アメリカ金融引き締めで暴落している金価格と銅価格

アメリカの強力な金融引き締めが新興国市場を既に暴落させたことは説明したが、今回はゴールドと銅である。

繰り返しになるが、アメリカは利上げと量的引き締めという2種類の強力な金融引き締め政策を行なっている。そして、長らく相場に居る人間には信じられないことだが、アメリカや日本の市場はそのことを気にしていないように見える。

投資銀行などでもリーマンショック後に金融に関わり始めた、下げ相場を知らない若いトレーダーが多いため、金融引き締めがどういうものか理解していないのだろう。彼らにはジム・ロジャーズ氏の次の記事を贈りたい。

新興国暴落に次ぐコモディティ市場暴落

さて、これまで報じている通り、アメリカの金融引き締めで先ず下落したのは新興国の資産である。世界市場から資金が流出する金融引き締め相場では、先ずリスクの高い資産から下落し、先進国株式などそれよりもリスクが低いと考えられている資産クラスは最後に下落することになる。

新興国の株式と通貨が暴落していることで既に外堀は埋まっており、問題はそれがいつアメリカや日本にまで波及するのかということだが、状況が差し迫っているということを説明するために、米国金融引き締めで下落しているのは新興国市場だけではないということを言っておきたい。

それは何かと言えば、金と銅である。この2つの金属はそれぞれ異なる動きをするのだが、先ずはゴールドから説明したい。

アメリカ金融引き締めで金相場下落の理由

金相場の値動きはファンダメンタルズに比較的沿ったものである。投資家が資産の逃避先としても使うゴールドは金利の付かない通貨のようなものだと考えられており、ドルの金利が高くなれば資金はゴールドからドルへと移り、ドルの金利が低くなればゴールドの魅力が相対的に高くなる。

つまり、金価格とアメリカの実質金利は反相関の関係にあることになる。この2つを並べると次のようなチャートになる。

利上げによってアメリカの実質金利が上昇したことで、金価格が下落していることが分かる。

2018年前半まではアメリカと北朝鮮の対立激化など地政学的要因があったために実質金利が上がっても金価格が下げ渋っていたが、そうした要因もなくなり金相場はファンダメンタルズに回帰している。最近の下落幅が大きいのは、そうした底上げが無くなったことも要因である。

そして、世界市場の行方を占う上でより重要なのが銅価格である。

世界経済の停滞を暗示する同相場の急落

日本の個人投資家にはあまり縁のない銘柄かもしれないが、銅価格は市場が世界経済の成長に強気か弱気かを示す指標であると言われている。主に建設用の資材などに使われる銅は主な消費国が中国などの新興国であり、世界経済の需要が増えるのか減るのかを銅相場はいち早く織り込んでゆく。

トランプ氏が大統領選挙に勝利した後のトランプ相場とは、基本的にはアメリカだけではなく世界経済が高成長・インフレに向かうと市場が予想したことで生まれた上げ相場だった。

結果、トランプ相場で最も上がった資産は実は銅である。

タイミングからも2016年11月の大統領選挙の直後からこの上げ相場が始まっていることが分かるだろう。それにしても急激に上昇している。

さて、世界経済の見通しを反映する銅相場が最近どうなっているかと言えば、次のようになっている。

結論

要するに、アメリカの強力な金融引き締めによって世界の様々な市場から資金が流出しているということである。日経平均やドル相場しか見ない投資家には問題がないように見えるが、それは事実ではない。

銅相場の急落は中国の株式市場の暴落と平行している。金融引き締めが世界経済に与える影響を織り込んでいるのである。上海株価指数の下落トレンドは今の所止まっていない。今日の日経平均の急落もこれが原因である。

最近は政治活動に専念して投資に関する発言をしないジョージ・ソロス氏も、今年5月に「われわれは次の大きな金融危機に向かっていっているのかもしれない」(Bloomberg、原文英語)と呟いていたが、恐らくは2月の世界同時株安からゆっくりと進んでいる市場のこうした雰囲気を嗅ぎ取ったのだろう。

さて、日本の個人投資家にはこの状況が日本株やドル円にどう影響を与えるのかを知りたいところだろうが、先ず日本株について言えば、影響は既に出ている。日経平均が見せかけの好調を維持しているだけである。

そしてドル円の推移予想については以下の記事で詳しく解説した。

すべてはもう始まっているのである。備える時間が読者に十分にあることを祈っている。暴落も準備をすれば大きな利益のチャンスになるのである。