6月9日の米国市場で、Googleの親会社Alphabet (NASDAQ:GOOGL)やAmazon.com (NASDAQ:AMZN)、Apple (NASDAQ:AAPL)などのハイテク銘柄が急落した。
読者も周知の通り、ブラックマンデーのようなマクロ的原因が明確な状況でもない限り、わたしが一日の急落に気を配ることはほとんどない。
前にも書いた通り、一日の値動きなどというものは、例えば何処かの富豪が急にお金が必要になり、持っていた株式を換金したということかもしれない。投資家や資産家はあらゆる理由で株を売るのであり、本当の動機は売った本人にしか分からず、それを推測することには投資家にとって意味もなければメリットもないのである。
しかし今回のハイテク株急落はその意図が恐らくは明確であるので、今回の急落の原因についてこの記事では書いておきたい。
ハイテク銘柄急落
先ずは各銘柄のチャートを見てみよう。
Apple (NASDAQ:AAPL)
Alphabet (NASDAQ:GOOGL)
Amazon.com (NASDAQ:AMZN)
Facebook (NASDAQ:FB)
Twitter (NYSE:TWTR)
Microsoft (NASDAQ:MSFT)
そしてIBM (NYSE:IBM)は、ハイテク銘柄とは見なされていないようである。
急落の理由
さて、ではこの急落の理由は何だろうか。注目すべき点は、個別銘柄ではなくセクターごと売られているということである。
個別銘柄の急落であれば、その理由は何でも有り得る。しかし今回は大口の投資家がセクターごと売ったということになる。市場の値動きに影響するほどの大口の投資家で、かつ個別銘柄ではなくセクターごと売買するような投資家とは誰だろうか? グローバルマクロ系のヘッジファンドである。
ハイテク銘柄は、トランプ相場ですぐに上昇した銀行株やインフレ関連株などのトランプ銘柄が2017年に入って減速を始めたタイミングで出遅れ銘柄として上昇を開始した。こういう流れに賭けていたヘッジファンドは、個別株を物色するというよりはハイテクというセクターに含まれるものを軒並みすべて買っていた。例えば、かつてジョージ・ソロス氏に雇われてクォンタムファンドを指揮した彼である。
この記事では彼が買ったハイテク株個別銘柄を紹介したが、今回急落した銘柄は彼のポートフォリオに含まれていた銘柄に驚くほど一致している。
チャートを見れば分かるように、そうしたヘッジファンドがハイテク銘柄を買い始めてからもう十分に株価は上昇している。だからそういう投機筋がこの辺りで利益確定をしようとしたとしても不思議ではないだろう。
結論
では、これを受けて個人投資家はどうすれば良いのか? 別に何もする必要はない。
グローバルマクロ系のヘッジファンドの取引を垣間見たからと言って、それはあくまで他人のトレードである。自分の判断で買っていた投資家も、自分の判断で空売りしていた投資家も、他人のトレードを見て判断を歪められてはならない。それは世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏が「個人投資家の犯す最悪の間違い」として以下の記事のなかで挙げていたものである。
ニュースに振り回されるだけでも悪いが、最悪なのは市場の反応に振り回されることだ。
過去に反応し、未来を考えないこと、それが個人投資家の最大の問題だ。
因みに、わたし自身のハイテク銘柄における相場観は、以下の記事で説明した通りであり、当然ながらこの相場観はこの一日の値動きで何も変わってなどいない。それが正常な投資家の判断力というものである。