2018年2月の世界同時株安以来、アメリカの利上げとバランスシート縮小という金融引き締め政策が、世界の金融市場から資金を流出させていることを一貫して伝えてきた。
新興国市場から始まるバブル崩壊
一番最初に起きたのは、新興国市場の暴落である。先進国の株式市場がまだ市場最高値付近にある中で、中国株の下落はまだ収まっていない。以下は上海総合指数のチャートである。
何度も言っているように、市場から資金が流出する時、一番最初に下落するのはもっともリスクの高い市場だからである。
その他、トルコリラやアルゼンチンペソなどの新興国通貨の暴落についてもこれまで伝えてきた通りである。
そして、新興国から十分に資金が流出した後、アメリカの金融引き締めが止まらなければ、グローバル市場全体から資金が引き上げられ続け、次に下落するのは残った先進国ということになる。
それでも日経平均は耐えている。ただ、日本の株式市場で耐えているのは日経平均だけだということも報じておいた。
日本株で高値を維持しているのは日経平均に採用されている一部の銘柄だけであり、例えばJASDAQやマザーズなどの小型株は既に暴落しているのである。これも7月の時点で既に報じている。
同じ国の市場でも、やはりリスクの高い小型株が主要株よりも先に売られるということである。例えば米国株でも、著名投資家のジョージ・ソロス氏がバブルの崩壊に賭ける場合には、S&P 500などの主要株の指数ではなく、米国の小型株指数であるRussell 2000の空売りを行う場合が多い。
米国株に減速の兆し
日本の小型株は既に崩れているが、では米国はどうなっているかと言えば、少なくとも最近まで、小型株指数のRussell 2000に減速の兆しはなかった。これは、新興国の暴落はまだアメリカまで届いてはいないことを意味していた。
しかし、ここ数週間でそのトレンドに変化が見られるのである。
先ずは、主要株の指数であるS&P 500のチャートを見てみよう。
概ね史上最高値付近で推移している。
では、小型株指数のRussell 2000はどうなっているかというと、以下のようになっている。
2月の下げからの回復はむしろRussell 2000の方が力強かったことから分かる通り、これまでアメリカの小型株には減速の兆しは見られなかった。
しかし9月以降、遂にアメリカの小型株から資金流出の兆候が見られている。これは、これまで見られなかった新たなトレンドである。
結論
筆者は、これを弱気相場が遂に米国市場に到達した証拠であると見ている。
しかし、多数の投資家は、このような細かい兆候など完全に無視するだろう。新興国は暴落しており、日本株も日経平均以外は既に下がっているが、誰も気にしていない。
それでも筆者はこうした一つ一つの兆候を順番に確認し、バブルの天井が着実に近づいていることを確認してゆく。こうした兆候を気に留めない投資家が多数を占めてきていることは、筆者にはむしろ良い知らせである。
何故ならば、バブルの天井の定義とは、弱気派がすべて一掃され、誰もが強気になった瞬間だからである。まだ買っていない投資家、まだ空売りを買い戻していない投資家が居なくなった時、それ以上買う投資家が居なくなり、バブルは崩壊する。
バブルの崩壊は、多数の投資家がそれと分からない形で訪れるだろう。一気に下がることもなく、チャート上に複雑なトップを描きながら落ちてゆくことになる。日経平均やS&P 500が下げ始めても、強気の投資家が「まだ下がらない、すぐ反発する」と言い続ける中で、本当の弱気相場が始まる。
筆者は気にせず日経平均とドル円の空売りを続けてゆく。短期的な値動きを取る気が一切ないからである。