世界同時株安はいつまで続くのか? 過去の暴落と比較する

2018年10月から始まった世界同時株安が続いている。2008年のリーマンショックによる市場暴落以後、株式市場は大きく上昇しており、下落相場というものがどういうものか忘れている投資家も多いだろう。

市場急落とは言うものの、下落相場とは通常どれくらいの期間続くものだっただろうか? そして今回の下落相場はどうなるのだろうか? それぞれの暴落の原因も含めて一度検証してみよう。

2008年リーマンショック

先ずは2007年から2008年にかけて起こったサブプライムローン危機における市場の暴落を振り返りたい。

サブプライムローン危機とは、投資銀行などが開発した複雑な金融商品によって、アメリカの不動産バブルが世界の銀行システムにまで波及し、株式市場の暴落に繋がったものである。この意味では第一の原因は不動産バブルであり、株価バブル崩壊が止まるかどうかは、不動産バブルが止まるかどうかにかかっていたと言える。

当時の米国株のチャートは以下である。

2007年の半ばから2009年の初めにかけて60%ほど下落している。「暴落」とは言うが、高値から底値まで1年半かかっていることに注目したい。

2000年ドットコムバブル

その前の市場暴落は2000年から始まったドットコムバブル崩壊である。

GoogleやMicrosoftなどの企業に代表されるIT革命によってIT企業の株価が高騰した。IT系だというだけで、利益の上がっていない会社や中身の怪しい会社にも莫大な額が投資された結果、回収される見込みのない投資が山積みとなり、2000年の最高値を区切りに暴落した。

この時の下落相場はリーマンショックの時よりも長く、2年半の間に50%ほどの下落となっている。

1987年ブラックマンデー

もう一つ紹介したいのは、1987年のブラックマンデーである。

ブラックマンデーの原因については一般には不明とされているが、筆者は金利が原因であると考えている。

当時、ドル高を是正する目的で行われたプラザ合意によって逆にドル安が止まらなくなっていたが、利上げによってドル安を止めることは、それまで金利低下によって支えられていた株価上昇トレンドを放棄することを意味していた。アメリカは結局利上げを余儀なくされ、株式市場は崩壊したのである。

1987年の8月から10月にかけて、2ヶ月で35%程度の下落となっている。チャートが週足ではなく日足になっていることに注意したい。

ブラックマンデー当時の状況については、以下の記事で詳しく説明している。

しかしここで重要なのは、ブラックマンデーにおける暴落がFed(連邦準備制度)のアラン・グリーンスパン議長の市場救済宣言によって収束したことで、以後市場では「株価が暴落しても中央銀行が助けてくれる」という盲信が出来上がったということである。

事実、ドットコムバブルやリーマンショックでも、下落相場はブラックマンデーに比べて長期のものとなっている。ブラックマンデー以後、下落相場が数年単位となったのは、投資家が中央銀行の下支えを期待して、急な下落には押し目買いを入れるようになったことが一因であると個人的には考えている。

レイ・ダリオ氏は長期の下落相場を予想

さて、現在の相場に話を戻そう。2018年10月から始まった下落相場はどれくらい続くのだろうか?

前回の記事で紹介したが、世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏は、今回の下落相場は2008年のような急落ではなく、市場と実体経済が徐々に締め付けられてゆくような相場になると予想している。

上で説明したように、サブプライムローン危機では1年半の下落相場となっていることから、大雑把に言ってダリオ氏は2年から5年程度の下げ相場を想定しているのだろう。

一方で、上記の記事ではダリオ氏の理屈の盲点も指摘している。ダリオ氏が債務の膨張と利払いの増加による段階的な締め付けを念頭に置いている一方で、現在アメリカが行なっている量的引き締め(量的緩和の逆回し)は市場から直接的に資金を引き揚げる金融政策であり、その意味では不動産市場やIT株から投資家が競って資金を引き揚げる過去のバブルと同じだということである。

不動産バブル崩壊と量的引き締めのどちらがより急速な市場からの資金の流出かというのは、難しい議論である。しかしダリオ氏の言うようなゆっくりとした下落相場になるとは考えがたい。下落相場の長さとしては半年から1年半程度を想定しておくべきだろう。

それでもブラックマンデーよりは長丁場となる。その間、株価は買い方に希望を与えるような反発を交えながら、長期的に下落してゆくだろう。それを止められるのは量的引き締めの停止だけである。政策金利を引き下げる利下げに効果があるかどうかは議論の余地があるが、単に現在行なっている利上げを停止するだけでは、精々短期的な株価反発の口実になるだけだろう。

量的引き締めの停止は、今のところ議論されていない。それどころか世間では誰も量的引き締めについて語っていない。世界同時株安の本当の原因を、わたしとここの読者以外誰も理解していないのである。

世間と中央銀行がそうしている間は、売り方は安泰である。株式市場は何処まで下がるだろうか。