世界同時株安、年始からの反発は続くのか? 今後の見通しは?

2018年10月から始まった世界同時株安が続いているが、短期的には底値から一旦反発し、これからどうなるかというところである。相場の雰囲気は悲観から一転して楽観ムードになっていると言うべきだろう。

個人的には短期的な値動きには興味がないのだが、少なくともこの楽観ムードを支えている理屈の内、合理的でない部分を明確に指摘しておきながら、この反発を眺めたいと思う。

世界同時株安は反発したが

少し前からの流れを復習しておこう。先ず、ここでは去年の夏頃から株価の天井を探り始め、その後実際に空売りを行なった。その後1ヶ月ほどして株式市場は天井を付け、そこから大きな下落を始めることとなった。

この下落の原因がアメリカの金融引き締めであることは、下落が始まる前から指摘してある。

さて、下落が始まった当初、アメリカの中央銀行であるFedのパウエル議長は、株価が下落していてもアメリカ経済は好調であるとして、金融引き締めを続行する立場を示した。金融政策決定会合であるFOMCの会合では、Fedが行なっているバランスシート縮小は株価下落の原因ではないとさえ明言した。筆者は当時の記事で、このパウエル議長の発言は空売り投資家への満額回答であると指摘してある。

結果、当然のことではあるが、株価は更に下落した。これで米国株は天井から20%ほども下落したことになる。

パウエル議長はここに来てようやく慌てたようである。最初から状況を予測出来ていたここの読者にとっては何を今更慌てているのかという印象を受けるだろうが、それが中央銀行家の限界なのである。パウエル議長は市場に屈し、利上げ続行を見直す考えを表明した。

そして株価は反発した。米国株のチャートは次のようになっている。

一見、パウエル議長が市場を救ったかのように見える。しかし世界市場のチャートを幾つか眺めれば、市場に支配的なこの解釈に矛盾があることが分かる。

パウエル議長発言でむしろ上昇した金利

先ず、パウエル議長発言がハト派に受け取られ、今後の金融引き締めが弱まると市場が予想したとすれば、金利は下がるはずである。しかし実際にはパウエル議長発言後に金利は上がっている。そしてこの金利上昇は株価の回復と歩調を共にしている。以下はアメリカの長期金利のチャートである。

一時2.50%台まで下がった長期金利は2.75%前後まで回復している。パウエル議長発言は年始のものである。

また、今後の利上げ見通しの織り込みをより顕著に示す短期(2年物)国債の金利も、パウエル議長発言前には2.5%前後で推移していたものが、現在では2.6%で推移している。

これはどういうことだろうか? パウエル議長発言で金融引き締めの撤回が予想されたとすれば、金利が下がって株高となるはずである。しかし実際にはそうなっていない。市場の考えでは、元々金利高が問題だったはずなのに、株高にさえなれば金利が上がっても良いということになっている。市場は自分で自分の悲観を勝手に無かったことにしているのである。

しかし何度も言うが、今回の世界同時株安の原因はアメリカの金融引き締めであり、特に量的緩和の逆回転である量的引き締め(バランスシート縮小)である。そして、金利はまだ十分に高く、そして量的引き締めは続行となっている。筆者としては、これ以上に何も言うことがないのである。

一方で、株価が前回の底値をもう一度割った場合、パウエル議長は口先だけでなく実際に行動を余儀なくされる可能性が高い。その場合には、株の空売りよりもドル円の空売りが有効となる場面となるだろう。

筆者は日経平均とドル円を両方空売りしているが、徐々にドル円に集中し、最終的にはドル円の空売りだけを残すポジション取りになると現段階では予想している。このことについては以前から言明してあるが、そろそろ本腰を入れて考えるべき局面に来ているということである。