米国短期金利が利上げの限界点に到達

アメリカの金融引き締め相場をトレードするにあたり、アメリカ短期金利の動向がFed(連邦準備制度)による金融引き締めの限界を投資家に教えてくれるということは以前書いた通りだが、ついに3年物国債がその領域に足を踏み入れた。金融引き締め相場から緩和相場への移行を示唆する先ずは第一段階である。

じわりと上がる短期金利

金利と言えば先ずは政策金利と長期金利(10年物国債の金利)である。政策金利は2017年には3度の利上げが行われ、1.25%まで上昇している。

一方で、長期金利はトランプ大統領と共和党による法人減税の支えがあってようやく重い腰を上げ始めている。現在長期金利は2.48%である。

さて、以前書いた通り、この金融引き締め相場の限界を教えてくれるのが、政策金利と長期金利の間の金利である。1年物国債の金利から順に並べると、以下のようになる。

  • 政策金利: 1.25%
  • 1年物国債: 1.73%
  • 2年物国債: 1.91%
  • 3年物国債: 2.01%
  • 5年物国債: 2.26%
  • 7年物国債: 2.40%
  • 10年物国債(長期金利): 2.48%

さて、これを眺めた上で、金融引き締め相場がどのように進むかを事前に書いた以下の記事を思い出してもらいたい。

この記事では先ず金融引き締めに賭ける投資を仕込むことを第一ステージとした上で、次の段階について以下のように書いている。

金融引き締めの影響が市場で進行するにつれて、投資家が注視しておかなければならないのは短期金利の動向、つまりは利上げは何処まで進むことが出来るのかということである。最初に書いた通り、金融引き締めはいずれ限界に到達する。米国の短期金利を見ながらそれを見極めるのが第二ステージというわけである。

そして金融引き締めの限界を示す短期国債の水準については以下の通りである。

短期国債の金利に見る金融引き締めの限界とは、3年物国債の金利が2.00%から2.20%程度まで上がった時ということになるだろう。この場合、10年物国債の金利(長期金利)は3%を超える可能性が高く、アメリカ経済はそのような高金利には耐えられないだろう。

さて、では今の3年物国債の水準はいくらだったか? 2.01%である。つまり、短期国債の水準が危険域に足を踏み入れたことを意味する。

3年物国債が示す金融引き締めの今後

これは金融市場全体にはどのような意味になるのか? 先ず、ここから先の3年物国債の金利上昇の足は重くなる。多くの投資家が、政策金利が2%を超えることは難しいと思っているからである。

3年物国債の金利は、基本的には今後3年の政策金利の見通しを示している。今後3年で政策金利が2%を超えないと投資家が判断すれば、3年物国債の金利が2%を大きく超えてゆくことはない。しかし政策金利が引き続きじわりと上昇を続ければ、流石に尻を叩かれるように3年物国債の金利も上がってゆくだろう。しかし、ここまでよりは歩みは確実に遅くなる。以下がこれまでの3年物国債の金利のチャートである。

そして3年物国債の金利が危険水域の上限、2.2%に達する頃には、長期金利は3%の大台付近まで上がることが予想される。そして、その場合、アメリカ経済は高金利の圧力に沈んでゆくことになるだろう。それが金融引き締めトレードの引き際である。

結論

先ず、ドル円の買いやゴールドの空売り、銀行株の買い、そして筆者のようにジャンク債の空売りなどの金融引き締めトレードを行なっている投資家は、3年物国債の金利が比較的早く黄色信号に到達したことを意識するべきである。

短期金利がここまで上がっているにもかかわらず、長期金利はそれほどは上がらず、ドルの上昇も限られ、ジャンク債もそれほど落ちているとは言えない。しかし3年物国債の2.2%前後、長期金利の3%で撤退し金融緩和トレードに転じるというのは絶対の条件である。それまでに自分のトレードがそれほど利益が出ていなくとも、あるいは赤字でも、赤信号が点灯した場合にはそこが金融引き締めトレードの限界である。

元々、米国GDPが何とか持ちこたえることが保証された6ヶ月限定のトレードであり、それほど値幅が取れるとは思ってはならない。筆者とガントラック氏が同じ6ヶ月の猶予を予想しながら、筆者が金融引き締めトレード、ガントラック氏は金融緩和トレードを推奨した経緯を思い出したい。

わたしの意見では、これから6ヶ月もFedが金融引き締めを撤回しないならば、6ヶ月という時間は金融市場に影響が出ないには長すぎるというものである。一方、ガントラック氏は、6ヶ月で逆流するのだから現時点でもうその方向に賭けても良いだろうというものである。

この記事の他、時間があればドル円やジャンク債などのチャートを批評したいが、年末である。しかし出来る限り筆をとりたいと思っている。