アメリカの金融引き締めが続いている。パウエル議長は議会証言で利上げの継続を改めて宣言した。Fed(連邦準備制度)の自己申告では2018年に4回の利上げをすることがメインシナリオとなっているので、つまり今年だけであと2回利上げがあることになる。
ただ、投資家にとっては今年の利上げが1回か2回かということは問題ではない。今年が1回ならば、もう1回が2019年初頭に回るだけだからである。しかし、Fedの自己申告を未来に向けて見てゆくと、2018年にあと2回利上げがあるとすれば、2019年には3回、2020年には更に1回の利上げがあり、仮にこの自己申告が本当に実行されるとすれば、アメリカの政策金利は3.5%付近まで上昇することになる。これは新興国並みの金利水準である。
これはいくらなんでも有り得ない。ではこのFedの自己申告をどう解釈すれば良いのかと言うと、Fedはいつもタカ派の自己申告を宣言しておいて、後からハト派に修正していたことを思い出さなければならない。
ここ1年ほどはFedはほぼ申告通りに利上げをしているので、Fedのこのいつもの習性を忘れがちだが、少し前までは市場がFedの自己申告など相手にしないほど、いつも結局は低金利方向に修正されていたのである。
利上げ停止はいつ宣言されるか?
ということで、少し前から話をしているように、投資家にとって2018年後半のテーマはFedがいつタカ派な姿勢を修正し、利上げの停止を視野に入れ始めるのかということである。
先ずは市場がどう織り込んでいるかを見てみよう。金利先物市場のオプション価格を方程式に放り込むと、市場が今年あと何回の利上げを何パーセントの確率で見込んでいるかが分かる。
- 1回: 35.0%
- 2回: 58.2%
- 3回: 3.9%
つまり、市場のメインシナリオはあと2回の利上げで、そうでなければ1回だということになる。織り込みはパウエル議長の議会証言を受けてこうなったのだが、この数字はFedの自己申告とほぼ一致している。
問題は2019年である。2019年に3回の利上げは無理だろう。今年が2回だとすれば、それで政策金利は2.5%となり、以前の記事でも書いた通りそれが限界で、来年は1回の利上げでも難しくなるだろう。
しかし、Fedは来年についてあと数ヶ月はこのままの態度で居られる。来年に差し掛かったあたりで方向転換をすれば十分だろう。年末にアメリカの経済成長がどうなっているかまだ分からないのに、今方向転換しては時期尚早となる可能性がある。また、来年に入ったにもかかわらず来年の計画が決まっていないというわけにもいかないので、やはり年末ということになる。
これが投資家にとって意味することは、年末まで先ず短期金利が高止まりするということである。短期金利が長期金利の下限を設定し、長期金利が株式市場に影響を与えるので、短期金利は重要である。その数字はどうなっているのか?
- 1年物国債: 2.39%
- 2年物国債: 2.62%
- 3年物国債: 2.69%
- 5年物国債: 2.76%
短期国債の金利は、基本的には何年後までの間に政策金利がどうなるかを示している。一番短期の政策金利に押し上げられて、3年物国債までの金利はゆっくりと上がり続けている。5年債は2.75%付近で足踏みを始めた。やはり、その水準が利上げの限界だと市場も思っているのである。
筆者はこの短期金利がトレンド転換し、低下を始めるタイミングを去年からずっと狙っている。国債先物や金利先物を買って(金利低下に賭けて)儲けようということである。
しかし、Fedがまだ2019年の利上げ回数を下方修正しないとなれば、金利低下に賭けるタイミングはまだだろう。しかしその時は確実に近づいている。恐らくは年末である。
著名債券投資家のガントラック氏がアメリカ利上げについてツイート(原文英語)している。
数年前まではFedは経済指標が改善するまで動かない姿勢を示していた。今では指標が弱くなるまで止まらない姿勢を示している。しかし指標が実際に弱くなってからでは遅すぎるのである。
Fedが中立金利(経済にとって高すぎず低すぎない丁度良い金利)まで利上げするというのであれば、著者の見立てでは中立金利はとうに過ぎている。しかしFedは利上げを続けている。そこに不均衡が生じる。それが投資家にとってチャンスなのである。