Fed(連邦準備制度)による米国金融引き締めが続いている。今後のシナリオは、いつもの通り金融引き締めはFedが続けられる限り続けられ、そして限界に到達するというものである。
では、これを踏まえた上で投資家は2018年をどのようにトレードすれば良いのだろうか? この記事では2018年の金融市場の大まかなシナリオを予想しながら、各ステージにおいてどのような投資を行えば良いのかを検討したい。
金融引き締めに賭けるトレード
今回は2018年の相場を3つのステージに分けて考える。第一のステージは、これはもう始めるべきだと思うが、Fedのバランスシート縮小に賭けるトレードを行うべき時期である。
周知のように、Fedは2つの金融引き締め政策を行なっている。1つは政策金利を直接上昇させる利上げであり、もう1つは保有している債券の量を減少させるバランスシート縮小である。この内、バランスシート縮小の方は市場で十分に織り込まれていない。
中央銀行が市場から債券などを買い入れるのが量的緩和だったのだから、それを放出して市場に吸収させるバランスシート縮小は、いわば量的引き締めである。量的引き締めでは様々な資産クラスが影響を受けるが、その中でも一番大きな影響を受けるものは、以下の記事で書いた通り、ジャンク債である。
だから筆者は先ずジャンク債を空売りした。しかし、量的引き締めに影響を受けるものはジャンク債だけではない。同じトレンドに賭けるトレードとして、以下のようなものが考えられるだろう。
- ゴールドの空売り
- 金鉱株の空売り
- ドル円の買い
- 新興国通貨の空売り
- 米国超長期債の空売り
- 米国グロース株の空売り
- 銀行株の買い
実際には、これらのトレードは下げ幅も下落時期も異なるだろう。筆者はこれらの候補の中ではジャンク債空売りが一番有望だと考えている。ドル円の買いは、現状においては円側に多少のリスクがある。日銀総裁の黒田氏が、量的緩和の限界を感じ取り、密かに政策を引き締め側に移行しようとしているからである。
米国株については、金融引き締めの影響が出るのは長期金利(長期国債)に影響が出てからである。銘柄については、金融引き締めでリスクオフになればグロース株が売られる一方で、金利高を好感する銀行株にとってはプラスとなるだろう。事実、銀行株は既に世界中で上がり始めている。
米国短期金利の上限を読む
金融引き締めの影響が市場で進行するにつれて、投資家が注視しておかなければならないのは短期金利の動向、つまりは利上げは何処まで進むことが出来るのかということである。最初に書いた通り、金融引き締めはいずれ限界に到達する。米国の短期金利を見ながらそれを見極めるのが第二ステージというわけである。
先ず、今後の利上げについて市場がどう織り込んでいるかということは、金利先物市場において明確に数値で知ることが出来る。例えば現在市場が織り込む2018年8月の政策金利のレンジ予想は以下の通りである。数値はそのレンジになる確率を表している。
- 1.25-1.50%: 19.1%
- 1.50-1.75%: 45.9%
- 1.75-2.00%: 30.8%
- 2.00-2.25%: 4.0%
つまり、2018年後半には政策金利は1.50%から2.00%程度になっている可能性が高いと市場は織り込んでいる。
また、短期国債の金利は基本的には「あと何年で政策金利がその数値になる」ということを表しているのだが、その金利は以下のようになっている。
- 1年物: 1.62%
- 2年物: 1.78%
- 3年物: 1.90%
- 5年物: 2.13%
- 7年物: 2.28%
5年物になると2%を超え始める。因みに政策金利の限界はと言えば、恐らくは2%程度だろう。そこまで上げられるかも不確かだが、それ以上は上げられたとしても短期的なものとなる。これは恐らく少なくとも今後3年前後の未来において妥当性の高い予想である。
であれば、短期国債の金利に見る金融引き締めの限界とは、3年物国債の金利が2.00%から2.20%程度まで上がった時ということになるだろう。この場合、10年物国債の金利(長期金利)は3%を超える可能性が高く、アメリカ経済はそのような高金利には耐えられないだろう。
したがって、投資家は金融引き締めの進行具合を注視するにあたり、短期国債の金利を見る必要がある。ジャンク債なども下落するだろうが、短期国債はより定性的なデータを与えてくれる。短期国債についてはここでも逐次取り上げてゆくが、もしこの指標が限界に近づけば、第一ステージにおける金融引き締めトレードから撤退する時期が来たということである。
低金利銘柄の買い
最後に第三ステージだが、では金融引き締めに限界が来、Fedが緩和的スタンスに転換する時期が来たとすれば、投資家はどうすれば良いか? 第三ステージは低金利銘柄の買い時であり、金融緩和を好感する銘柄を買ってゆけば良い。例えば以下のようなトレードが考えられる。
- ゴールドの買い
- 金鉱株の買い
- ドル円の売り
- 超長期債券の買い
- 新興国通貨の買い
- 新興国株式の買い
- 新興国債券の買い
Fedが方向転換をするとして、どれくらい緩和的になるかということはその時にならなければ予想出来ないが、方向性は上記のトレード群ということになる。因みに筆者ならば、やはり金利が7-8%あるロシア国債を買うだろう。ゴールドの買いやドル円の売りも手堅いトレードになる。
結論
以上、大まかにではあるが、2018年の国際金融市場の流れを予測した。アメリカの短期金利については今後もフォローしてゆく。また、これらの分析は以下の2つの記事に書かれた相場観を前提としているので、そちらも読んでおいてもらいたい。