ドルを売っている投資家に言いたいこと

ドルが下落している。ドル円は一時110円を割り込む勢いであり、今は少し反発しているものの、バランスシート縮小という量的引き締め開始を強調したFOMC会合や、良好なアメリカのGDP統計の発表後にもドル安で反応するなど、市場のドルに対する反応はドル円の実際の水準よりもドル安側、つまり低金利側に寄っている。

ドル円のチャートは以下のようになっている。

しかし、ドルを売っている投資家に言いたいことがある。今の市場の反応が織り込もうとしているもの、今市場が目指しているものとは、米国株が市場最高値を更新し続け、GDPが良好に推移するにもかかわらず、Fed(連邦準備制度)が利上げを躊躇ったままであり、しかもバランスシート縮小も小規模なもので留まり続け、結果低金利が維持されるという夢のようなシナリオである。

しかしはっきり言っておくが、そのようなシナリオは存在しない。株式市場が上昇を続け、GDPも良好に推移している中、Fedが金融引き締めを保留にし続けるような理由はない。

良好なGDPのもとでドル安と米国株高が両方続くような状況は、少なくとも何処かが破綻する運命なのである。

リーマンショックさえ経験したことのない若手が投資銀行などで多数トレーディングを行う中、そうした市場参加者で構成される今の金融市場は、金利上昇局面がどういうものかを忘れているか、あるいはそもそも全く経験したことがないのである。だから低金利がいつまでも続くものだと盲目的に思い込んでいる。それが今のドル安の正体である。

市場の夢のような楽観が行き着くところまで行ってしまうのであれば、それはそれで構わない。しかし短期的な市場の動きも、低金利相場の後に始まる長期的なトレンドを無視することは出来ないだろう。これまで書いてきた通りである。