世界同時株安で長期金利低下、今後の市場動向は?

アメリカ発の世界同時株安が継続している。表向きの理由はFed(連邦準備制度)のパウエル議長の発言などだが、そうした直接的な材料がなかったとしても同じような動きになったことだろう。

パウエル議長のタカ派発言

2月初旬からの世界同時株安は一旦回復基調に乗ったものの、パウエル議長の議会証言における発言などが伝えられると再び下落に転じた。米国株のチャートは次のようになっている。

2月の初めに株安となった時点で、パウエル議長の発言が重要になることについては事前に言及しておいた。

こう考えれば、今後の株式市場の動きがある程度見えてくるというものだろう。つまり、パウエル議長がどういうコメントを出すのかということに、今後の株価の動向がかかってくる。

筆者の予想は、素早い対応は不可能というものである。

米国株が更に下落をしない限り、パウエル氏はこれまでの金融引き締め路線を継続すると言わざるを得ないだろう。何しろ実体経済自体は絶好調で、ここで利上げを撤回しては株式市場の言い分を飲んだことになる。そうすれば、長期的にはより下落の大きい催促相場が始まることになる。

そしてパウエル議長は27日の議会証言でまさにその通りの発言をすることになる。Reuters(原文英語)の報じている証言全文から、金融引き締め政策に言及した部分を取り出してみよう。

利上げとバランスシート縮小という政策は、金融政策の緩和の度合いを徐々に減らしてゆくことが労働市場の強さを支え、インフレ率を2%の目標に沿うものになるというわれわれの経済観に根ざしている。

最近の市場の荒れ模様にもかかわらず、金融政策はいまだに緩和的である。

つまり、現在の市場の急落は無視して金融引き締めを続けてゆくということをパウエル議長は主張した。そして米国株はその日から下落を再開したのである。

市場の今後の動向

筆者の事前の予想通り下落再開の引き金となったのはパウエル議長の発言ではあったものの、こうした直接的な引き金がなかったとしても市場は同じような動きになったことだろう。パウエル氏がいつ何を発言するかどうかにかかわらず、上に述べた通り、Fedにはその選択肢しかないからである。

ここまでは想定内の動きだが、投資家にとって注視すべきなのは世界同時株安の原因となった長期金利の動向である。繰り返しになるが、長期金利の急騰を受け、投資家が株式ではなく国債を保有すれば充分な金利を得られると判断したことで、資金が株式市場から債券市場へと流出し、株価が下落したのである。

しかし、株安を受けてその長期金利が少し下落している。米国債が資金の逃避先となったのだから当然である。金利低下は債券価格上昇を意味する。

今後の動きはどうなるか? 原因となった長期金利高騰が後退した分、株価下落も収まるのか? これについては昨年11月の記事に書いてあるので、そのまま引用しよう。中央銀行によって金融市場から資金が引き揚げられることの意味をよく考えるべきである。

Fedのバランスシート縮小とは、Fedが量的緩和によって買い入れた債券の保有量を減少させる政策である。Fedによる債券の買い支えが無くなる分については、市場に参加している他の投資家によって折り合いが付けられることになる。ここまでは明確である。

問題は、この折り合いがどのように付けられるかである。Fedは国債や不動産担保証券などを(実質的に)市場に放出するが、必ずしも放出された資産が影響を受けるとは限らない。例えば、仮に10年物国債(長期国債)に大きな売り物が出たにもかかわらず、相対する大きな買い支えがあり、債券価格が変わらなかった(つまり金利が動かなかった)場合、その買い支えを行なった資金が元々投資されていた資産クラスに影響が出るのであり、10年物国債の金利(つまり長期金利)に影響が出るわけではない。お分かりだろうか。

だから、国債市場から資金が引き揚げられたにもかかわらず、国債価格は持ち直し(つまり金利が低下し)、株式市場が下落したのである。こうした意味合いの長期金利の低下が株価反発の原因になると思ってはならない。因果関係が逆だからである。

つまり、中央銀行は少なくとも全体の資金のパイを減少させているので、すべての資産クラスが資金の綱引きをしているのである。したがって、株式市場が持ち直すとすれば、それは国債市場との資金の綱引きに勝つからではなく、株式自身よりも更にリスクの高い資産との綱引きに勝つからということになるだろう。

2018年の市場で株式市場が綱引きに勝てるのは、倒産の可能性が高い企業の発行するジャンク債である。

ジャンク債に関してはもうこの状況で勝ち目はないだろう。だから筆者は昨年末から一貫してジャンク債を空売りしている。株式市場は、少なくともジャンク債よりは勝ち目があることになる。

問題は、世界一の経済大国であるアメリカが量的緩和と同じ速度で市場から資金を吸い上げ、その結果がジャンク債の暴落だけで本当に済むのかということである。少なくとも、この状況で株を買っている投資家はそのことを自問しなければならない。少なくとも筆者は、この状況では絶対に株を買い持ちにしないだろう。