世界最大のヘッジファンド、株式買い持ちを大幅減額、空売り増強か

毎四半期恒例、ヘッジファンドなど機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fの時期である。今回の開示は2018年3月末のポートフォリオになり、2月に始まった世界同時株安後の初めてのForm 13Fということになる。

今回取り上げるのはレイ・ダリオ氏率いる世界最大のヘッジファンド、Bridgewaterのポートフォリオである。

株高予想から転換したダリオ氏

ここでも報じている通り、ダリオ氏は年始にダボスで株式に強気の見通しを発表していたが、2月に株安が始まると弱気に転換していた。

しかし、この間Form 13Fの開示はなかった。最後の開示は昨年末のものであり、その時にはBridgewaterは新興国株を買い込んでいた。当時はまだダリオ氏が株に強気だった頃である。

ダリオ氏は新興国株をアメリカに上場しているETFを通じて買っていた。銘柄は主にVanguard Emerging Markets ETF (NYSEARCA:VWO)とiShares MSCI Emerging Markets ETF (NYSEARCA:EEM)の2つであるが、今回の開示ではその持ち分は以下のように減額されている。

  • Vanguard: 32億ドル -> 24億ドル
  • iShares: 15億ドル -> 6億ドル

因みにそのETFのチャートは以下のようになっている。

2月の株安以来下落トレンドである。

また、Bridgewaterは米国の株価指数S&P 500のETFも保有しており、その持ち分は次のようになっている。

  • SPDR S&P 500 ETF: 25億ドル -> 23億ドル

減額されてはいるがあまり変わっていない。

しかしBridgewaterの米国株ポジションについては他に情報があり、Bloomberg(原文英語)によれば、年始には純資産の120%(信用取引含む)だった米国株の買いポジションは、純資産の10%にまで縮小されたらしい。

また、外国株を含む株式全体ではネットでショート(買いの額よりも空売りの額の方が多い)になっているという。つまり、ダリオ氏は株式市場に弱気ということである。

著名投資家の閑散としたForm 13F

Form 13Fでは米国株の買いポジションしか公開されないため、ダリオ氏の空売りの内容がどうなっているかは推測するほかない。しかしこれまで報じられている欧州株の売りなどが含まれていることは確かだろう。

ただ、Bloombergは欧州株空売りもその後縮小したことを報じている。ではダリオ氏は何処の株を空売りしているのだろうか?

Form 13Fで開示された他のファンドにはジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementなどもあるが、昨年末からソロス氏の開示されたポートフォリオには報じるほどの大きなポジションが何も含まれていない。今回のダリオ氏は前回からの減額があったから報じたが、今回の開示だけを見ればBridgewaterもほとんど何も含まれていない閑散としたポートフォリオということになる。

つまり、ダリオ氏やソロス氏などの大物のファンドマネージャーは、2018年は米国株の買い以外で動いているということである。

可能性には株の空売り、為替やコモディティの取引などが含まれているが、ともかく米国株の買いはやらないということである。普段ならば様々な銘柄で賑わっているForm 13Fが閑散としているのは、やや不気味に感じる。投資家は少なくとも、バランスシート縮小によりアメリカの中央銀行が量的緩和の規模と同じ金額を市場から吸い取っていることの意味をよく考えるべきだろう。

市場近況

引き続き焦点はアメリカの金融引き締めということになる。世界同時株安の原因となったのはアメリカの長期金利高騰だからである。

一度高騰した長期金利は、株安によって一度下がったが、最近になって再び急騰している。

事前に予想しておいた通りである。以下の記事の日付がほぼ長期金利の底値となった。

世界同時株安で短期的に下落した長期金利は下落トレンドを維持することは出来ず、今後上昇に転じれば株価には更に悪影響を及ぼすことになるだろう。

そして少なくとも債券市場はそうなったわけである。では株式市場はどうなるだろうか?