10月31日から11月1日まで米国の金融政策決定会合であるFOMC会合が開かれ、政策金利の維持を決定した。利上げは元々12月と考えられていたため、この結果は市場の予想通りである。
FOMC声明文
先ず、FOMCについていつも通り声明文を見てゆくが、内容は前回の会合からほとんど変わっていない。
変更があった部分は、先ず夏にアメリカを襲ったハリケーンへの懸念を示唆した部分が消えているのと、後は原油価格の上昇への言及があるだけである。
ガソリン価格はハリケーンの後上昇し、9月のインフレ率を押し上げた。しかし食品とエネルギーを除く物価(訳注:コアCPI)は弱いままである。
原油価格はOPECの減産継続見通しなどを受け、以下のように上昇している。
このOPECの動きには当然ながら、2018年に控えるサウジアラムコのIPOを成功させるため、原油価格を吊り上げたいサウジアラビアの次期国王、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の意向が働いている。以下の記事で言及した通りである。
原油はここからはサウジアラビアが2018年の国有産油企業サウジアラムコのIPOを控え、原油価格を釣り上げる行動に出てくる時期だろう。
しかし、原油価格が米国利上げに影響するほど物価上昇に寄与するとは言えず、基本的には12月にもう一度利上げをするというFedの見通しをそのまま踏襲したFOMC会合となった。ちなみに、金利先物市場は98.2%の確率で12月の利上げを予想している。ほぼ織り込み済みというわけである。
次期議長
さて、これまでも報じていたFed(連邦準備制度)の次期議長がいよいよ発表される。報道によれば、ジェローム・パウエル理事が議長に昇格する決定をホワイトハウスが下したとのことである。この報道が正しければ、以下の記事で述べたわたしの予想が正しかったことになる。
トランプ大統領がウォルシュ氏やテイラー氏のような極端な候補をどれほど真剣に考えているのかということを筆者は少し疑っている。
この意味で、個人的にはパウエル氏が議長になる可能性がもっとも高いのではないかと考えている。以前も書いたように、ウォルシュ氏になれば株式市場が大幅に下落する可能性が高く、アイカーン氏やポールソン氏などの著名投資家と親しいトランプ大統領は、その可能性について十分把握しているはずだからである。
次期議長がパウエル氏になった場合の市場への影響については、上記の記事で詳しく述べたのでここでは割愛する。現状、ドル円は上昇基調が続いている。
一方で、ファンダメンタルズとしては円と同じ動きをするはずのゴールドだが、ゴールド安の動きは円安よりも鈍くなっている。
日銀が弾切れになって以来、円とゴールドはアメリカの実質金利以外に影響される大きな要因がないため、両方が基本的にはアメリカの実質金利に連動して動いているが、金価格の方はやや上昇方向へのバイアスが掛かっている。ドル円の方はしっかりと実質金利との相関関係を維持している。
ファンダメンタルズ的には実質金利に連動するはずの金価格がやや離脱を見せているのは興味深いことである。このゴールドの相関からの離脱については仮説を持っているが、それは別の記事で説明することにしたい。