2017年最後の世界の金融市場で印象的だったことの1つは、金価格が12月上旬の底値から一気に上がり続けたことだろう。
金価格上昇の理由
先ずはグラフを提示しよう。以下の通り、金価格は12月に一気に下落した後、急上昇を見せた。
そしてこの動き方は、金相場の通常の値動きではない。何故ならば、以下の記事でも書いた通り、金価格は基本的には米国実質金利と反相関の値動きになるはずだからである。
しかし、実質金利のチャートは金価格チャートの逆の動きにはなっていない。
10月頃までは、実質金利が下に行けば金価格が上に行くという綺麗な反相関になっていたのだが、11月よりその関係が薄れ、チャートの形が異なっている。因みにドル円のチャート(基本的に正相関となる)は、実質金利のチャートに比較的そのまま連動している。
最後の方はやや下がり方が鈍いかもしれない。
金価格の値動きの原因
細かいことを言い出せば複雑になるが、基本的には米国実質金利に反応するドル円と金相場の異なる点は2つある。1つには、先進国経済が低金利から抜け出せないという考えがいまだ根付いている欧米の投資家が、低金利トレードに主に用いるのがゴールドであるということであり、もう1つは日本円がいわゆる安全資産ではないことに対して、金は地政学的な危機を理由で買われる安全資産であるということである。
日本円もリスクオフで買われる資産ではあるが、それはリスクオフでは米国などの金利が低くなるため、日米金利差に反応してドルが売られ、円が買われるだけのことであり、金利の上下に加えて戦争などが直接の買い要因となるゴールドとは異なるのである。
2017年最後の相場を眺めれば、ゴールドは低金利トレードをする投資家の思惑と、北朝鮮のミサイルという地政学的リスクの表出という、実質金利とは異なる2つの要因に左右され、なかなか混沌とした値動きとなった。
結論
因みに、このゴールドの不確かな動きがいずれ収まると考えて、実質金利と金価格の連動が離れすぎた場合にその差を取る裁定取引を考えても良いが、下落方向に賭ける場合は6ヶ月というタイムリミットがあることを念頭に置く必要がある。米国GDPが好調のまま持つのは最低半年だが、それ以降は経済が減速し、北朝鮮リスク等で上昇した金価格がそのまま下に戻らない可能性がある。
一方で、ドル円は日銀が急激な動きをしない限りは中期的に米国実質金利について行くだろう。
これまでの表明通り、筆者はこのどちらにも触れずにジャンク債の空売りを続けるが、他の市場についても引き続き観察してゆく。最新の相場観は以下の記事を参考にしてほしい。