ビットコインの価値は遠からずゼロになる

米国市場が休日だったこともあり相場が一時休止しているので、今日はビットコインの話でもしてみようと思う。アメリカの長期金利がより上昇するまでの息抜きである。

筆者は投資対象としてのビットコインに興味はないが、最近暗号通貨とブロックチェーン技術について詳しく知る機会があったので、人づてに聞いた話も含めて色々と書いてみよう。

さて、ここの読者にビットコインに投資している人がどれだけ居るかは分からないが、そういう読者にはビットコインの価格動向も気になることだろう。しかしビットコインの価格予想については、そもそも開発者のサトシ・ナカモト氏が何年も前に行なっており、しかもそれは正しい。ナカモト氏は2010年に次のように発言している。

20年後にはビットコインのトランザクションは非常に大きなものになっているか、あるいはトランザクションが全く無いかのどちらかだと確信している。

つまり、ビットコインには二極化した未来しかないとナカモト氏は2010年の時点で予想していた。非常に多くの人に使われるか、あるいは全く使われないかであり、使われないビットコインに価値はなく、トランザクションがゼロだということは、価値もゼロになるということである。

そして、ブロックチェーン技術について最近筆者が詳しく聞いた後で考えたのは、ナカモト氏の発言から8年後の今、その二極のどちらが未来になるかを判断する充分な材料が既にあるのではないかということである。

通貨の未来

そもそもビットコインが投機以外に価値あるものだとするならば、通貨の価値というものを真剣に考えなければならないことになる。ビットコインが出現してから、通貨の価値というのは次の3つに要約されるとする議論が見受けられる。

  • 価値の尺度
  • 価値の貯蔵
  • 交換の手段

順番に説明すれば、例えば豚肉と牛肉の価値を比べるためには日本円でいくらかを考えれば厳密に計算することができ(価値の尺度)、また、酪農家が牛肉を生産したとしても数日で腐ってしまうが、貨幣に替えておけば何年でも銀行口座に保管しておくことができ(価値の貯蔵)、そして何か別のものが欲しくなれば、貨幣とものを交換することができる(交換の手段)ということである。

しかし、ビットコインの未来を考える上では、この考え方は充分ではない。何故ならば、通貨を通貨として使うためには様々な実務上の問題が存在するからである。

例えば、インターネット上で売られている商品を買おうと思えば、代金を支払ってから商品を受け取ることになる。しかし、代金を支払っても商品が届かなければどうなるだろう? 実店舗があるネットショップであればそういう心配も少ないかもしれないが、現在でもネットオークションなどでは詐欺の心配があるものである。

これは確かにビットコインに限らず他の支払い方法でも生じる問題なのだが、現在ブロックチェーン技術者のなかで話し合われているのは、こうした売買契約を自動化してしまい、Amazonやオークションサイトなどの大企業の保証がなくてもトラブルなく売買契約が成立するようにしようという取り組みである。

また、ブロックチェーン技術が対象にしようとしているのは売買契約だけではなく、お金の貸し借りなども銀行などを介さずに出来るようにしようとしているのだという。

ビットコインの将来価格

さて、ここまでの話はブロックチェーン技術に興味のある読者には既知の話だろうと思う。しかし、筆者がここで言いたいのは、ここまでの情報でビットコインの将来価値は明らかだということである。

ビットコインの価格は2017年に急上昇を見せた。2017年1月には1,000ドル前後で推移していたビットコイン価格は、CBOE(シカゴオプション取引所)やCME(シカゴマーカンタイル取引所)などがビットコイン先物を開始した2017年12月には20,000ドル近辺まで実に20倍の上昇を見せ、その後半額にまで下落している。

この価格が今後どうなるかと言えば、長期的にはほぼ確実にゼロになるだろうと筆者は考えている。そしてそれは、暗号通貨の未来が明るければ明るいほど可能性が高く、そして暗号通貨の未来が暗いとしても可能性は同じなのである。

どういうことか? ビットコインの問題は、ブロックチェーン技術の原始的な機能しか持っておらず、売買契約や融資などの機能が有望であればあるほど、ビットコインは他の暗号通貨に取って代わられるということである。

更に、ビットコインには莫大な電力消費という問題もある。ビットコインのマイニングには現在小さな国1つ分の電力が消費されていると言われており、これは世界的に普及する通貨としては完全に持続不可能である。

結論

ブロックチェーン技術者の間ではこうしたビットコインの欠陥は当然理解されており、改善のための開発が日々行われているとのことである。また、こうした欠陥をある程度改善したイーサリアムという別の暗号通貨もあるが、最先端の技術者はその更に先の未来を見ているようである。

こうした話を総合して結論すると、暗号通貨の未来が一番明るいシナリオにおいては、ビットコインを含むすべての現行の暗号通貨は未来の暗号通貨に取って代わられて無価値となり、暗号通貨の未来が暗い場合には当然すべての暗号通貨が無価値となるだろう。

筆者はこの結論を用いてトレーディングするつもりはないが、投資も投機も個人の自由であり、上記の見方を用いてトレードする読者があれば、それはそれで面白いのではないか。

個人的には、プット・オプションでもあればある程度まともな投資になりそうな気がするのだが。アメリカの長期金利が引き続き上昇するまでの気晴らしの余談であった。