トランプ相場における金融市場の動きを見事に予想し続けている債券投資家のジェフリー・ガントラック氏がアメリカの利上げとマネタリーベース縮小、そしてトランプ政権について語っている。Reuters(原文英語)が伝えている。
「トランプ氏は上手くやっている」
投資家にとって重要なのはドルや株式市場に影響する長期金利の動向だが、その話をするためにはトランプ政権の話から始めるべきだろう。
ガントラック氏は大統領選挙でトランプ氏の勝利を予想していた数少ない投資家の一人である。そのガントラック氏は、ワシントンで様々な障害に直面しているトランプ政権についてこう述べている。
反トランプ潮流のピークは過ぎた。トランプ大統領は上手くやっている。ヒラリー派の人々が嘆き悲しむプロセスがようやく開始しようとしている。
ガントラック氏は反ヒラリー的感情を隠そうともしていない。大統領選挙時にはヒラリー対トランプの構図が既得権益層対貧困層のように語られたが、実は最上位の投資家には反ヒラリー(必ずしも親トランプではない)が少なくない。ドラッケンミラー氏が共和党のライアン下院議長への支持を理由にトランプ政権の税制改革を賞賛していたことを思い出したい。
要するに、親ヒラリーだったエリートというのは既得権益にしがみついていた層のことであり、既得権益に頼らずとも独力で相場で勝ってゆけるヘッジファンドの最上位層と、反エスタブリッシュメントの貧困層との利害関係は実は一致している。共に既得権益などはどうでも良いからである。
長期金利と経済成長の行方
さて、トランプ政権の政策を肯定したガントラック氏だが、一方で金融市場はトランプ政権の経済政策を疑い始めている。大統領選挙後には経済成長とインフレを期待して上昇した長期金利は、経済政策への疑念から(以前ガントラック氏の予想した通り)その後下落している。今年のドルの不調はこれが原因である。
しかし、ガントラック氏は市場と同じ懸念を共有してはいないようである。長期金利の低下にもかかわらず、そして彼自身がそれを予想したにもかかわらず、彼はこう述べている。
景気後退を示唆するような厳しい経済指標は出ていない。
ガントラック氏はあくまでアメリカ経済に強気である。結果、今は低迷している長期金利は2018年に向けて上昇すると予想している。
当時、ガントラック氏はFed(連邦準備制度)の金融引き締めを理由に長期金利が上昇すると予想しているのかと思ったが、そうでもないようである。何故ならば、彼は金融引き締めについて以下のように語っているからである。
今後数ヶ月に発表されるCPIが低く出ることで、Fedの夢見る金融引き締めは冷水を浴びせられることになるだろう。
しかしそれでもFedは引き締めを強行するということだろうか? ガントラック氏は米国市場を避けることを推奨している。
Fedは利上げに加え、バランスシートを縮小することで金融引き締めを行おうとしている。そういう状況下では、似たような経済状況でマイナス金利が行われている場所を選ぶだろう。だから自分はヨーロッパに投資している。そして中国以外の新興国市場に投資している。
新興国という選択は、世界最大のヘッジファンド運用者レイ・ダリオ氏の選択と同様である。
一方で、わたしはFedの金融引き締めによって暴落する市場の一つに新興国市場を挙げている。ダリオ氏の情報は3月末のものであり、以降撤回されたかどうかは不明である。
Fedが量的緩和の逆戻しであるバランスシート縮小を行うと主張する中、投資家の思惑は様々なようである。しかしその核心についての見解は皆同じだろう。それはビル・グロス氏の意見に集約される。
それでもFedがそれを行うと主張しているので、投資家は戸惑っているのである。