著名債券投資家のビル・グロス氏が長らく続いた低金利トレンドの終わりを宣言した。グロス氏の務めるJanus HendersonのTwitterアカウントと月刊投資見通しで相場観を発表している。
債券市場の弱気相場の始まり
グロス氏は1月9日のツイートで次のように述べた。
本日、債券市場の弱気相場が確定した。5年物と10年物の米国債のチャートにおいて、25年の長期トレンドラインが破られた。
数十年の間、先進国の中央銀行は市場に資金を供給し続けることで債券価格を上昇させ、金利を低下させてきた。しかしそれにもようやく終わりが来たようだ。象徴的なのは長期金利と呼ばれる10年物国債の金利である。40年来のチャートを見てみよう。
これだけ長期のチャートで見ても、金利のトレンドが上向き始めているのが確認される。厳密には、低金利トレンドは1980年のレーガノミクスの頃から始まっている。レーガン政権下の経済政策については以下の記事で少し触れている。
金利は底を打ったのか?
さて、もう少し直近の状況に視点を戻すと、多くの投資家が年始からの長期金利上昇に注目している。長期金利は株式市場と為替市場の両方に影響を及ぼすからである。
金利がこのまま急騰すれば、一直線に上がり続けてきたトランプ相場に黄信号が灯る。今や長期金利は米国株の配当利回りを上回っており、投資家はよりリスクの高い株式に投資せずとも、国債を買っていれば良いからである。
長期金利は今後どうなるのか? グロス氏はCNBCのインタビュー(原文英語)でコーヒーの例えを使いながら次のように述べている。
債券の弱気相場と言っても、コロンビア豆のように強い下げ相場ではない。カフェイン抜きの下げ相場だ。債券価格の下落により、長期金利は恐らく年末までに0.1%か0.2%か0.3%ほど上がっているだろう。
そうは言っても、金利はやはり下げるというよりは上昇することになる。
この予想によれば、年末までに長期金利は3%に近づくが、2%台に留まることになる。その場合、わたしの予想では米国株は調整以上の暴落はしないことになるだろう。因みに米国株については同じ著名な債券投資家のガントラック氏が次のように予想している。
結論
要するに、グロス氏は債券が下落し金利は上昇するが、その流れは緩やかなものになると予想している。月刊投資見通しでは、ほとんどの債券にとって価格の下落分は支払われる金利によって相殺され、債券の投資家はトータルでプラスのパフォーマンスを得るだろうと主張している。
金利上昇の流れが緩やかであることは、実質金利に反応するドルの買いやゴールドの空売りにとって逆風になるだろう。実質金利は名目の長期金利からインフレ率を引いたものだが、名目金利が上昇しない一方で、以下の記事で述べた投資家の世界経済に対する強気トレンドが予想インフレ率を引き上げ、実質金利を圧迫することになるからである。
また、ドル円には日銀の緩和限界という円側のリスクがあり、金価格は欧米の投資家の投機リスクがある。やはり、金融引き締めトレードの中ではジャンク債空売りをお勧めしたい。ドル円やゴールドをやるならば、現物よりオプションの売りだろう。
引き締めトレードの中では銀行株の買いも非常に好調だが、ガントラック氏によれば今年は株式の見通しは良くないらしい。筆者はロシアの銀行株には投資しているが、米国株の見通しには主張を持っていない。ただ、長期金利はグロス氏の言うよりは上がるのではないか。そうなれば米国株には当然マイナスとなる。