドル円の空売りに徐々に重点を置き始めると宣言したことが機能し始めている。

しかし日々の微妙なポジションの変化までここですべて報告できないのはご容赦願いたい。主要な方針を事前に書いておくほかないのである。しかし、ここから先はそうした微妙でリアルタイムなトレーディングが勝敗を分ける相場となってゆくだろう。

2018年の後半、世界同時株安が始まる前に金融市場とFedの両方が根拠のない楽観に支配されていた時には、空売りを開始した筆者にとっては道端にお金が落ちているような状況だった。

しかし今や、パウエル議長は株安と向き合っている。筆者は、それでも株の空売りを手仕舞うタイミングはまだだと踏んでいる。ここから先は、ヘッジファンドと中央銀行の本物の殴り合いなのである。